消泡作用の分類とそれぞれの効果
消泡作用の分類とそれぞれの効果
消泡剤が持つ消泡作用には、大きく分けて「破泡作用」と「抑泡作用」の2種類があります。それに加え、消泡にかかる時間を短縮するための「脱泡作用」が含まれます。本トピックでは、消泡作用の分類と効果、それぞれの仕組みについて解説します。
破泡作用 〜泡を破裂させて消す〜
まずは泡の構造について紹介します。
泡をつくり出す界面活性剤の分子には、水に溶けやすい部分と、油に溶けやすい部分があります。前者は親水基、後者は疎水基と呼ばれます。
界面活性剤が水に溶けると、親水基が水側へ、疎水基が空気側へと方向を変え、規則正しく並びます。水の中に空気があった場合も、界面活性剤分子は同じ動きをします。この場合、疎水基は内部の空気の方向を向きます。この状態が気泡です。
その後、気泡が水の表面へと浮かんでくると、今度は液表面を向く疎水基が出てきます。すると、空気を含む薄い水の膜が作られます。この状態が「泡沫」です。なお、泡が安定化し、割れにくくなるのは表面粘性や弾性が関係しています。
次は消泡剤の破泡作用についてです。破泡作用を持つ消泡剤には、親水性と疎水性が混在します。つまり、水に溶けやすい部分と溶けにくい部分とが混ざり合っている状態です。
この消泡剤を液体に添加すると、泡沫の表面(泡膜)にある界面活性物質と消泡物質が入れ替わります。消泡物質は界面活性物質に比べて表面張力が小さいのが特徴です。そのため、界面活性剤と入れ替わった部分(A)では表面張力が局地的に低下します。
一方、周囲にある消泡物質と入れ替わっていない部分(B)の表面張力は高いままです。すると、AはBに引っ張られて弾性を失います。最終的に、Aの部分の泡膜の厚みが限界以上に薄くなって、泡沫が破裂します。これが、破泡作用です。
抑泡作用 〜泡の発生を抑える〜
破泡作用が泡を破裂させるのに対し、抑泡作用は泡を抑える効果を持ちます。
泡が発生する液体(発泡液剤)に抑泡作用を持つ消泡剤を分散させると、液表面に並んだ界面活性剤分子の間に、消泡剤分子が割り込みます。このことにより、本来規則正しい感覚で並んでいた疎水基の配列が乱され、すき間が空いた状態になります。
その結果、液中で作られた気泡が液表面に浮かんできて薄膜を作ろうとしても、表面張力が均一に保てなくなり、発泡が抑えられるのです。
破泡作用:すでに泡立っている液体へ消泡剤を添加し、泡を破裂させて消す仕組み
抑泡作用:発泡液へあらかじめ消泡剤を添加し、泡沫の発生を抑える仕組み
なお、低表面張力で、かつ発泡液への溶解性が小さいシリコーンオイルは、抑泡剤として好適です。一方で、シリコーンオイルに親和性の高いシリカを配合しオイルコンパウンド型にすれば、泡膜に浸透しやすくなるため、水性発泡液に利用できる破泡剤にもなります。
このように配合する成分によって破泡作用と抑泡作用を分けられるのもシリコーン消泡剤の特徴です。コンパウンド型の他では、乳化剤を加えた自己乳化型コンパウンドがあります。
脱泡作用 〜泡同士をくっつける〜
破泡と抑泡については、発泡液の中で生まれた気泡が液表面へと浮かび上がり、泡沫になった際に消泡作用が働きます。いずれの場合も、液内の気泡を消すわけではありません。一方、液内の気泡に対し、直接アプローチするのが脱泡作用です。
小さな気泡は浮力が小さく、液表面まで浮かび上がるのに時間がかかります。これは、破泡・抑泡作用が発揮されるまでに長い時間がかかると同義です。
そこで用いられるのが脱泡作用です。これは、液内の気泡をつなぎ、合体させる役割を持ちます。小さな気泡同士が合体して大きくなれば、その分浮力が大きくなり、液表面へと上昇するスピードが増します。その結果、泡沫が早く作られるようになることで、破泡と抑泡にかかる時間を短縮することができます。
まとめ
消泡剤は破泡と抑泡、そして脱泡という3つの作用を単一、もしくは複合的に組み合わせることで泡を消します。発泡液の特性や、製造過程で求められる用途などに合わせ、適切に作用が働くよう工夫をすれば、効率的な消泡が可能になります。
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