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凝集沈殿法の原理と特徴
2024.09.24
1.概要
凝集沈殿法は、排水中に含まれる粒子を凝集剤の添加により、大きなフロックにして沈殿分離する方法です。主に、粒子がコロイド状に分散して沈降しにくく、自然沈殿法では固液分離が困難な浮遊物質を、凝集剤の添加によって凝集させ分離除去するプロセスに用いられます。
2.一般的な処理フロー
凝集沈殿処理の一般的なフローは、調整槽→反応槽→pH調整槽→凝集槽→沈殿槽から構成されます。反応槽は、調整槽から供給される定量の排水に、無機凝集剤を注入し懸濁粒子を凝結させます。pH調整槽は、凝集反応に適したpH域に調整するために設けられ、凝集槽では、高分子凝集剤を注入し、凝結したフロックを粗大化させます。(関連記事「排水処理に使用する凝結剤・凝集剤について」)凝集反応により形成したフロックを、沈殿槽で固液分離し、上澄水と汚泥に分離し、排水中に含まれる粒子を除去するプロセスです。処理フローの模式図を下記に示します。
3.主な凝集剤
凝集沈殿法に用いられる主な凝集剤を下記表に示します。
排水中の懸濁粒子のほとんどは負に荷電した粒子であることや水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄(Ⅲ)のような金属水酸化物は表面が正に荷電し、またそのゼラチン状の性状から浮遊粒子を吸着、包括する効果も大きいため優れた凝集効果を発揮します。このため、無機凝集剤としては毒性も少なく、廉価なPAC、塩化第二鉄(Ⅲ)などが広く普及しています。また、これら無機凝集剤によって生成するフロックの機械的強度はそれほど大きくないため、フロック強度を高める高分子凝集剤があります。これらの高分子凝集剤は、水に溶解したときの架電の仕方によって、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性に分離され、またイオン濃度、分子量の違いによって多くの種類があります。
4.凝集剤の選定
排水処理に最適な凝集剤は、ジャーテストなどの凝集試験により選定します。凝集試験とは、供試排水をビーカーにとり凝集剤を注入して一定時間後の上澄水の水質、生成されるフロックの大きさ、強度、沈降速度等を比較し、凝集剤の種類、注入量、凝集条件(撹拌強度、反応時pH等)等を決定します。沈殿槽の水面積負荷においても、このような凝集試験によって推定することが望ましいです。また、凝集剤のみでは充分な凝集効果や沈降速度が得られないときは、凝集助剤の使用を検討します。凝集助剤にはフロックの生成を良くする効果をもつもの、生成したフロックの沈降速度を改善するもの等があります。
5.凝集沈殿処理でよくみられる問題
凝集沈殿処理でみられる問題として、以下のことが考えられます。
凝集剤の注入率は変えていないのにフロックが形成されない
pHが変動して、凝集不良を起こしている
凝集沈殿処理水にSSがリークしていないか
高分子凝集剤溶液が劣化していないか
無機凝集剤の添加濃度は規定通りか
計画当初に対し、原水水質に変化はないか
工場排水においては製造品目などの変更はないか
NAGASEが提供する排水ソリューションでは、凝集沈殿処理の問題・課題解決に関する提案のみだけでなく、排水処理の専門家による排水コンサルティング業務も実施しています。まずはお客様の排水処理の現場を訪問させて頂き、どのような現象が起こっているのか診断させてください。お客様の悩み事解決に向け、NAGASEが全力でサポートしますので是非お問い合わせ下さい。
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凝集沈殿処理は排水処理プロセスにおいて重要な役割を担い、適切な設計と薬剤選定が重要です。凝集処理の疑問点を解消し、持続可能な工場運営を目指す一助となれば幸いです。
参考資料:水処理工学 理論と応用 井出哲夫著
事業場排水指導指針と解説 2016年版 公益財団法人 日本下水道協会 p189 凝集沈殿処理
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