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MBR処理における膜ファウリング(閉塞)の原因と防止策について

2024.05.15

1.概要

MBR(膜分離活性汚泥法)処理において膜ファウリング(閉塞)を防止することは、生物処理プロセスと固液分離を安定化させるために重要な操作因子となります。今回は、膜分離装置を用いた排水処理のファウリングを引き起こす原因とその予防策について紹介します。

2.膜のファウリングとは?

排水処理における膜のファウリングとは、膜分離操作中(固液分離)に膜表面または膜の細孔内に、閉塞物質(ファウラント)が蓄積し閉塞したり、膜表面に堆積(ケーキ層)することにより膜ろ過性能が低下する現象を言います。下図に膜閉塞の概念図を示します。

膜孔径よりも十分な汚泥フロックは膜表面に堆積し(a)のようなケーキ層を形成する膜を閉塞させます。膜孔径とほぼ同じサイズの物質は(b)のように膜細孔の入口や内部に侵入し、最高を塞ぐように膜を閉塞させ、これは完全閉塞とも呼ばれます。膜孔径よりも十分に小さな物質は、膜細孔を通過するが、一部の物質が膜細孔の内部に付着することで、次第に膜細孔を閉塞するようになり、これを標準閉塞と呼びます。

一般的に膜ファウリングは、排水中の有機物やコロイドが膜表面で蓄積したり、微生物が膜表面で増殖したりすることで発生します。通常の水処理では一定のろ過水量で操作を行うため,ファウリングの進行と共に操作圧力(膜差圧)が増加します。この膜差圧が所定の上昇速度よりも速くなることで、頻繁な逆洗や薬品洗浄等が必要となり、それが運転コストの増大をもたらします。このような膜ファウリング機構の解明や抑制については,現在でもまだ完全には達成されているとは言い難いですが,これは膜ファウリングに影響を与える因子が非常に多いことに起因しています。

3.ファウリングの原因

膜ファウリングは大きく分けて、以下3つの因子が大きな影響を及ぼすと言われています。

  1. 膜特性(材質や孔径)

  2. MBR槽内水質

  3. 運転条件

膜特性とMBR槽内活性汚泥の性状は膜ファウリングの進行に直接的な影響を及ぼします。特に、生物処理が不安定な時に活性汚泥が放出する多糖類やタンパク質は膜ファウリングの原因物質として強く関与する成分として知られています。また、ろ過方法、膜洗浄空気量、ろ過フラックス(ろ過流束)、薬品洗浄方法なども膜ファウリングの進行に直接的な影響を及ぼします。その他、原水水質、水理学的滞留時間(HRT)ならびに汚泥滞留時間(SRT)などは活性汚泥の性状に影響を及ぼし、間接的に膜ファウリングの進行に影響を及ぼし、特にコロイド状の成分や溶解性成分が多く含まれる場合は、膜ファウリングを招く要因となります。

4.ファウリングの防止策

膜ファウリングの防止策として、以下が挙げられます。

  1. 生物処理の安定化:残存する有機物を低減し安定した水処理を達成する

  2. 運転条件の変更:ろ過フラックスを下げる、膜洗浄空気量を増加させる、薬品洗浄頻度を多くする

  3. 凝集剤や粉末活性炭の添加:密な汚泥フロックを形成し汚泥ろ過性を向上させる

  4. 膜表面の改質:ファウラント物質が付着しづらいように膜表面を改質する

MBR膜のファウリングを要因別に対策をまとめた表を以下に示す。

膜ファウリングの抑制はMBR処理における重要な課題です。これまでに示したように、生物処理、運転条件、膜特性などが排水処理プロセスの過程で複雑に絡み合い膜ファウリングを引き起こします。上記対策を講じることで膜ファウリングの抑制および安定運転には繋がりますが、ろ過水量の低下や風量増加に伴う電力消費量や洗浄頻度の増加による薬品使用量の増加、膜材質改質による初期費用の増加などコスト増大とのトレードオフの関係にあります。MBR処理を省エネかつ安定して運用できるよう下記の方法が検討されており、被処理水の性状と処理プロセスに見合った膜分離装置の選定と運転条件の設定が重要となります。

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MBRプロセスにおける膜ファウリング抑制は、排水処理安定化のために重要な要素です。工場で発生している排水処理の問題や課題を解決し、持続可能な工場運営を目指す一助となれば幸いです。

参考資料:

  • 特集 人工膜シンポジウム1「膜による水処理技術を展望する膜による水処理技術の現状と最新動向 39(4), 209-216(2014)

  • 下水道への膜処理技術導入のためのガイドライン[第2版]

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