長瀬産業|消泡剤とは?仕組みや種類を解説
更新日:2026/09/28
消泡剤とは?仕組みや種類を解説
消泡剤とは?
消泡剤とは、泡を消すために使用される添加剤です。泡膜の表面を部分的に不均一な状態へと変化させ、不安定化させることで泡を破壊します。メカニズムを端的に表すと、針で風船を突いて破裂させる状態に近いイメージです。

泡が発生する仕組み
消泡剤の役割を理解するには、まず泡がどのように発生し、なぜ消えにくくなるかを把握する必要があります。
泡は、液体中に空気やガスが取り込まれ、その周囲を液体の薄い膜が包むことで発生します。撹拌や流動、気体の発生などにより気泡が液中に生じ、泡となります。
液体のみの場合、気泡は速やかに消失しますが、界面活性剤や不純物が存在すると、これらが気泡表面に吸着して膜を強化し、泡は壊れにくくなります。
界面活性剤は液体の表面張力を低下させるとともに、気泡表面に均一な膜を形成し、膜の排液を遅らせます。このため泡同士が合一しにくくなり、結果として長時間残る泡となります。
また、液体の粘度が高い場合や微粒子(固体分)が含まれる場合も、泡の膜が強化され、より安定した泡が形成されます。
このように、泡は発生条件や液体の性質によって安定化し、自然には消えにくくなります。こうした泡を効率的に除去するために、消泡剤が使用されます。
消泡剤が必要とされる場面
消泡剤は、製造工程などで発生・残留する泡による製品の不具合を防ぐために使用されます。
泡は品質や設備にさまざまな悪影響を及ぼすため、微量の消泡剤を添加することでこれらの問題を抑制します。
泡の主な悪影響として、以下のようなものが挙げられます。
品質・製品への影響
・製品品質の低下(コーティング面の欠陥など)
・濡れや浸透の阻害
設備・工程への影響
・タンク内でのオーバーフロー
・スカムの発生
消泡剤を適切に使用することで、これらのトラブルを抑制し、作業効率の向上や収率低下の防止が期待されます。
消泡剤が使用される主な製品・工程
消泡剤は、さまざまな製品の製造工程や処理工程において使用されています。対象となる製品や工程によって求められる性能が異なるため、適切な選定が重要です。
主な使用例を業界別に示します。
金属加工油業界
・金属加工油剤
切削、研削、洗浄などの加工工程で使用
※水系・非水系いずれの加工液にも対応
インキ・塗料業界
・インキ
・塗料
・ワックス
製造、分散、塗布などの工程で使用
石油化学・プラスチック業界
・樹脂
・ラテックス
重合、反応、調合などの工程で使用
繊維・染色業界
・繊維
・繊維処理剤・繊維助剤
染色、洗浄、仕上げなどの工程で使用
洗浄・洗浄剤業界
・洗浄剤
・洗剤
製造、希釈、洗浄などの工程で使用
食品・飲料業界
・各種食品
・飲料
製造、発酵、加熱などの工程で使用
排水処理業界
・排水処理水
・処理薬剤系
曝気、撹拌、沈降などの処理工程で使用
パルプ・製紙業界
・パルプ
・紙製品
・サイズ剤
パルプ処理、抄紙、塗工などの工程で使用
消泡剤の種類
一口に消泡剤と言っても、成分や設計の違いによりさまざまな種類があり、それぞれ特性が異なります。
主成分による分類
シリコーン系
表面張力が非常に低く、少量で強力な即効性と持続性を発揮する万能タイプです。耐熱性や耐薬品性にも優れ、幅広い産業分野で第一選択として活躍します。(※塗装工程などハジキを嫌う用途では適合確認が必要です)
代表的な成分・タイプ:
ジメチルシリコーンオイル+疎水性シリカの複合体
代表的な用途:
排水処理、化学プラント、一般工業プロセス、食品加工(食品添加物グレード)
鉱油系
水系液体に対する馴染みが良く、発生した泡をすばやく消す即効性(破泡性)とコストパフォーマンスに優れます。排水処理などで広く使われますが、持続性は低めで、排水時の環境配慮が必要な場合があります。
代表的な成分・タイプ:
鉱物油(スピンドル油、マシン油など)+ 疎水性シリカ(または金属セッケン)の複合体
代表的な用途:
総合排水処理施設、塗料・インキ製造、土木建築資材(コンクリート混和剤など)
ポリエーテル系
