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LiB向けインド製黒鉛負極材料をご紹介!

電気自動車(BEV)の開発は世界的に推進されており、生産環境はワールドワイドに増加しています。一方、BEVを構成する材料生産国、特にリチウムイオンバッテリー(LiB)に注目すると、使用される資源産出国は特定の国に偏っているのが実情です。今回はバッテリーの負極材として多く用いられる黒鉛材料に着目し、この黒鉛供給に関する地政学的リスクに対する解決策の1 つとして、NAGASE がインドのEpsilon Advanced Materials社と取り組む、インド発黒鉛負極材についてご紹介致します。

イシュー

LiBの普及に伴い注目されるメタル資源


BEV の市場はグローバルに成長しており、欧州、アメリカ、中国をはじめ市場の拡大が進んでいます。

BEV 市場が成長するに伴い、BEV に用いられるLiB の需要も増加、これによりLiB生産を行う各企業を中心にLiB に使用される部品や材料の生産動向は注目を集めています。

LiBは一般的に活物質(正極材と負極材)、電解液、セパレーター、集電体、導電助剤、バインダー等の部品や材料から構成されます。中でも活物質はLiB の性能を大きく左右します。

活物質の内、正極に用いられるのは、航続距離を決定づけるエネルギー容量に優位 性を持ち、リチウム(Li)の他にニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)から成る三元系(NMC)、あるいはより安価に生産でき安全性にも優れるリチウム(Li)、鉄(Fe)、リン(P)から構成されるリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)などが主流となっています。このように正極材にはいくつかのメタル資源が組み合わされて形成されます。

LiB負極材の主役である黒鉛系負極材

一方、LiB に使用される主要な負極材料には炭素系やシリコン系、LTO(チタン酸リ チウム)が存在しますが、特に炭素系材料の黒鉛(グラファイト)は広く採用されています。黒鉛はグラフェン層が重なった構造を持ち、リチウムイオンが充放電時に層間に挿入されたり脱離したりすることで、バッテリーを充放電させます(2024 年5 月15 日配信のPLUS NAGASE でもご紹介の通り、シリコンが添加された負極もより高いエネルギー容量を実現するために着目されています)。

近年のLiB には殆ど黒鉛負極材が用いられていることもあり、黒鉛の安定的な資源 確保の重要性はLiB の需要増加ともにますます注目度の高まるトピックスとなっています。

黒鉛系資源の地政学的リスクとは


そして現在電池グレード黒鉛の大多数は中国で生産されています。日本を初めとし てLiB を生産する企業の殆どが中国から輸入された黒鉛に依存せざるを得ない状況となっています。

このような背景から、黒鉛の資源を巡って産業界のみならず各国の政治経済的な方 針も資源確保に影響を与える側面が大きくなっています。

アメリカで2022 年に成立したインフレ抑制法(IRA 法)では、アメリカでEV を購入 し税控除を受けるための条件として、実質的に黒鉛を含む中国製の電池材料の使用制限があり、アメリカ市場では非中国製の部品や材料から成るサプライチェーン構築の要求が強くなり、これにより新しい黒鉛の調達ソースを確保したいという声が増大しています。

また、2023 年には中国が黒鉛の輸出を許可制にし、中国政府が特定の国に対する輸 出を意図的に制限する事態を受け、中国以外の国々は黒鉛の安定的な資源確保に対して改めて重要かつ緊急課題であるとの認識に至りました。

このような状況からアメリカやカナダで天然黒鉛や人造黒鉛を製造する動きが出て きていますが、生産能力が市場の需要を満たすほど十分かどうか、また供給を行うまでのタイムラインが市場要求に合致しているかどうか明確になっているケースは数少ない状況です。

また、莫大な資金を必要とする電池材料への新規投資には躊躇する要 素が多いことも現実となっています。

取り組み内容

インド発のIRA法に対応した黒鉛材料


その様な声を受けて、NAGASE では「IRA 法への対応」 と「GHG削減」をテーマとして、インドのEpsilon Advanced Materials 社(以下、Epsilon 社)とパートナーシップを組み、インド製黒鉛材料のご紹介を積極的に進めています。

Epsilon 社はインド最大の鉄鋼系企業であるJSW グル ープの傘下にあり、カルナータカ州ヴィジャヤナガルに構える工場に於いて2026 年に年間30 , 000 トン以上の黒鉛材料の生産を予定している企業です。

Epsilon 社の黒鉛系負極材の製造プロセスでは、自社とパートナー企業との間でサ ーキュラーエコノミーを実現する仕組みを構築しています。この仕組みを活用することで、黒鉛系負極材を生産する上で必要となる原材料や水資源、エネルギーロスを省き、資源の効率的な運用が実現されています。

また、Epsilon 社で使用するエネル ギーの一部は太陽光発電を由来としており、これにより人造黒鉛を生産する上で発生するGHG 量は他の生産企業と比べて最大78 % 削減できるという第三者機関による測定結果も出ています。


Epsilon 社はアメリカや欧州で既に 新規工場設立を具現化しており、アメリカ工場の活用によりIRA 法における税控除の条件を満たすことが可能となっています。

カスタマイズ対応も可能なEpsilon社の黒鉛系負極材

NAGASE では、まずは日本や韓国の市場でEpsilon 社の天然黒鉛・人造黒鉛を負極材としてサンプル提供を開始しています。

日本国内でも中国製材料の依存比率を減らして行きたい、これによるアメリカや欧 州市場に対応した黒鉛材を用いたLiB の生産というニーズが徐々に大きくなっており、インド発黒鉛負極材を検討して頂けるお客様が増えてきています。

Epsilon 社とのパートナーシップの下、お客様の個別条件に合わせた黒鉛負極材の
カスタマイズにも対応しています。

新しいインド製黒鉛材料にご興味をお持ちであり、また負極材でお困りの場合は、 ぜひNAGASEまでお問い合わせください。