電気自動車における電動パワートレインは、電気自動車の駆動部分を司る中枢の部品です。中でもパワー半導体を中心としたパワーモジュールの発展は目覚ましいものがあります。今回ご紹介する株式会社アテックス(本社/大阪・東大阪市)は、パワーモジュールで変換された電力を効率的に伝達する「パワーモジュールケース」の生産技術に強みを持つNAGASEのパートナー企業です。
自動車のxEV(BEV、HEV、PHEV を含む)化の潮流が高まるにつれ、電気自動車で使用される電動化部品の大電流化、高電圧化がトレンドになっています。
その一端を担うのはパワーエレクトロニクス技術を基盤とした電動パワートレインであり、中でもパワーモジュールの領域は注目を集めています。
パワーモジュールの内部には、パワー半導体素子となるSi(シリコン)が存在します。
電動化部品に要求される小型化、軽量化などのニーズに応えるために、パワー半導体素子は様々な進化を遂げてきました。
近年は一層強まる大電流化・高電圧化などのニーズに応えるため、Si に代わりSiC(シリコンカーバイド)をパワー半導体素子として起用したパワーモジュールが増えてきています。
パワーモジュールは、パワー半導体を含む回路基板の他にも、高い熱伝導性を持つ銅などの金属やセラミックスなどで構成される絶縁基板、シリコーンやエポキシ樹脂などで構成される封止材といった部品から構成されています。
この絶縁基板はパワー半導体から発生する熱を効率的に逃がす役割を果たします。
また、これらの構成部品は、外部環境からの保護と同時に、外部回路へ電力や信号を伝えるため、導電性に優れた銅製の端子と絶縁性を有する樹脂を組み合わせて成形されたパワーモジュールケースで包まれています。
パワー半導体の大電流、高電圧化の潮流と共に、パワー半導体から発生する熱を効率的に逃がすこと、パワー半導体を外部化環境から保護すること、複数のパワー半導体間や外部との電気的絶縁を確保することなどを目的に、パワーモジュールケースは進化の一途をたどっています。
加えて小型化、軽量化、低背化も同時に実現するため、パワーモジュールケースの構造設計は複雑さを増しています。
端子部分の金属と、絶縁の役割を担う樹脂という異なる材料を複雑な形状として複合生産するには、高度な設計機能と合理化された生産機能が必要となります。
NAGASE のパートナー企業であるアテックス社は、このような複雑で難易度の高い成形を可能にする、開発提案型企業です。
同社は金属と樹脂などの多種、多量の部品を一度の成形加工で一つの製品にする複合インサート技術を肝とした、パワーモジュールケース、バッテリー切断ユニット(BDU)、端子台(ターミナルブロック)など、xEV関連の高度な設計が求められるコンポーネントの設計、生産を得意としています。
その中でも、お客様の製品コンセプトを精査し、ニーズを実現するために図面化することや、お客様の構想図に対する設計提案に長け、xEV 関連部品の小型化、軽量化、低背化に貢献しています。
アテックス社では高い生産性と高い品質を両立させるために様々な取り組みを実施しています。
その中でも自動化ラインを有効活用して製品の生産を完了する技術は、同社の製品の優位性を保つ肝の一つです。
従来パワーモジュール製品を生産するにあたり、アテックス社では製品の生産性や品質を高い水準で保つため、インサート成形、成形後のバリ取り、各種検査など、様々な工程で自動化を推進してきました。
しかし、前工程として金属プレスされた金属端子はトレーにのった状態で同社へ供給され、アテックス社内で人手をかけてラックに搭載した後、インサート成形が行われていました。
そこで、アテックス社では北米をはじめとしたグローバル市場での生産性向上のため、自動化ライン設計や金属プレスの専任人材を迎えて金属プレスの内製化を実現。金属プレスからインサート成形、そして仕上げ、検査まで自動化が図れるようになりました。
このように高い生産技術力を誇るアテックス社は、日本国内では大阪、京都、奈良に拠点を有しています。
2017 年にはアテックス社、NAGASE を含む3 社合弁企業として、中国の恵州市に恵州三力協成精密部件有限公司を設立。
さらに2024 年にはメキシコのレオンに工場を設立し、2025年には稼働を予定しています。
メキシコ工場では設計・製造に関するノウハウを活かしつつ、EV の一大市場である北米における、お客様のxEV向け電動化部品の現地調達化の実現に貢献します。
アテックス社とNAGASE は、日本で培った高品質なインサート成形技術を武器にグローバルマーケットへの展開を進めています。
xEV における設計や、日本国内に限らずパワーモジュールに関するお困りごとがありましたら、いつでもNAGASE にご相談ください。
後編記事ではアテックス社の技術をさらに深掘りしていきます。