長瀬産業|消泡剤とは?仕組みや種類を解説

消泡剤とは?仕組みや種類を解説

消泡剤を一言で言い表すと、「泡を消すための添加剤」でございます。しかし、どんな液体にどんな発泡が起こっているか、どのようにその泡を消すのかによって、使用すべき消泡剤は異なります。特に製品の製造工程で使用する場合、慎重な選定が必要です。

そこで本記事では、そもそも泡とは何か?消泡剤のメカニズムは?消泡剤の種類はどのようなものがあるか?といった基礎知識をシリコーン系の消泡剤中心に紹介します。最適なシリコーン系消泡剤を選択するのにお役立てください。

消泡剤とは?

消泡剤は、泡膜の表面を部分的に不均一な状態へと変化させ、泡を不安定化させる作用を持った添加物です。メカニズムを端的に表すのであれば、針を風船に刺して破裂させるイメージが近いでしょう。

消泡剤が必要とされる場面はさまざまございます。たとえばある製品の製造工程では泡の発生・残留を防ぐために微量の消泡剤が添加されます。これは、泡によって品質や周辺機器に悪影響が及ぶことを防ぐためです。

・製品品質の低下

・タンク内でのオーバーフロー

・フィラー分散の不良

・コーティング層の欠陥

・スカムの発生

・製品の分離

・濡れや浸透の阻害

不具合の原因となる泡の発生・残留が消泡剤で避けられれば、作業効率や収率の低下防止につながります。上記のようなトラブルに見舞われている場合、消泡剤の導入をご検討してみてはいかがでしょうか。

消泡剤が使用されている製品

消泡剤はさまざまな業界の製造現場で用いられております。皆様の製造現場に適した消泡剤が使われている製品かどうかをご確認いただく必要がございます。

・金属加工油剤(水系、非水系)

・樹脂・ラテックス製造工程

・接着剤

・製紙の前工程/後工程(パルプ工程、サイズ剤)

・塗料・インキ・ワックスの製造工程/塗布工程

・繊維・染色工程

・食品の製造工程・発酵工程

・排水処理工程

・繊維処理剤・繊維助剤

・洗剤・洗浄剤(工業用、家庭用)

消泡剤の種類

一口に消泡剤と言っても、主要成分にはさまざまな種類があり、それぞれの特徴も異なります。

・鉱油系

・油脂系

・脂肪酸系

・脂肪酸エステル系

・アルコール系

・アミド系

・リン酸エステル系

・金属セッケン系

・シリコーン系

オイルタイプ

鉱油系や油脂系などのオイルタイプは、水系液体に対する高い消泡効果を持ちます。また、即効性にも優れているため、スピーディーに消泡したいというニーズに最適です。一方で、持続性が低いことや、環境配慮の点に懸念が残ります。

界面活性剤タイプ

脂肪酸系や脂肪酸エステル系、リン酸エステル系などの界面活性剤は、シャンプーなどにも使用されていることもあり、「泡立ち」のイメージが強いかもしれませんが、界面活性剤は消泡効果も持っています。長所としては、長期に亘る保存性が挙げられますが、使い方次第では逆に発泡の原因になる可能性もあるので気をつけなくてはなりません。

その他

オイルタイプや界面活性剤タイプのほかにも、エマルジョンタイプやシリコーン系などにあるコンパウンドタイプなどが、製造現場では広く用いられております。

シリコーン系消泡剤

消泡剤の中でもシリコーン系消泡剤は、最も優れた消泡性能を持ち、汎用性が高く、環境負荷の低さも評価されています。ここからは、シリコーン系消泡剤の特徴や種類、使い方についてご紹介していきます。

シリコーン系消泡剤の特徴

シリコーン系消泡剤に使用されるシリコーンオイルは、低い表面張力が最たる特徴です。

表面張力の比較

ジメチルシリコーンオイル(20.9~21.3dyne/cm(※))

