電気自動車(BEV)に搭載されているリチウムイオンバッテリー(LiB)は消耗が進み寿命を迎えると、そのLiB を如何に安全に処理するかという問題に突き当たります。正極材に含まれるリチウム(Li)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)といったレアメタル資源偏在、温室効果ガス(GHG)削減要求、欧州電池規則による再生メタル使用率の規定など、LiBを取り巻く環境が変化、正極材へのリサイクルニーズは日々高まっています。今回はその様なLiB 正極材のリサイクルに焦点を当て、寿命を迎えたバッテリーからメタルを抽出、更に3 元系再生正極材へ一気通貫してリサイクルするスキームについてご紹介致します。
xEV を構成する「3 種の神器」としてモーター、インバーターと共に最も着目される部品の一つがバッテリー、つまりリチウムイオンバッテリー(LiB)です。昨今の自動車業界ではバッテリーEV(BEV)を中心にxEV 市場は益々熱を帯びて来ており、これに伴いLiB需要は増加の一途を辿っています。
電気自動車の性能の要とも言えるLiB は主にリチウム(Li)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)などの金属が含まれる正極材、並びに主に黒鉛から成る負極材をはじめ、電解液、セパレーター、集電体、導電助剤、バインダーの組合わせにより構成されています。
とりわけLiB 正極材に含まれる金属(バッテリーメタル)は希少金属(レアメタル)です。これらの資源は世界各地に偏在し、各種レアメタルの生産量のシェアも特定の国に偏っています。
また放置されたBEV から使用メタルが漏洩することに因る環境汚染懸念もあり、車載向け電池の再生は近年より緊急かつ重要なテーマとなりつつあります。
LiB を生産する上で発生するGHG を如何に削減するか、これに関する規制は年々強化され、欧州や北米市場に於いてはLiB 向けレアメタルを一定比率のリサイクル材を採用することを義務化し、リサイクル率を満たすこと、これを税控除の必須条件としています。この比率は年々増加して行く見込みです。
上記の様な地政学的なリスク、環境対策、市場より要求される規制をクリアする為に、寿命を迎え廃棄されるLiB からレアメタルをきっちり回収し、再びLiB 材として利用するリサイクル技術が今注目を集めています。
LiB リサイクル技術への注目度が高まる中、NAGASE ではLiB 各種材料を供給するサプライヤーとして、関連する様々な規制について鮮度の高い情報を収集し続けています。
また、獲得した情報を北米や中国のパートナー企業様と連携し、バッテリー正極材として使用されたレアメタル資源をリサイクルするスキームを構築しています。これはバッテリーに残存するバッテリーメタルを硫酸塩や炭酸リチウムの形で取り出すだけではなく、最終系である3 元系再生正極材へと一気通貫にてリサイクルするスキームとなります。
一般的に、廃棄されたバッテリーは回収された後に分解され、溶解分離などのプロセスを経て、再生メタルとして回収されます。
再生メタルを複数のメタルから構成される3 元系の正極材として再生させる為には、焼成前の前駆体に添加する各メタルの比率調整や結晶径、焼成時ドーピング、表面コーティング等、正極材の性能に影響を及ぼす各要素について厳密に定める必要があります。
これらの各要素は、お客様ごとにバッテリーに於ける設計思想や要求される性能に より異なる為、再生メタルを分離してから3 元系の再生正極材まで仕上げるプロセスを効率良く構築することは技術及び価格の両面から難しいと思われて来ました。
そこでNAGASE では、190 年以上にわたるビジネスの経験や社内外に拡がるネット
ワークから得られる材料に関する広く深い知見を活かし、お客様から要求頂く仕様、性能、形状などの正極材に関する様々な要件を正確に理解し、どのような条件であればお客様のご要望を満たす3 元系再生正極材としてご提供出来るかを精査致します(もちろんNDA締結の上でとなります)。
検討した要件を基に北米のパートナー企業様と3元系再生正極材としてレアメタルを再利用するため、前駆体の合成プロセス、正極材焼成条件、そして最適な物流ルートや品質管理項目の検討を緻密に実施し、量産性を高める活動を進めています。
これにより、市場から回収された廃電池から有益メタルを抽出し、カスタマイズ色の高い3 元系再生正極材まで一気通貫型を通す手仕上げ、お客様へお届けする付加価値提供を実現します。
長年積み重ねて来た材料に関する知見を活かし、正極活物質の安定供給、GHG 削減、
再生正極材の使用義務(法的変更)への対応と貢献に向け、NAGASE はこれからも尽力します。
再生案件、再生正極材などお困りの場合には、ぜひNAGASE までお問い合わせくだ
さい。