公開日:2024/7/2

最終更新日:2024/7/1

知っておくべき!経済産業省のエネルギー基本計画のポイント

地理的な問題、過去のエネルギー政策の偏り、送電網の不安定化への懸念等により、日本の再生可能エネルギー構成は、他の先進国に遅れをとっているのが現状です。
今回は、経済産業省が発表したエネルギー基本計画を基に、2050年のカーボンニュートラル目標達成のためのエネルギー転換に向けた、今後の日本の投資計画を深掘りします。

エネルギー基本計画の背景

日本のエネルギーの歴史は、長い間、安定的な供給源の探求の歴史でした。
戦後は原子力発電が解決策となり、需要に見合ったエネルギー供給が国内で実現するようになりましたが、2011年の福島原発事故後、再び原子力から火力発電へと転換しています。

太陽光や再生可能エネルギーの導入を促進するために、低炭素エネルギーの買取価格を保証する制度(固定価格買取制度、FIT)が導入され、その後拡大されましたが、電力系統全体の安定性を守るために、発電したエネルギーを売電できる量には上限が設けられました。
そうした背景もあり、日本は再生可能エネルギーによるエネルギー需要の割合において、パキスタン、チェコ、中国などに次いで41位に留まっており、エネルギー自給についても、需要のわずか11%にすぎません。

しかし、ロシアによるウクライナ侵攻以降、日本政府の方針は変わりました。
洋上風力発電やペロブスカイト太陽電池発電のような革新的な自然エネルギーの開発・普及を支援することに加え、安全に使用するという注意書きを添えた上で、原子力発電を活用する姿勢へと転換したのです。

進められている計画の概要

FIT制度により、陸上太陽光発電や風力発電の用地活用が進められてきましたが、残っている候補地の多くは、地元の反対や地理的困難、発電効率の悪さといった開発障壁があります。
これを受けて、政府はペロブスカイト太陽電池や洋上風力タービンの技術開発に投資し、再生可能エネルギー発電の増加を目指しています。日本政府は、2030年までにエネルギーミックス(電源構成)に占める再生可能エネルギーの割合を2倍以上にする計画を掲げています。

総需要に占める再生可能エネルギー計画の割合
画像提供:経済産業省資料を基にCodo Adviosryが作成
出典:https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20211022_03.pdf


特に、日本発の新技術であるペロブスカイト太陽電池は、軽量で可鍛性(粘りがあり割れにくい)があり、建物の壁や日よけ等の、従来の硬くて重いパネルでは設置できなかった場所での利用が期待されています。
この技術は、中国を始めとするグリーン産業の製造先進国の優位性に対抗するためにも重要であり、再生可能エネルギーの供給拡大はカーボン・ニュートラルの達成だけでなく、エネルギーコストの削減や炭素依存の軽減を求める官民の要求にも応えるものでもあります。

長年にわたり、再生可能エネルギーの自然変動(日中の光や風の強さによって発電量が変動すること)が送電網全体を混乱させる恐れがあったため、再生可能エネルギー電力への依存は消極的とされてきました。
しかし、今、自然変動による送電網への影響を緩和するため、経済産業省は蓄電・輸送、水素エコシステム送電網への投資を行っています。

今後の主要な取り組み

今後の電力供給の多様化に対応するため、日本政府は大規模な送電網の見直しを発表しました。
北海道は再生可能エネルギーの主要ハブとなり、本州の送電網と巨大な海底ケーブルで接続される計画となっています。
料金システムを通じたインセンティブにより、ディマンド・リスポンス促進など、エネルギー使用の最適化を図るため、総予算は7兆円をかけて、2050年までの完成を目指しています。

2050年に計画されている送電網の高度化
出典:電力広域的運営推進機関
 https://www.occto.or.jp/kouikikeitou/chokihoushin/files/chokihoushin_23_01_02.pdf


さらに、水素やアンモニア、e-methane(イーメタン)といったエネルギーの貯蔵技術への投資も加速しています。
多くの技術的・物流的課題が残っていますが、エネルギー貯蔵だけでなく、これらのエネルギーの活用促進は、鉄鋼業などの脱炭素化が難しい産業に対するエネルギー代替手段になり得えます。

これらの投資は、日本政府が発行する20兆円の「GX移行債」によって資金調達され、民間部門のグリーン投資を促すことを目的としています。
経済産業省は、カーボンプライシングの導入で更なる投資を促し、自ら発行した債券の返済に充てる計画です。

排出量取引制度(ETS)は2023年4月に開始されており、これに対し、企業はGX移行債からの資金調達を一部賄うことができます。
2028年度からは、化石燃料を輸入する企業に対し、燃料ごとの排出量に応じた賦課金が課される所謂「炭素税」が導入され、2033年には、この制度が全業種に拡大される予定です。
炭素排出の多いエネルギーに対する課税が強化されることで、化石燃料への依存度を減少させる方針となっています。



成長志向型カーボンプライシング構想
出典:https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/transition/climate_transition_bond_framework.pdf

まとめ

2050年カーボンニュートラルの目標達成およびエネルギー自給の観点から、送電網の整備を中心とした再生可能エネルギー関連の投資が拡大しています。
また、エネルギー貯蔵という大規模な投資が必要となる分野に関しても、GX移行債を用いた資金調達及び技術確立に注力していく方針です。
業界問わず重要となるエネルギーインフラについて、引き続き、注目していきたいと思います。

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エミリー・ジョーンズ 

<所属>Codo Advisory 株式会社  
<専門分野>脱炭素関連全般

<紹介文>移行計画策定、GHG算定、情報開示、社内教育、サスティナビリティファイナンスSPO等、幅広くご支援を行っています。
お問い合わせはこちらへ【 https://codo.jp/?page_id=1862