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有機性排水の好気処理と嫌気処理について

2024.12.23

1.はじめに

産業排水に含まれるBODやCODなどの有機性汚濁物質を除去するための微生物処理方法には、大きく分けて好気処理と嫌気処理の2種類があります。好気処理は、酸素を必要とする好気性微生物の働きを利用して有機物を酸化分解する方法で、代表的な処理方法として、活性汚泥法や生物膜法があります。この方法は比較的短時間で高い処理効率を発揮し、一般的に臭気が発生しにくい点が特徴です。一方、嫌気処理は、酸素を必要としない嫌気性微生物によって有機物を分解する方法で、代表的な処理方法にUASB法(Upflow Anaerobic Sludge Blanketの略称で上向流嫌気性汚泥ろ床法という)があります。嫌気処理は、容積負荷を高くでき施設をコンパクトにできること、曝気動力を必要とせず低コストかつメタンガスなどのエネルギー資源を副産物として得られる利点があります。嫌気処理は、BOD濃度が高い排水の処理や、エネルギー回収が重視される場合に適しています。

これら2つの処理方法は、排水の性質や処理目標に応じて選択もしくは嫌気処理と好気処理を組み合わせて用いられます。

なお、今回の記事では、好気処理法は活性汚泥法、嫌気処理はUASB法として記載するものとします。

2.好気処理

活性汚泥法において、排水中の有機物は微生物の働きにより酸化分解され、最終的に水と二酸化炭素に分解されます。分解に必要な酸素供給には曝気ブロワと呼ばれる送風機が使用され、微生物の有機物酸化に必要な酸素を曝気槽(活性汚泥槽)へ供給するとともに、曝気槽内を撹拌混合することで分解反応を促進させます。活性汚泥処理における有機物分解の工程を下記図に示します。

好気性処理でグルコースを処理する場合の反応式の例:

3C6H12O6 + 8O2 + 2NH3 → 2C5H7NO2(微生物の一般組成) + 8CO2 + 14H2O

3.嫌気処理

嫌気処理法において、排水中の有機物は嫌気性微生物の働きにより分解され、最終的にメタンガスと二酸化炭素に分解されます。嫌気性処理では、酸素の供給が必要ないことから曝気に係る動力を削減できます。嫌気性処理における有機物分解の工程を下記図に示します。

嫌気処理でグルコースからメタン生成する反応式の例:C6H12O6 → 3CH4 + 3CO2

4.好気処理と嫌気処理の特徴

好気性処理と嫌気性処理のそれぞれの特徴と用途等について以下の表に記載します。

このように、好気性処理と嫌気性処理は、流入排水の水質や処理目標に応じて、経済性や維持管理などを勘案し最適なプロセスを選定します。

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【参考資料】

・『水処理工学 理論と応用』(井出哲夫 著、技報堂出版)

・『汚水・排水処理 基礎から現場まで』(三好康彦 著、オーム社)

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