高い品質特性が求められる自動車部品において、よく使用されるナイロン樹脂。今回はナイロンメーカーのユニチカ株式会社が開発・製造する XecoT®( ゼコット®)をご紹介します。「ひまし油」由来の環境にやさしいバイオプラスチックでありながら、優れた特性を有するXecoT®はどのように作られ、どのような点が評価されて採用されるのか。その全貌をご覧ください。
自動車部品の分野では、高温環境下でも優れた性能を維持できるエンジニアリングプラスチック(エンプラ)が広く使われています。
中でもPA6やPA66(ナイロン樹脂)といった材料は、高い耐熱性と機械的強度を兼ね備えているため、インテークマニホールドなどのエンジンルーム周辺部品をはじめとした、様々な自動車部品に採用されています。
昨今、自動車部品に使用される材料のリサイクル率を上げる必要性が高まる中、PA6やPA66も再生材の検討が進められています。
使用済みのナイロン部品を化学分解して再生ナイロンとするケミカルリサイクルの事例や、ナイロン材料を使用した部品をマテリアルリサイクルする検討がその一例です。
ユニチカ社でも、自社工程内で発生した端材を活用したナイロンのケミカルリサイクルグレードを取り扱っています(詳細はぜひお問い合わせください)。
一方、リサイクルとは別のアプローチで温室効果ガスを削減する方法として、バイオ由来の素材を活用したバイオプラスチック材料の開発も行われています。
バイオプラスチックに用いられる素材としては、サトウキビやトウモロコシなど様々な種類がありますが、今回は古くから人類の生活を支えてきたトウゴマに着目します。
トウゴマはトウダイグサ科の一年生または多年生植物で、熱帯から亜熱帯地域に広く分布し、過酷な環境でも生育可能です。
古くは古代エジプト時代から栽培されていたとも言われています。
トウゴマの種子から抽出されるひまし油は、20世紀より潤滑油や塗料など工業用途でも使用がはじまりました。
ユニチカ社のXecoT®は、ひまし油由来のデカンジアミンを原料の一部として使用し、製造されています。その組成は下図の通りです。
トウゴマから精製されたひまし油は、主成分としてリシノール(リシノレイン)酸トリグリセリドを含有し、セバシン酸を経由してデカンジアミンが生成されます。
デカンジアミンとテレフタル酸を重縮合することにより、XecoT®(ナイロン10T)が生成されます。
XecoT®は耐熱性、低吸水性、摺動性、耐薬品性など、様々な側面で優れた品質特性を有します。
高い耐熱性:その化学構造により、高い融点と結晶性を実現し、優れた耐熱性を発揮します。
低吸水性:長鎖ジアミンの構造により、吸水率が低く、寸法安定性に優れています。
高い摺動性:高い結晶性に起因し、摩擦・摩耗特性が優れています。摺動部品への適用が可能。
耐薬品性:極性・非極性溶媒、酸、塩基、オイルなど様々な薬品に侵されにくい性質を有しています。
さらに、ガラス繊維を 30%強化したグレードでは、耐久性が向上し、高温環境下でも優れた機械的特性を維持します。
上述のような特徴から、既存の石油系エンプラからの代替だけでなく、特有の構造特性を活かした新たなアプリケーション開拓も積極的に進めています。
また、XecoT®は従来の石油由来エンプラと同等以上の性能を発揮しながら、バイオマス由来であるため、製造時の CO2 排出量を削減できます(※ 現在、ユニチカ社にて XecoT®製造にかかわる CO2 排出量を精査中)。
この点でサステナビリティにも配慮した素材として、自動車の次世代設計に貢献しています。
ユニチカ社では、XecoT®以外にも、前述したケミカルリサイクルグレードの低CO2 ナイロンやナノコンポジットナイロン「NANOCON®」等、環境配慮型の高機能プラスチックを多数展開しています。
NAGASE Mobilityはユニチカ社と共に、様々なラインナップの環境対応製品のご紹介を通して、モビリティ業界における持続可能な開発への貢献を続けていきます。
ユニチカ社との取り組みにご興味がございましたら、いつでもお問い合わせください。
※ XecoT®(ゼコット®)、NANOCON®はユニチカ株式会社の登録商標です。