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活性汚泥フロック解体の原因と解消法
2023.09.19

活性汚泥法の沈殿槽における固液分離障害は発生する可能性の高いトラブルですが、多岐の要因が考えられます。これらの問題解決に向け、NAGASEの排水ソリューションチームがお客様をサポートします!
固液分離障害の症状分類
標準活性汚泥法や多段活性汚泥法、硝化脱窒設備において、沈殿槽の上澄み水に含まれるSSに起因して処理水質が悪化することがあります。沈殿槽は一般に排水処理設備の末端に位置する設備であり、このような問題が発生すると放流水質基準の未達に直結する可能性があるため、優先度の高い対応が求められます。処理水SSの悪化が発生している際は、沈殿槽において汚泥の沈降分離性が悪化しているため、その症状を分析して原因を特定し、原因に応じた適切な対応が必要となります。
このような問題発生時によくみられる症状は下記のようなものが挙げられます。
沈殿槽の汚泥界面が高くなり、全面や一部から汚泥が流出する(膨化)
沈殿槽で泡が発生し、その泡が汚泥に付着して浮上し、処理水に流出する(浮上)
汚泥界面は低いが、微細なフロック(ピンフロック)が処理水に流出する(解体)
沈殿槽で部分的に汚泥が巻き上がる(その他外的要因)
今回は 3 に示す活性汚泥フロックの解体に着目し、その原因と解消するための対策について解説します。1, 2 のような汚泥沈降不良の症状では汚泥のバルキングや浮上が疑われます。その場合はこちらの記事(1.バルキングの原因と解消法、2.汚泥浮上の原因と解消法)を参照ください。
汚活性汚泥の解体とは
活性汚泥フロックの解体とは、活性汚泥フロックが解体し、微細な汚泥が多くなる現象を一般的に解体と呼んでいます。解体した活性汚泥は、ピンフロックとも呼ばれ、下記写真に示すような微細な汚泥となります。活性汚泥フロックが解体すると、処理水の透視度悪化やSS、CODが高くなるといった水質の悪化を招くため、症状に応じた適切な対策が必要です。

活性汚泥の解体の原因
活性汚泥フロック解体の原因としては次のようなものが挙げられます。
(1)エアレーションの過剰
→ 活性汚泥フロックは、主に生物的な凝集体であるため、フロックの強度は弱く、過剰なエアレーションによって破壊されることがあります。このような状態を一般的に過曝気と呼びます。
(2)有害物質の流入
→ 有害物質が流入すると活性汚泥のフロックを構成している微生物の活性が低下し、活性汚泥フロックが解体します。活性汚泥に対する有害物質の許容濃度は、有害物質の流入状況、反応タンクの運転条件、微生物の馴養の程度によって異なります。有害物質の流入は、特に工場排水や農薬等に起因することが多くあります。
(3) BOD-SS負荷の過少
→ BOD-SS負荷が極端に低い場合、活性汚泥が過度に酸化されるためフロックが解体することがある。この場合、処理水のSSやCODは高くなる傾向があります。
※ BOD-SS負荷は、反応槽の微生物量に対して1日に流入するBOD量を表す指標で、単位はkg-BOD/kg-MLSS/日で表す
(4)硝化によるpHの低下
→ 硝化反応により高濃度の硝酸性窒素(15~20mg/L以上)が生成するとpHが低下し、活性汚泥フロックの解体が生じます。
(5)流入排水組成の急激な変化
→ 流入排水の組成が急激に変化する場合、活性汚泥を構成する生物の組成が変化する過程で、一時的に汚泥フロックが解体状態になることがあります。
活性汚泥フロック解体時の対策
曝気槽SV測定時の上澄みの濁り、沈殿槽上澄水の濁り、処理水SSやCODの増加がみられる状況においては、活性汚泥フロックが解体している可能性が考えられます。ここでは、運転管理、設備改修の観点において活性汚泥フロック解体の対策を記載します。

NAGASEが提供する排水ソリューションでは、排水処理の問題・課題解決に関する提案のみだけでなく、排水処理の専門家による排水コンサルティング業務も実施しています。まずはお客様の排水処理の現場を訪問させて頂き、どのような現象が起こっているのか診断させてください。お客様の悩み事解決に向け、NAGASEが全力でサポートしますので是非お問い合わせ下さい。
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生物処理プロセスの沈殿槽における汚泥浮上はよく見られる問題の一つであり、解消に向けてその原因を的確に把握し適切な対策を講じることが重要です。排水処理の課題を解決し、持続可能な工場運営を目指す一助となれば幸いです。
参考資料:公益財団法人 日本下水道協会 「下水道維持管理指針(実務編)」 2014年
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