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膜分離活性汚泥法(MBR)の概要と特長

2024.03.13

1.膜分離活性汚泥法の概要と特長

膜分離活性汚泥法(MBR:Membrane BioReactor)は、従来の沈殿槽による固液分離に代わりに、曝気槽もしくは膜分離槽内に膜分離装置(膜ユニット)を浸漬し、活性汚泥と処理水を分離する処理プロセスです。

MBRプロセスの主な特長として以下が挙げられます。

  1. 膜分離装置により強制的に曝気混合液をろ過しているため、沈殿槽が必要ない。

  2. 汚泥がバルキング状態であっても、SSを完全に除去した清澄な処理水が得られる。(関連記事:バルキングの原因と解消法

  3. 三次処理として設けられるような、凝集沈殿やろ過等のプロセスを設ける必要性がない。

  4. 沈殿槽による固液分離ではないため、曝気槽内の汚泥濃度(MLSS)をおおよそ8,000~15,000mg/Lなど高濃度に保持できることから、容積負荷を高く設定することができ、処理設備をコンパクトにすることができます。※膜メーカーによっては、MLSS濃度20,000mg/Lまで対応する膜分離装置ものもある。

  5. 汚泥を高濃度に保持することから、SRT(固形物滞留時間)が長くなり、標準活性汚泥法と比較すると30%程度余剰汚泥の発生率が 小さくなる傾向がある。

  6. 凝集剤の添加により高度なリン除去が可能である。(関連記事:排水処理に使用する凝結剤・凝集剤について

世界的には、大規模処理場においてもMBRの採用実績が増えており、処理プロセスとして標準化の動きもみられ、国内においても中規模処理場や改築更新時の高度処理化を行う際の中心的な技術となりつつあります。

2.膜の種類

排水処理のMBRに用いられる膜の種類としては、UF膜注1)も使用されることはありますが、主に膜孔径が0.1~0.4μmのMF膜注2)が主流となっており、主に中空糸膜や平膜が使用されています。膜の材質は主に有機膜と無機膜に分類されます。有機膜は、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)やPTFE(ポリテレフタラート)から製造され、無機膜はセラミックが用いられます。

<注釈>

注1)UF:UltraFiltration(限界ろ過):UF 膜は,MF 膜より小さい孔径を持つもので,主にタンパク質等,分子量数千以上の高分子物質の濃縮やろ過等の用途に用いられます。粒子状物質以外に,ウイルスや溶解性有機物の一部も除去できることが特長です。

注2)MF:MicroFiltration(精密ろ過):MF 膜は,0.01~10μm 程度の孔径を持っており,微細な粒子や細菌を分離・除去するものです。MBR で用いられる場合は,0.1~0.4μm 程度の孔径が多く,SS 測定用のろ紙(孔径1μm)や大腸菌等の細菌の大きさ(概ね1μm 程度)よりも小さいことから,膜処理水からSS が検出されないまでに除去することができます。医療用の除菌フィルタ等としても利用されています。

3.処理フロー

MBRプロセスの一般的な処理フローを図ー1,2にそれぞれ示します。

図ー1は、膜分離装置が曝気槽に浸漬されており、このような浸漬方式を一体型、図ー2は、膜分離装置を別水槽に浸漬方式を槽別置型といいます。なお、膜分離装置の種類によっては、逆洗機能が不要な設備もあり、その場合は逆洗ポンプを設ける必要はありません。

一体型の槽別置型の特長は以下となります。

4.運転管理

MBRの膜ろ過において重要な管理パラメータは膜ろ過の差圧です。膜差圧は膜表面の閉塞度合を確認するために必要な指標です。膜差圧の挙動は、運転するFlux(ろ過流束)や生物処理の運転状況に大きく影響されます。高すぎるFluxや不安定な生物処理は膜差圧の上昇や薬液洗浄頻度の増加を招きます。安定したMBRプロセスの運転管理を達成するためには、排水種別や負荷に見合ったFluxの設定と安定した生物処理が達成できる条件で運転することが重要となります。

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MBRプロセスは、排水処理設備の能力増強や固液分離障害の解決ができる技術の1つです。工場で発生している排水処理の問題や課題を解決し、持続可能な工場運営を目指す一助となれば幸いです。

参考資料:吉村二三隆「わかりやすい水処理設計」栗田工業出版, 2011年

下水道への膜処理技術導入のためのガイドライン[第2版]

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