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排水処理における消費電力の削減方法 各論② ~高効率散気管による省エネのススメ~

2025.05.29

1.はじめに

工場排水処理において、曝気工程の消費電力は全体のランニングコストの中でも大きな割合を占めています。特に生物処理を行う曝気槽では大量の空気を供給する必要があり、ブロワの運転にかかる電力は無視できないコスト要因です。

この曝気工程における電力削減の有効な手段の一つが、高効率な散気管(ディフューザー)への更新です。この記事では、高効率散気管の導入による消費電力削減の原理について紹介します。

2.高効率散気管による消費電力削減の原理

曝気工程は、排水処理において有機物の分解や微生物の呼吸を維持するために酸素を供給する重要なプロセスであり、十分な空気を送り込む必要があります。曝気槽に同じ風量を供給した場合でも、「どれだけ効率よく酸素が水中に溶け込むか」によって、必要な曝気時間や風量は大きく変わります。

この効率を高める手段の一つが高効率散気管の導入です。

従来の散気管は比較的大きな気泡を発生させる構造でしたが、微細気泡型の高効率散気管では、気泡と水との接触面積が大きく滞留時間も長いため、水中への酸素移動効率が飛躍的に向上します。これにより、同じ処理効果を得るために必要な風量を削減することができ、結果としてブロワの運転時間や負荷の軽減=電力使用量の削減につながります。

また、散気管は経年により目詰まりや劣化が進行し、酸素供給効率が低下することが多いため、定期的な点検・清掃・更新も重要な省エネ対策となります。

3.酸素溶解効率(OTE)

省エネ効果を定量的に把握するために重要となる指標が酸素溶解効率(OTE: Oxygen Transfer Efficiency)です。OTEとは、供給した空気中の酸素のうち、どれだけの割合が実際に水中に溶解したかを示す値です。一般に、OTEが高いほど、効率的に酸素を供給できている=少ない風量で済むことを意味します。

<酸素溶解効率(OTE)の概念図>

散気装置の設計や運転条件によってこの効率は大きく変化し、たとえば下記のような要因が影響します:

  • 気泡の大きさ(小さいほど気液接触面積が大きくなり効率向上)

  • 接触時間(水中に滞留する時間)

  • 水深(深いほど酸素が長く滞留)

  • 水温や圧力

  • 汚泥濃度や界面活性物質の存在

高効率散気管を導入することで、これらの要因を有利に働かせ、結果としてOTEの向上が見込めます。

OTEの改善は、単に電力コストの削減だけでなく、処理能力の安定化や負荷変動への対応力強化にもつながります。

4.高効率散気管の選定と導入時のポイント

高効率散気管を導入する際には、設備の構造や運転条件に適した製品を選定することが重要です。たとえば、処理対象水の性状(SS濃度や油分の有無など)、既設ブロワの風量・圧力、曝気槽の深さ・形状などを考慮する必要があります。

また、メンブレン型の微細気泡型の散気管は目詰まりしやすいため、メンテナンスのしやすさも評価ポイントとなります。導入時には、既存配管との接続可否や取り付け方法の確認、設備停止を伴う工事計画も重要です。

さらに、導入効果を最大化するには、風量制御やブロワの最適運転との組み合わせによる全体最適を意識することが求められます。高効率散気管は単体の製品性能だけでなく、システム全体としての調和が省エネ効果に直結するため、専門的な知見に基づいた選定と導入計画が鍵となります。

散気管の入れ替えに伴う事例はこちら

ブロワの風量制御に関する事例はこちら

5.おわりに

排水処理における省エネ対策は、運転コストの削減だけでなく、環境負荷の低減にもつながる重要な取り組みです。NAGASEが提供する排水ソリューションでは、排水処理の専門家による排水コンサルティングを通して、現場の状況に応じた最適な散気装置の選定や改善提案を行っております。ぜひお気軽にご相談ください。

工場で発生している排水処理の問題や課題を解決し、持続可能な工場運営を目指す一助となれば幸いです。

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