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塗料・コーティング用シリコーン – A Guide to Coating Solutions

はじめに

シリコーン製品は、その一般特性である耐熱性、耐寒性、耐候性、電気絶縁性、離型性、撥水性、生理・環境面での安全性などにより、塗料工業や各種コーティング剤の分野でも古くから応用されています。特に電気絶縁ワニスや耐熱塗料は最もよく知られている代表的用途ですが、近年、塗料自身の高機能化、高付加価値化指向に伴い、シリコーンの持つ上記の特性を活かした耐候性塗料、防汚性塗料、離型性塗料、表面保護コーティング剤などが開発されています。

塗料・コーティング剤用の原料としてのシリコーン素材は、目的に応じて、その種類や配合量を選ぶことができます。具体的なシリコーン製品としては、シリコーンレジンと呼ばれる高密度に三次元架橋可能なシロキサンベースのコーティング剤、有機樹脂との共重合用に用いられる変性用シリコーンレジン中間体、あるいは、塗料樹脂や塗膜の機能改良の目的で使用されるシラン化合物、シリコーンパウダー、有機変性シリコーンオイルやその他のシリコーンポリマーなどの塗料添加剤があります。

シリコーンレジンとは

シリコーンレジンは、シリコーンオイルなどのシリコーン材料と同様に、「Si-O-Si」結合を主鎖とし、メチル基、フェニル基などの有機基を側鎖に持つシロキサンポリマーですが、シリコーンオイルとは異なり、図1に示すような多くの分岐構造を有しており、硬化後は非常に架橋密度の高い、三次元架橋構造を形成し、硬い被膜を作ります。シリコーンレジンは、主としてコーティング皮膜形成材料として用いられるほか、各種粉末、構造材のバインダー(結着剤)に用いられます。
シリコーンレジンの構造
図1   シリコーンレジンの構造

また、有機樹脂の耐熱性、耐候性等を向上させる目的で、シリコーン架橋体と有機樹脂のブロック共重合体を形成させることも可能です。この場合、低分子量でより多くの反応性有機基を有するシリコーンレジン(変性用シリコーンレジン中間体)が用いられます。

1.シリコーンレジンの特長

硬化したシリコーンレジンおよびシリコーン変性有機レジンは他の有機樹脂にはみられない以下のような特長をもっています。シリコーンレジンが耐熱性、耐候性塗料のビヒクルとして広く用いられているのは、これらの優れた性質によります。

耐熱性

シリコーンレジンの最も大きな特長です。シリコーンの骨格を形成するSi-O結合は、一般の有機化合物の骨格を形成する C-C結合に比べその結合エネルギーが、約90KJ/molも大きいことが知られています。そのためにシリコーンの熱に対する耐久性は、一般の有機樹脂に比べ格段に優れています。図2にシリコーンレジンと有機樹脂の耐熱性を空気中での加熱減量で比較した例を示します。

シリコーンレジンと有機樹脂の空気中での加熱減量

図2   シリコーンレジンと有機樹脂の空気中での加熱減量

また、前述のようにシリコーンレジンに含まれる有機基はメチル基、フェニル基が一般的ですが、それは、シリコーンレジンの耐熱性が、有機基がメチル基、又はフェニル基の場合と、その他の有機基の場合で大きく異なるためです。表1に種々の有機基を有するシリコーンレジンの空気中での耐熱性を示します。

耐候性

上で述べたように、強い結合力をもつ主鎖からなるシリコーンレジンは屋外での暴露に対しても、変色、クラック、チョーキングなどの塗膜の分解劣化の傾向が有機樹脂に比べ非常に少ないのが特長です。

耐水、耐湿性

シリコーンレジンはその構造からも予想されるように、優れた撥水性、耐湿性、耐水性を示します。

耐薬品性

シリコーンレジンは安定な化学結合で形成されており、耐薬品性に優れています。特にエポキシ樹脂で変性されたシリコーンレジンは優れた耐薬品性を示します。

2. 変性用シリコーンレジン中間体

シリコーンレジンは、それ自身がコーティング剤として使用されるだけでなく、塗料用ビヒクル等の有機樹脂を改質するための変性用シリコーン中間体としても使用されます。

これらの変性用シリコーンレジン中間体は、低分子量のシリコーンレジンで、比較的多くのシラノール基やメトキシ基のような反応活性基をもち、図3に示すように、有機樹脂中の水酸基と脱水もしくはアルコール縮合反応により、一種のブロック共重合体を形成します。変性の対象となる有機樹脂としては、アルキッド、ポリエステル、エポキシ、アクリル樹脂等があげられます。

変性反応の概念図

図3   変性反応の概念図

有機樹脂をシリコーンレジン中間体で変性することにより、その耐候性、耐熱性を大きく向上させることができます。シリコ-ンレジン中間体で変性したアルキッド樹脂の耐候性(ウェザオメーター暴露時間と光沢保持率の関係)を図4に示します。

シリコーン変性アルキッド樹脂の耐候性

図4   シリコーン変性アルキッド樹脂の耐候性

また、一般のアルキッド樹脂系塗料が屋外暴露6ヵ月程度でチョーキングを示すのに対し、シリコーン変性アルキッド樹脂を用いた塗料は3年以上の耐チョーキング性を有することが知られています。

