公開日:2024/6/13

最終更新日:2024/6/13

バイオプラスチックをめぐる欧州の規制動向

前回記事では、そもそも、『バイオプラスチックとは?』 という基本的な内容から、現在バイオプラスチックが注目される背景、及び、バイオプラスチックをめぐる世界の大まかな趨勢について説明いたしました。
今回は、世界的に見ても最も動きの激しい、欧州の動向をご紹介したいと思います。

欧州の具体的な動き:2020年まで

欧州では、まず2018年発行の「欧州プラスチック戦略」や、翌2019年発行の「欧州グリーンディール」において、バイオプラスチックの使用を拡大した場合に想定される利益とリスクの両面が指摘され、適切な運用のための規制枠組みを作ることが政策目標として明言されました。
更に、2020年発行の「循環型経済アクションプラン」においても、生分解性プラスチック、バイオベースプラスチックが、実行的に環境負荷を低減するための要件や、消費者の誤解を生まない適切なラベリング方法に関する規制枠組みの作成が謳われています。

ここでのポイントは、欧州では、バイオプラスチックが環境負荷低減のための重要なツールとして位置付けられており、その使用拡大も推奨されていますが、本当に効果を発揮するためには、より明確なルール作りが必要という立場が謳われている点です。

欧州の具体的な動き:2022年発行文書

こうした考えを基本に、より具体的な施策を作るための準備として、2022年に「バイオベース、生分解性、堆肥化可能(Compostable)プラスチックについての政策枠組みに関するコミュニケーション」が発行されました。
これらの材料の適切な管理、使用方法に関する理解を促進し、政策の方向性を提案する目的を持った文書で、現状、法的拘束力はありませんが、今後のEUの動きを見定めるために、とても有用と言えます。
以下、文書の要点を確認していきたいと思います。

画像提供:(株)ケミトックス

2022年発行文書の要点

第一に、バイオプラスチックの使用は、製品用途を限定し、かつ回収・処理システムを確立した上でないと、経済・環境いずれの面でも効果を発揮しないという見解が謳われています。
例えば、堆肥化可能プラスチックについては、コンポスト施設で適切に処理される用途の製品に利用すべきであり、逆に言うと、そのような回収・処理サイクルに乗らない用途の製品を堆肥化可能にしても、環境負荷低減への効果は低いとされます。
その観点からは、生ゴミ袋、カトラリー、コーヒーポッド、ティーバッグなどには活用が推奨される一方、衣服の包装資材や電子機器部品などは、現実的にはコンポスト施設への回収を拒否される可能性が高いため、避けるべきということになります。

第二に、短寿命・使い捨て用途 (Single-Use) の食品容器や包装資材等におけるバイオプラスチックの利用には必ずしも積極的な姿勢ではないという点に注目が必要です。
ただ、これはEU内でも様々な意見があり、おそらく、バイオプラスチックの業界団体などは、むしろ、使い捨て用途におけるバイオプラスチックの使用を拡大したいという立場だと思われ、そうしたステークホルダーの意向も踏まえて、今後政策形成がされていくと考えられます。

第三に、現在、民間主導となっている試験・認証・ラベリング制度について、EUレベルでの強制力のあるシステムの確立が求められています。認証取得について、現在は各企業の自己判断という側面が強いですが、今後は何らかのかたちで義務化される可能性があります。

今後の方向性は?

ここまでの内容を踏まえると、
☑ 環境負荷低減に実効的なバイオプラスチックの使用、という観点から、推奨される用途/されない用途の区別が進んでいく見込み
☑ バイオプラスチックであることを消費者にPRする際の認証・ラベリングについて、第三者認証の取得が義務化される可能性が高い

という点に注目していく必要があるのではないかと考えられます。
更に、上記に加え、海洋汚染源としてのマイクロプラスチックへの対策についても、規制の整備が進んでいく見込みです。

欧州では、バイオプラスチック規制に関する公式文書の発行にも積極的です。他地域に先駆けて具体的な規制が確立する可能性が高い状況です。
それに歩調を合わせるかたちで、他国も追随する流れができることが容易に想像されるため、欧州の動きを迅速かつ正確に見極めることは、今後、バイオプラスチック材料を市場で展開していくにあたり非常に重要になると思われます。
引き続き、ケミトックスでは試験評価業務と並行して、規制動向に関する情報発信を積極的に行っていく予定です。

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profile

藤岡 博明

<所属>株式会社ケミトックス
<専門分野>バイオプラスチックに関する国内外の規制動向及び評価試験方法
製品の安全性を評価する第三者試験機関の一員として、生分解性試験/認証を中心に、幅広い産業分野における海外規制対応を支援