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排水処理における消費電力の削減方法 ~曝気動力の最適化による省エネのススメ~
2025.05.27
1.はじめに
前回の記事「排水処理設備に係るランニングコストについて」では、工場における排水処理の主なランニングコストとして電気代・汚泥処分費・薬品費が挙げられることをお伝えしました。
本記事では、その電気代の中でも特に大きな割合を占める曝気動力の削減を中心に、排水処理設備の省エネ対策について紹介します。
排水処理設備の維持管理・改善におけるコスト削減施策の一助となれば幸いです。
2.曝気動力削減の方策
排水処理設備の削減方法として代表的な方策を表にまとめます。

①高効率ブロワの導入による基本性能の向上
排水処理設備で使用されているブロワは、長期間使用されていることも多く、エネルギー効率が低下しているケースがあります。従来型のルーツブロワから高効率のターボブロワ等への更新は、電力使用量を大きく削減する効果が期待できます。
これらの高効率ブロワは、モーター損失が小さく風量あたりの消費電力(kWh/m³)が低いため、日常的に大量の空気を供給する曝気槽では、導入初期費用を差し引いても十分に費用対効果が見込めます。
一方で、高効率のターボブロワはルーツブロワに比べて初期投資が高いため、投資回収年数やライフサイクルコストの試算を含めた比較検討が必要です。
②散気管の見直しによる酸素溶解効率の向上
同じ風量を供給しても、酸素が水中にどれだけ効率よく溶け込むかによって、必要な曝気時間や風量は大きく変わります。そのため、酸素溶解効率(OTE)が高い微細気泡型の散気管への更新は、必要風量や曝気時間の短縮につながります。
また、散気管の目詰まりや経年劣化によって性能が低下する場合も多いため、定期的な点検・清掃・交換も有効です。
③原水負荷に応じた風量の自動制御
排水量や有機物負荷(BOD、CODなど)は、時間帯や生産スケジュールによって大きく変動します。しかし、酸素を確保するために常に一定風量で運転している施設も多く、過剰な曝気による電力の無駄が発生しがちです。
そこで、DOセンサーなどの水質計器を活用し、曝気槽の状態をリアルタイムで監視したうえで、**風量を自動制御するシステム(例:PID制御)**を導入すれば、必要なときに必要な量だけ空気を供給できます。
この方法は省エネだけでなく、過曝気やDO不足の抑制にもつながり、安定運転にも寄与します。
④嫌気処理の導入による省エネ・創エネ
曝気処理は有機物除去に有効で適用範囲も広いですが、その分大量の酸素=エネルギーを必要とします。これに対し、嫌気性処理を前処理として導入することで、有機物の一部を曝気を行わずに処理することができます。
特にBOD濃度が高い食品系排水などでは、嫌気処理によって有機物の負荷を事前に低減し、後段の曝気負荷を軽減できるため、排水処理プロセス全体の消費電力の大幅な削減が期待できます。
さらに、嫌気処理で発生するバイオガスを利用して発電やボイラー燃料に活用することも可能であり、省エネと同時に創エネも実現することができます。
嫌気処理の導入事例はこちら (Coming Soon)
3.おわりに
排水処理における電気代の削減は、一時的な対策ではなく、継続的な運転コストの最適化につながる重要なテーマです。 自社の排水負荷や処理方式に応じた最適な省エネ手法の導入を、ぜひご検討ください。
NAGASEでは、排水処理の専門家による現場診断・改善提案・機器選定の支援を行っております。 お客様の工場における課題を丁寧にヒアリングし、最適なソリューションをご提案いたします。
持続可能な工場運営の実現に向け、ぜひお気軽にご相談ください。
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