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排水中の油分が生物処理に与える影響とその前処理について
2024.07.24
排水に含まれる油分除去について、後段の生物処理を含めお悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか?今回は、活性汚泥法などの生物処理の阻害要因となる油分流入について、その影響と前処理方法をいくつか紹介します。浮遊活性汚泥や生物膜法などの生物処理槽に高濃度の油分が流入した場合、処理性の悪化を招きます。また、膜分離活性汚泥法(MBR)を採用している処理プロセスでは、生物処理とともに膜閉塞の要因にもなるため、生物処理の前段で適切に油分を除去することが重要です。
生物処理へ油分が流入した場合の影響については下記に示す内容が考えられます。
活性汚泥フロックや生物膜に油分が付着し、基質との接触効率が低下し処理性が悪化する
MBRの膜表面に油分が付着することで膜ファウリングを引き起こす(関連記事:MBR処理における膜ファウリング(閉塞)の原因と防止策について)
メンブレン散気装置等の目詰まりの原因となる
水質計器の電極部に油膜が付着し正常な測定を妨げる
1. 排水に含まれる油分とは?
排水中に含まれる油分を表す指標として用いられるのが、ノルマルへキサン抽出物というもので、水分中の油分量を表します。測定方法は、試料をpH 4以下の塩酸酸性にして,ヘキサンで抽出を行い、80 ℃でヘキサンを揮散させて残留する物質の質量をはかってヘキサン抽出物質を定量します。但し、界面活性剤、洗剤、染料などもノルマルへキサンから抽出されますので、油分量だけを表すものではないことに留意が必要です。
なお、水質汚濁防止法・下水道法ではノルマルヘキサン抽出物質の排水基準が次のように定められています。
動植物油脂類・・・30mg/L以下
鉱油類・・・5mg/L以下
河川放流において放流水中に高濃度の油分が流出すると、魚介類の死滅や油臭の原因となります。また、下水放流では、下水管の詰まり、処理施設での火災の発生、処理能力の低下の原因になります。よって、上述した問題発生を防止するために、排水中の油分を適切に処理し環境中に放流することが重要です。
2. 油分の性質
前述したように、油分には鉱物油と動植物油があり排水基準が異なります。そのため、排水中に含まれる油分の分類に応じた処理方法を検討することが重要です。また、油分には懸濁物質(固形分:SS)に由来するものと、水中にエマルジョン化(乳化)しているものに大別できます。固形油脂のようなものであれば、SSを除去することでおおよその油分を除去することが可能となるケースもあります。
一方で、エマルジョン化している場合は、乳化を破壊した上で処理する方法が一般的です。乳化破壊には、無機塩の添加・温度変化・遠心分離などがあります。その後適切な処理法にて油分を除去します。
3. 排水中の油分除去方法
ここでは、生物処理の前処理として採用される一般的な油分除去方法を紹介します。
(1)自然浮上分離法
自然浮上分離法では、オイルセパレータやグリストラップがあります。油は水より比重が軽いのが一般的で、この比重差を利用し浮上した油分を除去することで取り除く方法です。導入コストが安価なため、前処理として導入されるケースが多くあります。
(2)加圧浮上法
加圧浮上装置は、排水処理の分野で広く採用されており実績も多い処理方法です。一般に沈降しにくい懸濁物質や油分を含んだ排水の処理に適しています。加圧浮上槽は、通常の沈殿処理における沈降速度に比べて10倍程速い浮上速度を採用できるため、滞留時間が短く施設もコンパクトにでき、設置面積も小さくできます。加圧浮上は、加圧下で水中に溶解した空気を常圧に戻すことで微細気泡を発生させ、懸濁物質に付着させて浮上スカムとして分離し、清澄な水は加圧浮上槽下部から集水します。但し、処理水質や安定性は沈殿法より劣る場合があるため余裕を持った設備とすることが望ましいです。
なお、浮上分離の前処理としてPACや硫酸バンドなどの無機凝集剤と高分子凝集剤で懸濁物質の凝集処理を行うことが一般的です。高濃度油分排水を吸着剤に通すと閉塞が速くなり交換頻度も多くなるため、自然浮上分離法など前処理が必要です。
加圧浮上処理+活性汚泥法:
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排水の油分除去は、排水処理安定化のために重要な要素です。工場で発生している排水処理の問題や課題を解決し、持続可能な工場運営を目指す一助となれば幸いです。
参考資料:
吉村二三隆著「わかりやすい水処理設計」栗田工業出版, 2011年
井出哲夫著「水処理工学 理論と応用」2001年
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