KNOWLEDGE

脱水機の種類と特徴

2024.09.10

1.脱水の意義と目的

水処理において、凝集沈殿や加圧浮上、生物処理から発生する汚泥の固形物濃度はおよそ1~2%程度であり、その98%以上は水分で構成され、そのままでは非常に大量の汚泥が発生することになります。したがって、汚泥の処分を安全で衛生的かつ経済的に行うためには減量化、減容化は不可欠であり、汚泥に含まれている水分を除去・減少させる汚泥脱水は重要な操作です。脱水機は汚泥中の水分を分離し、廃棄物の体積を大幅に減少させる装置です。ここでは主な脱水機として、下記に挙げる種類とその特徴についてご紹介します。

  • ベルトプレス脱水機

  • 遠心脱水機

  • スクリュープレス脱水機

  • 多重円盤脱水機

  • フィルタープレス脱水機

2.ベルトプレス脱水機

ベルトプレス脱水機は2枚のろ布の間に汚泥を挟み、数本のロール管を屈曲移送させ、ロールから受ける圧力と屈曲走行により生ずるせん断力との相互作用により、連続的に効率よく脱水を行います。本形式の脱水機は各社取り揃えていますが、共通する構造として、凝集処理部、走行しているろ布上に凝集フロックを供給し遊離水の一部をろ過する重力ろ過部、2枚のろ布の間に重力ろ過された凝集フロックを挟みながら脱水する脱水部、および洗浄機構などの付属機器で構成されます。

ベルトプレス脱水機は一般に下記のような技術的特徴を有します。

  • 真空や遠心分離などを用いないため、省エネルギーである

  • イニシャルコストが比較的安い

  • 運転中の振動や騒音が少ない

  • 構造が簡単でありメンテナンスが容易

  • ろ布の目詰まりに注意が必要であり、定期的に交換がろ布必要となる

3.遠心脱水機

遠心脱水機では、機内で高い遠心力と、汚泥と液の比重差により沈降・濃縮・脱水を一挙に行う方法です。最近では、高分子凝集剤の注入は脱水機内で行われるものが多く、供給された汚泥は高速回転している外胴内で凝集剤と反応し、フロックが形成されます。形成されたフロックは強力な遠心力によって外胴壁に沿って集まり、濃縮され、徐々に水分が減少していきます。遠心脱水は大きな動力を必要とする代わりに処理量当たりの設置スペースが比較的小さいなどのメリットがあります。

遠心脱水機は一般に下記のような技術的特徴を有します。

  • 設置スペースが小さい

  • 連続的な処理が可能である

  • 密閉式であり臭気が発生しにくい

  • 比較的消費電力が大きい

4.スクリュープレス脱水機

スクリュープレス脱水機は、横型で固定された円筒スクリーンとその内部で回転するスクリュー軸および羽根、スクリューの一方側にホッパー状のスラッジ供給口、出口側にケーキ排出口などで構成されます。汚泥入口からケーキ排出口に向かうにつれてスクリューと円筒スクリーン間の容積が減少するように設計されており、汚泥が徐々に圧搾・脱水されて排出されます。スクリュープレスは他の脱水方式に比べて本体の構造が簡単であり、連続で高い圧搾脱水ができる反面、メッシュ径を小さくすると詰まりが生じやすく、メッシュ径を大きくすると固形物回収量が悪くなるなどの難しさもあります。

スクリュープレス脱水機は一般に下記のような技術的特徴を有します。

  • 軸が低速回転であるため、省エネルギーである

  • 連続的な処理が可能である

  • 騒音や振動が少ない

  • 構成部品が少ないのでメンテナンスコストが抑えられる

  • 汚泥性状に適した凝集剤、メッシュの選定が必要になる

5.多重円盤脱水機

多重円盤脱水機はスクリュープレスの一種であり、円盤状のろ体を上段と下段に設置し、それらを回転させ、汚泥を運搬しながら脱水を行います。ろ体の設置間隔が出口に近くなるにしたがって狭く配置されており、せん断と圧搾により効率よく汚泥を脱水することができます。尚、多重円盤脱水機はろ体で汚泥を絞る機構的観点からスクリュープレスの一種とも捉えることもできます。各社に共通する構造として、凝集処理部、回転しているろ体上に凝集フロックを供給し遊離水の一部をろ過する重力ろ過部、上下の円盤の間で重力ろ過された凝集フロックを挟みながら圧力脱水する脱水部、および洗浄機構などの付属機器で構成されます。

多重円盤脱水機は一般に下記のような技術的特徴を有します。

  • 真空や遠心分離などを用いないため、省エネルギーである

  • フィルターなどを用いないため、洗浄や交換部品が少ない

  • ろ体を低速で回転させるため、運転中の振動や騒音が少ない

  • 汚泥中に異物などがあると円盤摩耗や故障の原因となる

6.フィルタープレス脱水機

フィルタープレス脱水機は多数のフィルタープレートとフレームで構成されています。調質した汚泥を加圧してフィルタープレートの間に送り込み、加圧によって液体がフィルターを通過し、固体がフィルタープレートの間に残され、脱水が行われます。脱水の操作工程は他の機種に比べて多いですが、構造が簡易であり高い圧力をかけることで脱水ケーキの含水率を低減することができます。

フィルタープレス脱水機は一般に下記のような技術的特徴を有します。

  • 高い圧力により、多くの種類の汚泥に対応可能である

  • 圧力を高くすることで含水率を低減可能である

  • ろ液の清澄性が良好である

  • メーカーにより数多くの種類や方式がある

いかがでしたでしょうか。

NAGASEが提供する排水ソリューションでは、排水処理の問題・課題解決に関する提案のみだけでなく、排水処理の専門家による排水コンサルティング業務も実施しています。まずはお客様の排水処理の現場を訪問させて頂き、どのような現象が起こっているのか診断させてください。お客様の悩み事解決に向け、NAGASEが全力でサポートしますので是非お問い合わせ下さい。

お問い合わせはこちらから

脱水機は、排水処理設備の末端装置であり、工場の安定稼働や廃棄物削減のために重要な役割を持ち、適切な選定と管理が求められます。お客様の汚泥の状態により適切な機種や運転条件を選定する必要があります。工場で発生している排水処理の問題や課題を解決し、持続可能な工場運営を目指す一助となれば幸いです。

参考資料:東京都下水道サービス株式会社「ポリマー凝集剤 使用の手引き」

本件に関するお問い合わせ

下のフォームにお問い合わせ内容をご入力いただき、
個人情報の取り扱いに同意のうえ「送信」ボタンを押してください。