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汚泥浮上の原因と解消法

2023.08.21

活性汚泥法の沈殿槽における固液分離障害は発生する可能性の高いトラブルですが、多岐の要因が考えられます。これらの問題解決に向け、NAGASEの排水ソリューションチームがお客様をサポートします!

固液分離障害の症状分類

標準活性汚泥法や多段活性汚泥法、硝化脱窒設備において、沈殿槽の上澄み水に含まれるSSに起因して処理水質が悪化することがあります。沈殿槽は一般に排水処理設備の末端に位置する設備であり、このような問題が発生すると放流水質基準の未達に直結する可能性があるため、優先度の高い対応が求められます。処理水SSの悪化が発生している際は、沈殿槽において汚泥の沈降分離性が悪化しているため、その症状を分析して原因を特定し、原因に応じた適切な対応が必要となります。

このような問題発生時によくみられる症状は下記のようなものが挙げられます。

  1. 沈殿槽の汚泥界面が高くなり、全面や一部から汚泥が流出する(膨化)

  2. 沈殿槽で泡が発生し、その泡が汚泥に付着して浮上し、処理水に流出する(浮上)

  3. 汚泥界面は低いが、微細なフロック(ピンフロック)が処理水に流出する(解体)

  4. 沈殿槽で部分的に汚泥が巻き上がる(その他外的要因)

今回は 2 のような発泡による汚泥浮上の問題に着目し、その原因と解消するための対策について解説します。1 のような汚泥沈降不良の症状では汚泥のバルキングが疑われます。その場合はこちらの記事(バルキングの原因と解消法)を参照ください。

汚泥浮上の原因調査方法

沈殿槽における泡の付着による汚泥浮上は、沈殿槽底部に存在する汚泥が脱窒現象を引き起こし、発生した微細な窒素ガスが汚泥に付着することで発生します。原因が本当に脱窒現象による汚泥浮上なのかどうかを検証するために、下記の分析を行うと効果的です。

(1)SV30、SV60、SV120を測定する

→ SV(Sludge Volume)は1Lのメスシリンダーに曝気槽汚泥を投入し、所定の時間放置したときの汚泥量(比率)です。SVの後の30、60、120は放置時間(単位は分)を示します。沈殿槽において脱窒現象が発生している場合、SV30、SV60およびSV120を測定すると、SV30やSV60に比べてSV120(またはそれ以上の時間)のほうが大きい値を示すことがあります。これは放置中に脱窒反応が進行し、微細な窒素ガスが徐々に発生して汚泥に付着し、一度沈んだ汚泥が浮上することによります。

(2)沈殿槽の水面を確認する

→ 沈殿槽の水面を目視確認し、微細気泡が発生しているかを確認します。沈殿槽において脱窒現象が発生している場合、沈殿槽の水面にプツプツと窒素ガスが浮上しているケースがあります。

(3)曝気槽流出液(沈殿槽流入液)のNO2-、NO3-を分析する

→ 曝気槽から沈殿槽へ流入する液を採取し、汚泥を5Cろ紙などで取り除いたろ液に対して亜硝酸性窒素(NO2-)と硝酸性窒素(NO3-)を分析します。亜硝酸性窒素と硝酸性窒素の濃度が合わせて10mg/L程度以上となる場合、沈殿槽において脱窒反応による汚泥浮上が起こりやすくなります。

上記の調査により現状の設備を詳しく分析することで、問題の要因を特定します。

汚泥浮上時の対策

沈殿槽で脱窒現象が起こり汚泥が浮上している状況では、沈殿槽下部において嫌気性雰囲気となり、共存する硝酸、亜硝酸の還元反応が起こっている可能性があります。上記で挙げた調査により、脱窒現象が汚泥浮上の原因と特定されれば、曝気槽や調整槽の運転条件を変更したり、薬剤の添加などにより脱窒現象を抑制する対策が有効です。ここでは、運転条件調整、薬品添加、設備改修の3つの観点での汚泥浮上の対策を記載します。

運転条件の最適化には、BOD、COD、T-N、T-P、ノルマルヘキサン抽出物質などの原水条件の正しい把握と、現状の汚泥濃度(MLSS)や曝気出口水質の確認が必要となります。

NAGASEが提供する排水ソリューションでは、排水処理の問題・課題解決に関する提案のみだけでなく、排水処理の専門家による排水コンサルティング業務も実施しています。まずはお客様の排水処理の現場を訪問させて頂き、どのような現象が起こっているのか診断させて頂きます。お客様の悩み事解決に向けたサポートを、NAGASEが全力でサポートしますので是非お問い合わせ下さい。

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生物処理プロセスの沈殿槽における汚泥浮上はよく見られる問題の一つであり、解消に向けてその原因を的確に把握し適切な対策を講じることが重要です。排水処理の課題を解決し、持続可能な工場運営を目指す一助となれば幸いです。

参考資料:北川幹夫、岡崎稔 「省エネと環境に配慮した産業排水処理」 日刊工業新聞社 2013年

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