欧州電池規則ではカーボンフットプリント(CFP)の開示、リサイクル材料の使用率など、様々な項目が規定されています。そして、この潮流はバッテリーだけに留まることはありません。GHG 排出量の削減をはじめとしたサステナブルなサプライチェーンの構築及びサーキュラーエコノミーの確立に向けて何をするべきか、今回はGHG の可視化・算定ソリューションを手掛ける株式会社ゼロボードの営業本部長、小野泰司氏にお話を伺います。
xEV(電気自動車全般)に用いられるバッテリーの中でも、頻繁に話題の中心となる
のが「欧州電池規則」です。バッテリーの原材料調達から設計・生産プロセス、さらには再利用、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を網羅したこの規則は2023 年に施行され、EU域内で自動車を含む全ての種類の電池に適用されます。
この規則の目的は、「電池が環境に及ぼす悪影響を防止・低減しつつ、域内市場での効率的な普及に貢献すること、また、廃棄電池の発生と管理による悪影響を防止・低減することにより、環境と人間の健康を保護すること」と明示されています。
出典:欧州電池規則(原文)
※和訳はゼロボード社ウェブサイトより引用
各社は巨大なxEV 市場である欧州でのビジネスを継続的に行うため、欧州電池規則の動向をつぶさに分析し対応していくことが求められています。
一方、欧州
電池規則の目的であるGHG 削減を実現しようとしても、現状のGHG 排出量を把握できていないことには削減のための施策実施の前後でどの程度の効果があったのか把握することができません。
従って、まずは製品の生
産に関連するGHG 排出量がサプライチェーン全体でどの程度の量なのかを把握するカーボンフットプリント(CFP)の算定が不可欠です、と小野氏は語ります。
GHG 以外にも、先述の目的を達成するために記録が必要な要素として「人権・環境
デューデリジェンス」が挙げられます。サプライチェーンの中で強制労働や児童労働等の人権侵害のリスク、もしくは製造する上で土壌や大気の汚染につながるようなリスクがないか調査を行い、必要な情報を開示するというものです。
CFP と共にこのよう
なトレーサビリティに関する情報について、例えばバッテリーにQRコードを付与するなど「デジタルプロダクトパスポート」という形でデータを追跡・連携できることが求められるようになります。
日本では経済産業省が主導してサプライチェーンデータ連携基盤「ウラノス・エコシ
ステム」の構築が進められています。
「ウラノス・エコシステム」の中では、各サプラ
イチェーンから収集されるCFP や人権・環境デューデリジェンスに関するデータを流通させる基盤を構築し、DX を活用することにより持続可能なサプライチェーンの構築等に向けた環境整備・変革を進めようとしています。
ゼロボード社が提供するのは、CFP 算定のためのクラウドソフトとコンサルティングサービスです。
各社の工場ごと、製品ごと、そして昨年度から今年度にかけてのGHG 排出量の経時変化など、様々な観点か
らCFP の算定を行うことが可能、と小野氏は話します。
また、ソフトウェアの取扱いに長けた人
材が社内にいなくてもCFP 算定を実現することができるよう、どのように算定すればよいか、また算定した結果サプライチェーンのどの部分にGHG 排出量削減の余地が大きいのか、そしてどの程度の削減量やスケジュールで削減目標を計画すればよいかまで提案することができると小野氏は述べます。
既に導入実績はグループ企業含め8 , 000 社以上。導入の背景として、CFP 算定を顧客
から求められているためと語る企業もあったといいます。
CFP 算定し現状把握したその先に必要になるのは、CFP 値を削減する施策です。
削
減するための例としてリサイクル材の活用が挙げられ、具体的には2031 年にはバッテリ
ーに使用される鉱物のうち、リチウム、ニッケル、コバルト等はリサイクル材の最低使用率を遵守することが義務づけられます。
2031年より欧州電池規則で求められるリサイクル材の最低使用率
※ゼロボード社の情報を元に作成
「欧州電池規則で対象となるバッテリーを
皮切りとして、車両全体のライフサイクルアセスメント(LCA)を進めようという検討も欧州では進んでいる。様々な部品について、徐々に粒度を小さくしながらCFP 算定
義務とその後の削減を含めたサプライチェーンの透明性を求める規則が世界レベルで定められていくだろう」と小野氏は語ります。
NAGASE は様々な自動車部品や素材を提供するサプライヤーとして、パートナー企業様と共に取り組みを加速させています。
バッテリーに使用する材料のリサイクルソリューションや、内外装向け製品のリサイクル、またバイオマス由来のプラスチックなど、CFP 算定の先に求められるGHG 削減要求に応えるため、190 年以上のビジネスの経験を活かした環境にやさしい材料や工法をご提案し続けます。
データドリブンの加速と共に、各製品で排出されるGHG 排出量が「見える化」する
未来はそう遠くありません。
そして「見える化」の先の削減のソリューションについて、NAGASE はパートナー企業様とのネットワークをフルに活かし、サプライチェーンの様々なポジションから持続可能な社会の実現に向けて動いています。
NAGASE のモノと技術、サービスに関してぜひお問い合わせください。