公開日:2024/7/3

最終更新日:2024/6/28

海に廃棄された漁網を再利用したスマートフォンを開発

毎年約64万トンの漁網が海洋に放置され、生物を捕捉したり、環境に打撃を与えています。さらに私たちの食糧や水源にまで影響を与えている今、未来を守るために行動する必要があります。そこで今回は、エンバリオ社とサムスン電子が共同で開発した、廃棄漁網で作られた環境配慮型ポリマー「Akulon® RePurposed」をご紹介します。

持続可能な世界へのシフトを加速するために

インド西部の海岸線を歩くと、黄金色のビーチが広がり、高いヤシの木、岩だらけの崖など、息を飲むような景色を目にすることができます。しかし、その海岸には、水筒やスーパーの袋、ストロー、さらには漁網など、たくさんの漂着ゴミも落ちています。今日、プラスチックゴミは海にとって最も差し迫った脅威であり、中でも廃棄された漁網は最も危険な原因の一つです。漁網は地球を傷つける廃棄物の悪循環に陥っており、さらに広く言えば、私たちの社会の「取って・作って・捨てる」アプローチは、地球の貴重な資源を急速に枯渇させる一因となっているのです。

エンバリオ社の南アジア・ビジネスディレクターであるNileshkumar Kukalyekar氏は言います。「より持続可能な世界へのシフトを加速させるために、創造的なソリューションを開発するために協力することが不可欠です」と。その想いから、エンバリオ社はモバイル業界のリーディング・カンパニーであるサムスン電子と提携し、革新的で環境を意識した技術を開発しました。

Akulon® RePurposedで海を守る

サムスン電子のMX事業マテリアルR&DマネージャーであるPranveer Singh Rathore氏は次のように話します。

「私たちは、モバイル体験のトップ・イノベーターとして、テクノロジーを人々と地球の可能性を開く強力なツールとして活用することを約束します。これは、私たちの環境保護の旅におけるエキサイティングな一歩であり、エンバリオ社を含むパートナーの協力なしには実現しなかったでしょう」

その結果、開発されたのがインド洋周辺で回収された廃棄された漁網から作られた高性能ポリマー「Akulon® RePurposed」です。

よりきれいな海に貢献し、顧客が低炭素循環経済を推進するのを支援する方法をエンバリオ社が研究し始めたのが、2017年。その後、廃棄された漁網に新たな命を与え、価値ある高性能素材の一部として活用できることを発見。インドの現地パートナーと協力し、漁網を収集、選別、洗浄し、ポリアミド樹脂ペレットに加工し、リサイクル・ポリアミド6を80%以上使用した環境配慮型ポリマーに生まれ変わらせたのです。Akulon® RePurposedはシンプルな設計と優れた機械的性能を提供し、自動車、消費財、電子機器などのさまざまな産業に適用できます。

「このポリマーの開発における私たちの使命は、自然環境、地域社会、そして私たちの顧客という、すべてのステークホルダーに利益をもたらすソリューションを生み出すことでした」とNileshkumar氏は言います。

サムスンの環境保護への重要な一歩

サムスン電子は、イノベーションの次のステージを模索する中で、プラスチック汚染、特に海洋におけるプラスチック汚染を削減する取り組みを強化する機会を見出しました。

「廃棄された漁網を再利用してモバイル機器に使用するという私たちのアプローチが最大限の効果を発揮するよう、エンバリオ社と手を組みAkulon® RePurposedを開発しました。両社の専門知識を融合させたこのオープンなコラボレーションを通じて、私たちの地球とGalaxyユーザーのニーズの架け橋となるソリューションの開発に成功しました」

ギャラクシーS22シリーズから始まるサムスンのギャラクシー携帯端末にAkulon® RePurposedが採用されたことは、両社の環境問題への取り組みにおいて驚くべき成果です。このデバイスは、サムスンの環境コミットメント「Galaxy for the Planet」に対する重要な一歩です。このコミットメントは、一連の環境目標の達成を通じて、事業および製品ライフサイクル全体で具体的な気候変動対策を講じるためのロードマップを示すものです。

※画像はGalaxy S22 Ultraです。(最新モデルはGalaxy S24になります。)
画像提供:エンバリオジャパン㈱

より良い世界を共に築く

サムスン電子は、2022年にギャラクシーS22シリーズに廃棄された漁網から調達した再生プラスチックを導入して以来、ギャラクシー端末の再生素材の種類を拡大しています。2030年までにすべてのモバイル製品のモジュールに少なくとも1つの再生素材を組み込むことを目指しています。

また、エンバリオ社もサムスン電子と共に、気候危機への対処に役立つ持続可能で拡張可能なソリューションを提供し続けています。「私たちは皆、変化をもたらすことができるのです。サムスン電子が、海に沈んだ漁網をリサイクルしたプラスチックを使用するようになったことで、他の多くの人々が、地球をより良い場所にするために同じようなステップを踏むようになることを願っています」と、Nileshkumar氏は締めくくりました。数年前に小さな技術革新プロジェクトとして始まったことが、いまや現実の世界にインパクトを与えつつあるのです。

お問い合わせ

profile

吉川 元晴

<所属>エンバリオジャパン㈱ 日本地域コマーシャル本部 事業本部長
エンジニアリングプラスチックスの用途開発を経験後、営業部長を歴任。2023年7月よりエンバリオジャパンの事業本部長に就任。

宮崎 隼人

<所属>エンバリオジャパン㈱ 日本地域コマーシャル本部 サステナビリティ推進チーム
<専門分野>フィルム・シート押出、コンパウンド開発、医療機器向け用途開発など
<紹介文>高機能製品群を中心とした用途開発を担当する一方、サステナビリティに関連するプログラム推進・情報収集/発信を担当。