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バルキングの原因と解消法
2023.07.14

「バルキング」とよばれる現象が発生している可能性がございます。これらの問題解決に向け、NAGASEの排水ソリューションチームがお客様をサポートします!
固液分離障害の症状分類
標準活性汚泥法や多段活性汚泥法、硝化脱窒設備において、沈殿槽の上澄み水に含まれるSSに起因して処理水質が悪化することがあります。沈殿槽は一般に排水処理設備の末端に位置する設備であり、このような問題が発生すると放流水質基準の未達に直結する可能性があるため、優先度の高い対応が求められます。処理水SSの悪化が発生している際は、沈殿槽において汚泥の沈降分離性が悪化しているため、その症状を分析して原因を特定し、原因に応じた適切な対応が必要となります。
このような問題発生時によくみられる症状は下記のようなものが挙げられます。
沈殿槽の汚泥界面が高くなり、全面や一部から汚泥が流出する(膨化)
沈殿槽で泡が発生し、その泡が汚泥に付着して浮上し、処理水に流出する(浮上)
汚泥界面は低いが、微細なフロック(ピンフロック)が処理水に流出する(解体)
沈殿槽で部分的に汚泥が巻き上がる(その他外的要因)
今回は 1 のようなバルキングの問題に着目し、その原因と解消するための対策について解説します。2のような汚泥沈降不良の症状では脱窒による汚泥浮上が疑われます。その場合はこちらの記事(汚泥浮上の原因と解消法)を参照ください。
バルキングとは?
バルキングとは、排水処理において汚泥の沈降性が悪化し沈殿槽での固液分離障害が発生する現象のことで、活性汚泥の膨化ともよばれます。バルキング状態にある活性汚泥は沈殿しにくく、沈殿槽内で処理水の上澄水を分離できず、処理水中に汚泥が流出することで処理水質の悪化を招きます。
バルキングは一度発生すると解消が困難で様々な原因があるため、適切な対策のためには排水水質やプラントの運転条件、活性汚泥の状態等を把握する必要があります。今回はバルキングの原因と、それを解消するための対策について解説します。
バルキングの種類

バルキングは大きく分けると、糸状性バルキングと非糸状性バルキングがあります。
糸状性バルキングは、糸状菌と呼ばれる微生物が増殖し、活性汚泥フロックに絡みつき比重が軽くなることで、汚泥の沈降性を悪化させます。非糸状性バルキングは、活性汚泥フロックの粘性増加、凝集性の低下等によりフロックが微細化することで、汚泥が沈降しにくくなります。
工場排水処理にみられるバルキング現象は糸状性バルキングが多く、工場排水の特異な水質や運転条件に関係していると考えられます。
バルキングの原因とは?
活性汚泥バルキングの主な原因は、以下の条件下で発生しやすいといわれていますが、主な原因は高BOD負荷と酸素不足です。水温の変化やpHの異常、阻害物質の流入もバルキングの原因ではありますが、活性汚泥の能力低下により、結果過負荷になったことに起因することが多いです。
高BOD負荷
高濃度炭化水素、特に成分が糖類の場合に多く観られる
曝気槽の低溶存酸素(DO)濃度
pHの異常
低水温
阻害(毒性)物質の流入
排水の栄養バランスのくずれ(BOD:N:P=100:5:1)
バルキングの対策
バルキングの発生状況に応じて、活性汚泥を正常な状態に戻すには、以下のような対策が考えられます。

但し、薬剤の使用は一時的には汚泥の沈降性を改善させることは可能ですが、根本的な解決までには至りません。
NAGASEが提供する排水ソリューションでは、排水処理の問題・課題解決に関する提案のみだけでなく、排水処理の専門家による排水コンサルティング業務も実施しています。まずはお客様の排水処理の現場を訪問させて頂き、どのような現象が起こっているのか診断させて頂きます。お客様の悩み事解決に向けたサポートを、NAGASEが全力でサポートしますので是非お問い合わせ下さい。
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バルキングは一度発生すると解消が難しいとされていますが、その原因を的確に把握し適切な対策を講じることで改善は十分可能です。排水処理の課題を解決し、持続可能な工場運営を目指す一助となれば幸いです。
参考:
井出哲夫 「第二版 水処理工学 理論と応用」 技報堂 2001年
三好康彦 「汚水・排水処理 基礎から現場まで」 オーム社 2009年
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