• 環境

その樹脂、捨てなくても大丈夫! ヘッドライト部品のアルミ蒸着を除去して再利用する取り組みをご紹介。

NAGASE のお客様である自動車用ランプメーカー様では、アルミ蒸着されたプラスチック部品を製造する過程において発生する、工程内不良品のポストインダストリアルリ サイクル(PIR)に課題を抱えていました。今回はそのような課題に対して、パートナ ー企業様や、NAGASE のラボ機能「ナガセアプリケーションワークショップ(NAW)」 を活かしたPIRの取り組みについてご紹介します。

イシュー

身近でも、自動車業界でも、ますます着目されるプラスチックごみの課題

現代社会において、プラスチックは私たちの生活に欠かせない素材です。軽量で耐久性があり、コストも低いため、さまざまな製品に使用されています。

しかし、その便利さの裏には深刻な環境問題が潜んでいます。プラスチックごみの廃棄は、温室効果ガス(GHG)の発生など地球規模での環境破壊を引き起こす要因の一つであり、改善のための取り組みが世界各地で行われてきました。

自動車業界では、内・外装の多くの部品でプラスチックが使用され、使用済みの自動 車を解体し部品としての再利用、あるいは再生プラスチックとして再利用するポストコンシューマーリサイクル(PCR)の検討が進められています。

しかし多くはASR (Automobile Shredder Residue)として埋立て処理やサーマルリサイクルされているのが現状です。

一方で、自動車部品を製造する過程でもプラスチックは多く排出 され、各自動車部品メーカーが各社の工程内で発生するプラスチックごみを減らすべく、ポストインダストリアルリサイクル(PIR)の取り組みも進められています。

ヘッドライト用の加飾部品「ベゼル」の工程内不良品の事例

NAGASE はプラスチックを長きにわたり自動車業界の多くのお客様に納入していま す。

その中でも自動車用のランプを製造するメーカー様において、ヘッドライトの周 りの装飾部品でアルミ蒸着加工が施された「ベゼル」の工程内不良品が多く発生しているという課題を耳にしました。

ベゼルは立体的で複雑な形状をしていることが多いなどの理由から、アルミ蒸着を 行った際、蒸着されたアルミ表面にピンホールや粒状の突起といった点状の外観不良が発生したり、アルミ蒸着の後工程の影響などにより蒸着の剥がれやキズが発生したりと、製品としてそのまま使用することができない工程内不良品が発生します。

アルミ蒸着が施されたベゼルの工程内不良品から、物理的にアルミを除去して再利用することは難易度が高く、回収業者に回収を依頼し、埋め立てや焼却などの方法で産業廃棄物として処理する状況でした。

取り組み内容

アルミ蒸着されたベゼルのPIRに向けた取り組み

このようなお困りごとを解決するため、NAGASE では長年のプラスチックに関する知見とネットワークを活かし、樹脂のリサイクルコンパウンドを得意とするパートナー企業様と共に検討を重ねています。

まず、自動車ランプメーカー様から、ベゼルの工程内不良品を回収します。

次に、 パートナー企業様においてこれらの不良品を粉砕し、溶剤を用いてケミカル洗浄する ことによりアルミ蒸着を除去しま す。

そしてこれらをバージンプラ スチックに対して20 〜30 % 混ぜてコンパウンドすることで、再度ペレットとして再生させ、自動車ランプメーカー様で再利用していただくという、サーキュラーエコノミー実現のためのフローを検討中です。



現在、アルミ蒸着方法の確立を進め、リサイクルされたプラスチックペレットが実際の部品に使えるかどうかの検証を進めています。

その後、部品化された状態での検討を行い、将来的に車両への搭載を目指した取り組みを進めていく予定です。また、対象とする部品もベゼルのみならず、ヘッドライトのアウターレンズやリフレクターへと対象範囲を広げていく構想にも着手しています。

欠かすことのできない実証性検討と、NAGASEのラボ機能「NAW」 

このようなリサイクル材料の開発に際しては、回収した不良品からどのようにして アルミ蒸着を剥がすのか、またリサイクルされた樹脂の物性は自動車部品としての品質を担保できるかのかといった、実証性を確かめるプロセスが欠かせません。

各種の検証を実施するにあたり、NAGASE では「ナガセアプリケーションワークシ ョップ(NAW)」というラボ機能を活用しています。

NAWはプラスチックおよびコーティング材料の分野で材料の評価分析、用途開発から、これらの材料を使った最終製品 の処方開発までを行うことができる設備と専門技術スタッフを有し、技術開発機能、インキュベーション機能、技術研修機能を担っています。

1階の「ラボスペース」には、熱可塑性樹脂の試作ができる設備があり、立ち合い試作なども行 えます。また、顔料分散、塗料の作製、塗膜物性評価設備を有し、実際の塗装現場もご覧いただけます。

2 階の「ショールーム」では、ラボで 開発したサンプル・材料などを展示し、色・機能・質感を確認しながら、商品・用途開発をサポートすることも可能です。

写真左/兵庫県尼崎市にあるNAW。1 階のラボスペースには各種の試作設備や測定環境がある。 写真中/樹脂実験室には熱可塑性樹脂の試作が行える設備を有し、お客様のニーズに応じて、機能性付与、新色開発等を提案。 写真右/コーティング実験室では、顔料分散、塗装・塗膜物性評価を実施し、お客様のニーズに合わせたコーティング材料・処方・デザインの提案を行う。



今回のヘッドライト部品のPIR 実現に向けて、 そもそもケミカル洗浄以外の物理的な処理では「どのようなメリットやデメリットがあるか」と いった初期のリサイクル方法の検討や、ラボレベルでケミカル洗浄を行うための処理条件の分析、洗浄後のアルミ成分の残存有無に関する光学的な測定を担っています。

パートナー企業様 と共に技術的な見地から、再生プラスチックをお客様に安全に使っていただくための検証やご提案を加速させています。

NAGASE ではリサイクルフローを実現するた めのパートナー企業様とのネットワークの構築
から、リサイクルされた製品の物流網のコーディ ネート、そして開発されたリサイクル製品の実現性の検証まで、複合的なサポートが可能です。

NAGASE と共に、製造工程内で発生した不良品を生まれ変わらせ、再出発させる取り組みを始めませんか。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。