鉱油(29.7 dyne/cm)

水(72 dyne/cm)

※粘度100mm2/s以上のもの

消泡効果は原則、表面張力の低さに比例します。シリコーン系消泡剤であれば、微量の添加で高い効果が得られるため、製品への最終的な影響を小さく抑えられます。

一方、ジメチルシリコーンオイルは水への分散性・溶解性が悪いため、優れた抑泡性を持つものの、破泡性については他の消泡剤に劣ることもございます。

そこで、ジメチルシリコーンオイルの水への分散性を補う意味でO/W型エマルジョンに加工される場合があります。また、シリコーン系乳化剤や界面活性剤を加えるケースもあります。

シリコーン系消泡剤の種類

シリコーン系消泡剤にはいくつかの分類があり、消泡対象となる発泡液の種類・条件等に合わせて使い分けされております。

オイル型

溶剤や添加物が含まれないシリコーンオイルで構成されるオイル型の消泡剤は、長期間の製品安定性があり、非水系の幅広い用途に使用されています。

オイル型にはジメチルシリコーンオイルの粘度が100~100,000mm2/sのものが使われています。これらの粘度の中で低粘度域のものは即効性、高粘度域のものは持続性に優れています。その他では、耐溶剤性に優れたフロロ変性シリコーンオイルもあります。

コンパウンド

シリコーンオイルに分散剤(シリカ)を加え、粘性を高めた消泡剤です。オイル型よりも高い消泡効果が得られます。

自己乳化型コンパウンド

シリコーンコンパウンドに乳化剤を加えた消泡剤です。粘性が高く、水を使って5~10倍に希釈すると自己乳化してエマルジョン状態になります。

自己乳化型の消泡効果が高いとされているのは水性発泡液で、なかでも酸性・アルカリ性の発泡液に最適です。また内添用消泡剤(切削油,不凍液,塗料など)としても、高い持続性を持つ消泡効果が示されています。

エマルジョン型

シリコーンオイルをO/W型エマルジョンにしたものです。水性発泡液に用いる消泡剤としては、最も汎用性が高いと言えます。そのため用途も幅広く、食品加工から排水処理まで幅広く利用可能です。

溶液型

オイル型と同じく、油性の発泡系に対して使用される消泡剤です。作業性や添加時の分散性を向上させるために、事前に溶液化されているのが特徴です。

その他

粉末タイプなどもございます。

シリコーン系消泡剤の使い方

最後に、シリコーン系消泡剤の一般的な使い方と留意点について紹介します。

非水系の場合、分散性を向上させるためには、予めシリコーン系消泡剤を対象となる液体または発泡液に分散する溶媒で希釈してください。そうすることで少ない添加量での使用が可能となり、製品への影響を抑えることができます。

水系の場合、有効成分で10~50ppmが一般的な添加量となりますが、泡のたち具合によって添加量が異なるためご注意ください。なお、予め水で10~30倍に希釈してから添加することで、添加後の安定的な分散が期待でき、その後の工程での不具合を防ぐこともあります。

また、洗浄剤・金属加工油剤・繊維加工助剤・製紙薬剤等に予め添加して製品化すると、発泡の抑制に効果的です。この場合、有効成分の0.1~1.0%が添加量としての目安になります。

シリコーン系消泡剤(エマルジョンタイプ)を使う際のポイント・注意点

・エマルジョンタイプのシリコーン系消泡剤は予め、水、もしくは添加予定の液で希釈し添加してください。

・エマルジョンタイプの場合、希釈の際に40℃以上のお湯を使うと安定性が損なわれる可能性があります。原則、常温の水(水道水が望ましい)をご利用ください。

・希釈したエマルジョンタイプの消泡剤は保存性が低下していくため、その日のうちに使い切ってください。

 

お探しの消泡剤がございましたら、シリコーン消泡剤セルフ診断をご活用下さい。

 

トピックス一覧へ