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曝気槽の発泡の原因と解消法
2024.10.15
1.はじめに
曝気槽(ばっきそう)は、排水処理で汚水中の有機汚濁物質を分解除去するための重要な設備であり、送風機を用いて汚水中に空気を供給します。曝気槽において、微生物が酸素を利用して有機物を分解し、処理水の浄化を図る役割を担っています。しかし、曝気槽の管理は難しく、処理条件が少しでも変わると「発泡(曝気槽に泡が発生する現象)」が生じることがあります。この発泡現象は、処理機能の低下や周辺環境への悪影響を引き起こし、処理工程全体に大きな問題をもたらします。
本記事では、曝気槽の発泡が起きる原因とその解消法について、わかりやすく解説します。
2.曝気槽での発泡により生じる問題
曝気槽で発泡が起きると、以下に示すような問題が生じます。
◆作業環境の悪化
発泡した汚泥が腐敗し、悪臭を発生させることがあります。また、泡が曝気槽を超えて作業通路などにまで及ぶと、滑りやすくなり、作業の安全性に影響を及ぼします。特に、作業員が足元を滑らせるリスクが増えるため、作業環境の悪化は重大な事故の原因にもなりかねません。
◆処理水水質の悪化
発泡汚泥が沈殿槽へ流入することによって、処理水のSS(浮遊物質)濃度やBOD(生物化学的酸素要求量)の増加を引き起こします。処理水の水質が悪化することで、下流の設備への負荷が増大し、再処理が必要になることもあります。水質基準を満たさない排水が流出するリスクも高まるため、排水処理施設全体の運用に悪影響を与える可能性があります。
◆汚泥日齢の制御困難
汚泥日齢は、活性汚泥の適切な管理に必要な重要な操作因子です。しかし、正常な汚泥が発泡した汚泥に捕捉されて流出してしまうと、汚泥日齢の制御が難しくなります。この結果、汚泥日齢が短くなることによって、特に栄養塩類の除去プロセス(硝化脱窒処理など)において不安定になり、処理の効率が低下する場合があります。
また、上記の問題を解消するためにコスト面の負担も発生します。
3.曝気槽での発泡の原因
曝気槽では微生物による有機物の分解処理が行われていますが、何らかの理由によりそのバランスが崩れると発泡が生じます。この要因は下記のように分類することができます。
①原水への発泡性物質の流入
原水に界面活性剤などの発泡性物質が流入すると、曝気槽で発泡することがあります。こうした物質は、一般的に洗浄プロセスなどの非定常工程に含まれることが多く、工場の排水管理において厳密な監視が求められます。発泡が生じた際には、流入原水に異常がないかを確認し、原因を特定することが重要です。
②微生物の代謝物
微生物が排水中の有機物を生分解する過程で、発泡性の中間代謝物が生成されることがあります。これは、通常の運転条件が変化した際や有機物負荷が急増した場合に発生しやすく、特に季節変動や工場の稼働状況の変化により発泡リスクが高まります。日々の運転データを確認し、過去のデータと比較して異常が見られる場合は原因の特定が必要です。
③放線菌の異常増殖
もう一つの発泡の原因として、糸状細菌の一種である放線菌の異常増殖も考えられます。放線菌は、酸素が十分に供給されない環境や栄養バランスが偏っている場合に増殖しやすく、発泡を引き起こす要因となります。この場合、顕微鏡観察を行い、放線菌の増殖状態を確認することで状況の把握を行います。
4.曝気槽での発泡への対策
曝気槽における発泡が発生した場合の対策を以下の表に示します。
消泡剤の使用は即効性があり、発泡を迅速に抑えることができますが、同時に曝気槽のDOの低下を引き起こすこともあり、使用量や頻度には注意が必要です。また、根本的な原因解決のためには、運転管理のデータを継続的に確認し、発泡の傾向を把握して適切な対策を講じることが重要です。
NAGASEが提供する排水ソリューションでは、曝気槽の発泡問題に対する課題解決提案に加え、専門家による排水コンサルティング業務も実施しています。現場の実態に合わせた排水処理の最適化提案を行い、お客様の悩み解決に向けてサポートいたします。曝気槽の発泡でお困りの場合は、ぜひNAGASEにご相談ください。
曝気槽は排水処理プロセスにおいて重要な役割を担い、適切な設計と運転管理が重要です。
曝気槽の疑問点を解消し、持続可能な工場運営を目指す一助となれば幸いです。
参考資料:北川幹夫著「省エネと環境に配慮した産業排水処理」日刊工業新聞社, 2013年
Jiri Wanner著「活性汚泥のバルキングと生物発泡の制御」技報堂出版, 2000年
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