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【対談記事】 音を知る内装メーカー、 小島プレス工業と NAGASE Mobilityの技術協奏

自動車の電動化・自動化が急速に進んでいます。パワートレインの変化により、車室内の静粛化へのニーズは高まり、知能化された自動運転車両では音声によるコミュニケーションも実用化されています。「音」に関する技術開発も車室内の快適性向上にとって重要な課題となり、特にノイズキャンセリング技術や高度な音声認識、そして乗員ごとのパーソナルな音響体験は、従来の快適性を超えたユーザー体験(UX)を生み出す要素になりつつあります。こうした変化の中、内装メーカーである小島プレス工業㈱と、材料・電子部品の幅広いチャネルを持つNAGASE Mobilityは、内装部品に新たな価値をもたらす音響システムの共創を進めています。本記事では、両社が挑む“快適な音体験のデザイン”を対談形式でご紹介します。

小島プレス工業が音響領域へ踏み出した背景

北川(長瀬産業)  本テーマでは小島プレス工業様の音響技術を伺いながら、車室内空間の将来像を議論できればと思っております。

まずは、伊野瀬さんがどのような経緯で音響技術に携わるようになったのかを教えていただけませんか?

伊野瀬(小島プレス工業) 2005年頃からこの業務に関わり始めました。

入社して早い段階からマイクに携わってきましたね。

当時、私の所属部署は天井のマップランプやハンズフリー、音声認識を車の標準機能として普及させようと取り組んでいました。

北川 内装の加飾部品を中心とした事業からすると、音声認識は異質な技術ですね。

伊野瀬 樹脂部品が起点ですが、その付加価値を高めるためにヒーターコントロールパネルをつくったり、エアコンのレジスターを電動化したりと、機能部品へ領域を広げていきながら、着実に成長させていったという背景があります。

パッシブからアクティブへ ── 音響開発の進化

北川 小島プレス工業さんは、音や光だけでなく、無線技術にも強い印象があります。

伊野瀬 もともとはテレビやラジオのアンテナ事業もあり、シャークフィンアンテナやガラスアンテナ用アンプなども手掛けてきました。

外装部品のリアスポイラーにアンテナを組み込むこともあります。

樹脂と電子、それぞれの強みを組み合わせることにより、意匠性の高い機能部品で付加価値を高められたのだと思っています。

北川 音響関連の仕事も2005 年頃から広がっていったのでしょうか?

伊野瀬 当初はマイクに注力していました。eCall、ハンズフリー、音声認識などですね。

弊社には防音室があり、もともと音の測定や騒音低減のための“パッシブ構造”が得意でした。

しかし近年では、ロードノイズキャンセリングなど、デジタル処理をう“アクティブ制御” にも踏み込んでいます。

北川 半導体の普及によりデジタル技術が車載部品でも一般化され、ノイズキャンセリングといった複雑な信号処理も実装しやすくなり、伸びしろのある領域ですね。

伊野瀬 そうです。車室内の静粛性や音質向上は、さらに重要な分野となるでしょう。

最適配置を導く、内装メーカーならではの強み


北川 音声認識やIn-Carコミュニケーション(ICC)では、マイクやスピーカーをどこに置くかも重要ですよね。

伊野瀬 まさにそこが我々の強みです。

弊社では比較的大きな内装部品を手掛けているので、車両構造を理解した上で最適配置を提案できます。

マイクやスピーカーをどこに置けば、音を取りやすく聞こえやすいのか、またどのような制約条件があるのかをよく理解しているので、OEM様に提案し、協議しながら最適解を導く力があります。

北川 内装メーカーの強みを活かしながらビジネスを拡げていることがよく理解できました。

長年、多様な電子・音響系サプライヤーとも協業されてきたと思いますが、当社がご提案した「パーソナライズドサウンドゾーン(PSZ)」と「In-Car コミュニケーション(ICC)」(※PSZとICCはNTTソノリティ㈱の技術)はいかがでしたか?

伊野瀬  他社の技術も比較して今回採用しましたが、PSZが純粋なアナログ音声技術を磨いたといった話や、ユースケース拡張の可能性についても動作デモをしながら説明してくれたので、説得力があり「信頼できるな」と思いました。

NTTソノリティのパーソナライズドサウンドゾーン(PSZ)

ICCについては、話者の直接音とマイク・スピーカーを通した音の“合成精度”が非常に良い塩梅になっていると感じています。

デジタル信号処理だけでは聴こえる音に若干違和感があるのですが、今回のシステムは本当に自然な聴感に仕上がっています。

デモ車両で体験していただいた関係者からも同様なコメントを受けています。

In -Car コミュニケーション(ICC)の技術イメージ。

デモカーへ搭載、量産化を目指す共創プロジェクト


北川 本プロジェクトの最初のきっかけは、弊社が小島プレス工業本社で実施した個別展示会だったと記憶しています。

PSZ、ICC以外にもアイトラッキング技術やハプティック技術などをご紹介させていただきました。

非常に多くの社員の方たちにご参加いただきまして、「技術を体感することに積極的な方が多いなぁ」という印象を持ちました。

伊野瀬 私は参加できなかったのですが、弊社の別の設計担当者からこれの技術を紹介されました。

そこからICCをデモカーに搭載する話へとつながり、おかげでこれまでに多くのお客様に体験いただけました。

ICCを搭載した、小島プレス工業のデモカー。車両内部の天井部には乗員には見えない形でスピーカーとマイクが埋め込まれていた。

北川 人材が横軸連携できている点も、御社の強みですね。

NAGASE Mobilityは独立系の商社機能を持つため、幅広いOEM様、部品メーカー様と接点があります。

電子部品やセンサー、LiDARなどの紹介にも力を入れています。

車室内体験が大きく変わる未来に向けて、音響技術のご提案にも引き続き注力していきます。

伊野瀬 EV化により車室空間は低背化したり、ガラスルーフがメジャーになったりと制約が増えていくこともあり、車室内空間の快適性を高める音響技術は、弊社としても高めていこうとしている領域です。

これからもぜひ一緒に挑戦していきましょう。

北川 こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。