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曝気槽における溶存酸素不足の原因と解消法

2023.11.15

これらの症状は、曝気槽の溶存酸素(DO:Dissolved Oxygen)不足に起因していることが多いです。曝気槽における溶存酸素不足の問題は、汚水の流入条件や運転条件および機器類の能力等に関係しています。解決のためには、溶存酸素不足が発生する原因を特定し適切に対策を実施することが重要です。これらの問題解決に向け、NAGASEの排水ソリューションチームがお客様をサポートします!

活性汚泥法における溶存酸素とは?

有機性排水の処理において、広く普及している方式として「活性汚泥法」があります。活性汚泥法は好気性微生物処理の一種で、曝気槽と呼ばれる水槽に細菌と原生動物を中心とした生物群から構成される活性汚泥を保持し、流入する有機物を酸化分解します。活性汚泥中の微生物がしっかり働いてくれるためには、溶存酸素が重要な役割を果たしています。微生物に必要な酸素は、ブロワと呼ばれる送風機から曝気槽へ空気を供給し水中に溶解させます。送風の役割は酸素の供給とともに、活性汚泥と汚水の接触を十分に行い、汚泥が沈降しないように混合・撹拌するのにも必要です。

一方で、溶存酸素が不足すると、呼吸できなくなった微生物は死滅してしまい汚水の浄化が正常に行われず、汚泥腐敗による微生物活性の低下から、処理性悪化や悪臭などの発生にも繋がります。したがって、曝気槽内の溶存酸素濃度を適切に維持することが、正常な汚水の浄化を達成する重要な要素のひとつとなっています。

下記に活性汚泥処理の基本的なフローを示します。

活性汚泥に必要な酸素量

曝気槽内において汚水を浄化する際、活性汚泥に消費される溶存酸素は主に以下に分類されます。

  • 有機物分解:一般的にBODやCODで表される有機汚濁成分の酸化分解に必要な酸素量

  • 内生呼吸 :活性汚泥中の微生物の呼吸に必要な酸素量

  • 硝化反応 :排水中に窒素が含まれている場合、アンモニア態窒素を亜硝酸態窒素、硝酸態窒素へ酸化するのに必要な酸素量

これらの合計が、活性汚泥に供給する必要な酸素量となります。

曝気槽の溶存酸素が不足する要因

曝気槽の溶存酸素濃度は、汚水の流入条件や水処理系の運転条件により過不足が生じますが、今回は不足する原因について確認していきます。生物処理において溶存酸素が不足する原因としては、主に以下のような事が考えられます。

  • 流入有機物負荷量が高い ※ 当初計画に対し、生産品目変更による汚濁負荷が上がったり排水量が増えたりしていませんか?

  • 曝気槽のMLSS濃度(Mixed Liquor Suspended Solid)が高い ※ 必要以上に活性汚泥濃度を高くしていませんか? 

  • 送風空気量が不足している ※ブロワの能力は足りていますか?

  • 散気装置の目詰まりが発生し酸素溶解効率が低下している ※ 曝気槽表面の散気に偏りが生じていませんか? →散気装置 アクアブラスター

  • 水温の影響 ※ 夏場は水中に酸素が溶解しにくくなるため、風量一定のままでは溶存酸素が不足する可能性があります

曝気槽の溶存酸素不足の解消法

上記で示すように曝気槽の溶存酸素不足の原因はいくつか考えられ、その原因に見合う対策を実施することが重要です。溶存酸素不足の解消には下記に示すような方法が考えられます。

NAGASEが提供する排水ソリューションでは、排水処理の問題・課題解決に関する提案のみだけでなく、排水処理の専門家による排水コンサルティング業務も実施しています。まずはお客様の排水処理の現場を訪問させて頂き、どのような現象が起こっているのか診断させてください。お客様の悩み事解決に向け、NAGASEが全力でサポートしますので是非お問い合わせ下さい。

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生物処理プロセスの曝気槽における溶存酸素不足はよく見られる症状の一つであり、解消に向けてその原因を的確に把握し適切な対策を講じることが重要です。排水処理の課題を解決し、持続可能な工場運営を目指す一助となれば幸いです。

参考資料:公益財団法人 日本下水道協会 「下水道維持管理指針(実務編)」2014年

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