液中での分散性や他成分との相溶性に優れ、泡の発生を抑え続ける効果(抑泡性)が高いのが特徴です。高温下での安定性も高く樹脂加工等に適しますが、使用条件によっては逆に発泡の原因となる場合もあります。
代表的な成分・タイプ:
ポリオキシアルキレングリコール(EO/POブロック共重合体)
脂肪酸ポリエーテル
代表的な用途:
発酵工業(アミノ酸・酵素生産)、合成樹脂・エマルジョン重合、製紙工程
高級アルコール・その他系
シリコーンを避けたい環境(塗装ハジキの厳禁現場など)や、紙パルプ・土木建築といった特定環境で選定される特化型です。用途に合わせた固有の機能を持ちますが、汎用的な消泡力ではシリコーン系に譲ります。
代表的な成分・タイプ:
高級アルコール系(ステアリルアルコール等)
金属セッケン系(ステアリン酸アルミニウム等)
アミド系(エチレンビスステアロアミド等)
代表的な用途:
紙パルプ工業(抄紙工程)、自動車・金属向け塗料(ハジキ厳禁ライン)、建設資材
消泡剤の製剤形態
消泡剤は主成分だけでなく、分散性や持続性、作業性などを考慮して製剤設計されています。同じ主成分でも製剤形態によって性能や適用分野が異なる場合があります。
エマルジョンタイプ
シリコーンやオイル成分を水中に分散しやすくした製剤です。
水系システムとの相性に優れ、希釈しやすく取り扱いが容易なことから、水処理や塗料、接着剤など幅広い用途で使用されています。
コンパウンドタイプ
複数の成分を組み合わせ、即効性・持続性・分散性などをバランスよく設計した製剤です。
要求性能に合わせて配合を最適化できるため、製造現場では広く使用されています。
シリコーン系消泡剤
シリコーン系消泡剤は、消泡剤の中でも特に高い消泡性能と汎用性を持つタイプです。水系・非水系いずれの発泡系にも対応可能ですが、分散性や添加方法は系によって異なるため、適切な使い分けが重要です。
シリコーン系消泡剤の特徴
シリコーン系消泡剤に用いられるシリコーンオイルは、非常に低い表面張力を持つことが特長です。
表面張力の比較
| 物質 | 表面張力(dyne/cm) |
|---|---|
| ジメチルシリコーンオイル | 20.9~21.3※ |
| 鉱油 | 29.7 |
| 水 | 72 |
消泡効果は一般に表面張力が低いほど高くなるため、シリコーン系消泡剤は微量添加でも高い効果を発揮します。
一方で、水への分散性が低く、そのままでは効果が発揮されにくい場合があり、用途に応じてエマルジョン化や複合化が行われます。
シリコーン系消泡剤の種類と用途
シリコーン系消泡剤は、使用環境(水系/非水系)や求められる性能に応じて、以下のように使い分けられます。
| 種類 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| オイル型 | 非水系 | 高い持続性、安定性 |
| コンパウンド | 水系・非水系 | 消泡力が高い |
| 自己乳化型コンパウンド | 水系 | 希釈でエマルジョン化、高い持続性 |
| エマルジョン型 | 水系 | 分散性が高く汎用性が高い |
| 溶液型 | 非水系 | 作業性・分散性が良い |
シリコーン系消泡剤の使い方
非水系の場合
分散性を確保するため、事前に対象液または発泡液に分散する溶媒で希釈してから添加します。
これにより、少量で均一に分散し、製品への影響を抑えることができます。
水系の場合
一般的な添加量は有効成分で10~50ppm程度ですが、泡の発生状況により調整が必要です。
あらかじめ水で10~30倍に希釈してから添加することで、安定した分散が得られます。
洗浄剤、金属加工油剤、繊維助剤、製紙薬剤などにあらかじめ配合することで、発泡抑制に効果を発揮します。
この場合、有効成分の0.1~1.0%が添加量の目安です。
エマルジョンタイプ使用時の注意点
・使用前に水または添加予定の液で希釈する
・安定性低下の恐れがあるため、40℃以上の温水は使用しない
・保存性が低下していくため、希釈後は当日中に使用する
用途や条件に応じた選定にお困りの場合は、「シリコーン消泡剤セルフ診断」をご活用ください。