通常、シリコーンレジン中間体による有機樹脂の変性は、溶剤中で加熱することで行われ、変性用触媒として酸や有機金属化合物などが用いられます。

シリコーン系塗料添加剤

1.消泡剤、塗膜調整剤

シリコーンポリマーは、そのユニークな界面活性効果を活かして、塗膜品質の維持、機能の付与を目的とした塗料添加剤として広く使用されています。図6に示すようにシリコーン系塗料添加剤には数多くの機能を有しています。シリコーン系添加剤を少量配合することで、塗膜のレベリング性、ウェッティング性、顔料の分散性などを向上させることができます。また、シリコーン系添加剤は、優れた消泡効果を発揮します。これらの機能により、塗膜の品質を維持し、トラブルを解決します。

さらに、塗膜に対し、滑り性、傷付き防止性、防汚性等の機能を付与することが可能です。

シリコーン系塗料添加剤によって付与される機能

図6   シリコーン系塗料添加剤によって付与される機能

シリコーン系消泡剤、塗膜調整剤は、通常、塗料製造工程の最終段階で数十から数千ppm添加されますが、塗料や顔料の種類等によっても効果が異なりますので、事前に適正な種類、添加量の検討が必要です。以下に、アプリケーションに応じた推奨製品とその特長を示します。

消泡剤

シリコーン系消泡剤は、少量の添加で優れた消泡効果を発揮します。使用される塗料・インキの種類に応じて、最適な消泡剤を選択できます。

塗膜調整剤

少量の添加で塗料の塗工性、塗膜性能の向上、改良が期待できます。製品の種類を選ぶことによって、塗膜のレベリング性、ウェッティング性、滑り性、消泡性などの機能を制御することができます。代表的なシリコーン系塗料添加剤は、ポリエーテル変性シリコーンを主剤として用いていますが、例えば、水系塗料に配合した場合のシリコーンポリマーの構造とその機能には図 8に示すような関係があります。シリコーンポリマーは、その構造を選ぶことで、さまざまな機能を発現します。

 

シリコーンの構造と機能の関係(水系塗料)

図8   シリコーンの構造と機能の関係(水系塗料)

シリコーン系塗料添加剤は、レベリング性、ウェッティング性、スベリ性など、期待する機能に応じて選択する必要がありますが、複数の機能が期待できる製品もあり、また、複数の製品を組み合わせることも可能です。

2.シラン化合物

塗料・コーティング剤用の原料、添加剤として用いられるシラン化合物は、以下の一般式で表される有機ケイ素化合物で、有機樹脂と反応可能な有機官能基Xと、無機材料と結合可能な加水分解性基SiORを有しています。

文字

X:アルキル基、アミノ基、エポキシ基、メタクリロキシ基など

塗料樹脂原料としての応用

これらのシラン化合物同士を加水分解により縮重合すれば、シリコーン系のコーティング剤が得られます。シリコーンハードコート剤はその一例で、ポリマーの骨格にはメチル基を有するアルコキシシランの縮合物が応用されます。また、シラン化合物は塗料用有機樹脂の架橋剤としても用いられています。アクリルを始めとする塗料用樹脂のポリマー鎖中にシラン化合物を導入する方法や、ポリマー中の有機官能基と反応可能なシラン化合物を硬化剤として使用する方法などがあります。シラン化合物の湿気硬化性を利用して室温硬化が可能な他、有機樹脂の骨格中に「Si-O-Si」結合が導入される為、耐候性に優れた塗膜が得られます。

塗料添加剤・粉体処理剤としての応用

塗料、コーティング剤にシラン化合物を配合することで、塗膜の無機材料への親和性が増し、接着性が改良できます。また、塗料組成物中のビヒクルと無機顔料の界面にシラン化合物が作用し、塗膜の耐久性、耐候性、耐洗浄性、耐溶剤性、耐剥離性などの特性が向上します。添加量は塗料樹脂に対して1~5%程度で、添加後の系の経時変化についての十分な検討が必要です。

また、塗料用の顔料やフィラーを予め適当なシラン化合物で処理することで、これらの分散性や相溶性の向上が期待でき、塗膜の光沢や、隠蔽力を改良することも可能です。

3.シリコーンゴムパウダー

シリコーンゴムパウダーは、硬化シリコーンゴムからなる真球状微粒子で、微粒子特有の高い分散性とシリコーンゴムの本来の特長である柔軟なゴム弾性、スベリ性、耐熱性、耐寒性、耐久性などの性質を有しています。通常の粉末状タイプと水系サスペンジョンタイプを用意しており、使用される塗料系に応じて選択することが可能です。特長は以下のとおりです

シリコーンゴムパウダー(粉末状タイプ)の外観(電子顕微鏡写真)

図9   シリコーンゴムパウダー(粉末状タイプ)の外観(電子顕微鏡写真)

・比重が塗料組成物に近く、沈降や分離が起こり難い

・ブロッキング防止性、スベリ性に優れる

・塗料本来の色調を損なわず、柔らかで高級感のある艶消し塗料をつくることが可能

・吸油性に優れる

シリコーンゴムパウダーやその他の塗料添加剤を水系ウレタン塗料に配合し、その添加効果を比較した結果を表1に示します。シリコーンパウダーが、ソフト感、スベリ性、艶消し効果をバランスよく発現することがよく判ります。

2液の水系ウレタン塗料に配合した場合の各種塗料添加剤の効果

表1 2液の水系ウレタン塗料に配合した場合の各種塗料添加剤の効果

*抜粋元: 東レ・ダウコーニング株式会社「塗料・コーティング用シリコーン」(NO.Y515)

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