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硝化脱窒処理不良の原因と解消法

2024.02.19

排水処理設備における上記の窒素に関連する問題は、水中に含まれるアンモニア、亜硝酸、硝酸成分が密接に関係しています。対策のためには、問題の要因を正しく特定して、適切に取り除くことが重要です。これらの問題解決に向け、NAGASEの排水ソリューションチームがお客様をサポートします!

硝化脱窒処理の原理と基本フロー

硝化脱窒処理は前段の硝化プロセスと後段の脱窒プロセスの組み合わせで行われます。硝化脱窒処理の標準方式のフローを以下に示します。

※標準方式は窒素濃度に対して比較的BOD濃度が低い場合に用いられます。

硝化槽の役割

硝化プロセスでは曝気による空気吹込みにより水中のアンモニア(NH4+)を酸化し、亜硝酸(NO2-)を経て硝酸(NO3-)まで酸化します。この段階で原水中に含まれるBODも同時に酸化します。これらの反応は下記の式で表されます。

  • アンモニア ⇒ 亜硝酸:NH4+ + 1/2O2 = NO2 + H2O + 2H+

  • 亜硝酸 ⇒ 硝酸:NO2 + 1/2O2 = NO3-

反応に伴いpHが低下するため、アルカリ源を添加することで適切なpHに維持する必要があります。

脱窒槽の役割

脱窒槽では、硝化により発生した硝酸(NO3-)を含む水が流入します。これに対して曝気を停止して酸欠状態にすると、嫌気性菌が硝酸イオン(NO3-)の酸素を消費して基質(メタノールなど)を分解し、硝酸を窒素ガスまで還元します。この反応は下記の式で表されます。※尚、脱窒用の基質として一般にメタノールが用いられるため、ここではメタノールを用いた場合の式とします。

5CH3OH + 6NO3- + 6H+ = 5CO2 + 3N2 + 13H2O

この式から、脱窒プロセスにおける窒素(N)とメタノールの比を計算すると、5CH3OH / 6N = 160 / 84 = 1.9 となり、除去したい窒素に対して約2倍量のメタノールが必要となることがわかります。また脱窒槽では反応に伴いpHが上昇するため、酸を添加して適切なpHに維持する必要があります。

再曝気槽の役割

脱窒槽で発生した気泡を汚泥から分離し、さらに過剰に添加したメタノールを分解します。

種々の硝化脱窒プロセス

硝化脱窒プロセスにおいて、窒素の除去率向上や、メタノールなど栄養源削減などを目的として、多種の変法が考案されています。

標準方式に対して、前段に脱窒槽を設けて硝化槽内部液を返送させるプロセスを循環方式と呼びます。原水中に含まれるBODを脱窒用の基質とすることで、標準方式に比べて高いBOD濃度の水に適用可能であり、後段脱窒槽で必要な基質の量を削減可能です。また循環水量を高めることで窒素の除去率を高めることができます。

循環方式では循環水で多くの水を返送させる必要がありますが、その水量を削減してさらに窒素除去率を高めるために考案されたのがステップフィード方式となります。循環方式に比べ、少ない循環水量で高い窒素除去率が達成できるため、ポンプ動力の削減が可能となり、脱窒槽への溶存酸素の持ち込みも減少して安定処理が可能となります。

硝化脱窒処理によくあるトラブルと解消法

硝化脱窒法によくみられるトラブルと原因、解消法を下記の表にまとめます。

ここでは処理水の窒素が除去しきれていない状況について、アンモニア性窒素が残留している場合、硝酸性窒素が残留してる場合の2通りについて、原因と解消法を例示します。また標準活性汚泥法などの通常の好気処理においても、原水中の窒素濃度が高いと曝気槽で硝化が起こる場合があります。この場合、後段の沈殿槽で嫌気化して脱窒反応が起こり、汚泥が沈殿槽水面に浮上する場合があります。これを解消させるためには、硝化脱窒の反応をよく理解し、沈殿槽で脱窒させないような措置をとることが重要です。

NAGASEが提供する排水ソリューションでは、排水処理の問題・課題解決に関する提案のみだけでなく、排水処理の専門家による排水コンサルティング業務も実施しています。まずはお客様の排水処理の現場を訪問させて頂き、どのような現象が起こっているのか診断させてください。お客様の悩み事解決に向け、NAGASEが全力でサポートしますので是非お問い合わせ下さい。

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硝化脱窒処理は窒素の酸化反応、還元反応を生物により行っているため、正しく運転を行わないと色々なトラブルが発生する可能性があります。トラブルが発生したら解消に向けてその原因を的確に把握し適切な対策を講じることが重要です。排水処理の課題を解決し、持続可能な工場運営を目指す一助となれば幸いです。

参考資料:北川幹夫、岡崎稔「省エネと環境に配慮した産業排水処理」日刊工業新聞社, 2013年

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