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大切なのは人とのつながり。NAGASEが描くサステナビリティのビジョン

社会のさまざまな場面でサステナビリティ(Sustainability:持続可能性)がキーワードになっている現在、ビジネス分野でも関連する話題が日々報じられています。1832年(天保3年)の創業から今日まで、190年間にわたって事業を継続している当社にとっても、サステナビリティは重要なテーマです。そこで今回は、NAGASEがめざす方向性やビジョン、そして、創業200周年に向けた取り組みについてご紹介します。

社会変化に対応する仕組みの構築に注力

 NAGASEグループでは、サステナビリティはすべての理念体系に共通する考え方として位置付けており、「誠実な事業活動」「社会との良好な関係」「環境への配慮」の3つの項目からなるサステナビリティ基本方針を定めています。


 理念体系の頂点にあるグループの経営理念は、「社会の構成員たることを自覚し、誠実に正道を歩む活動により、社会が求める製品とサービスを提供し、会社の発展を通じて、社員の福祉の向上と社会への貢献に努める」としています。ここで特徴的なのは「社会」という言葉が3回登場していることです。経営企画本部サステナビリティ推進室 室統括の相澤 康之は、この点について次のように指摘します。「当社の事業は、すべてが社会への貢献を最も重要な目的としています。その社会が大きく変化している今、社会貢献の方法も考え直す時期に来ていると考えています」。


 産業革命以降の社会は「大量生産・大量消費・大量廃棄」が経済発展には有効な手段であると認識され、環境問題は先送りされる感がありました。NAGASEも例外ではなく、「お客様によいものを、安く、大量に提供する」を目標として事業に取り組んできました。

長瀬産業株式会社 経営企画本部 サステナビリティ推進室 室統括 相澤 康之(あいざわ・やすゆき)

 しかし、最近ではこのような生産活動が地球環境に及ぼす影響が顕在化し、これまでのような生産は見直されつつあります。また、提供される製品についても、それが過剰労働や買い叩きの結果である場合、市場から排除されることにもなりかねません。企業が営利団体として利益を追求するのは当然ですが、社会に役立つ存在になることは、これまでに増して重要なテーマになります。


 「当社が190年間にわたって事業を続けることができたのは、何よりも社会貢献を優先して取り組んできた結果だと思います。そして、これからの社会は、従来から求められていた経済価値だけでなく、社会・環境価値も同時に求めてきます」と相澤は語ります。
 NAGASEグループは、来るべき創業200年に向けて、社会の変化に対応する仕組みの構築に注力しています。

強固なネットワークを活かし、新事業を展開

 NAGASEグループには、世の中のさまざまな商品をお客様にお届けする商社と、その商品を開発・製造するメーカーという2つの「顔」があります。


 祖業である商社の部分では、長年培った「人とのつながり」をさらに強固なものとし、積極的にビジネスを推進する方針です。相澤はNAGASEの強みについて次のように語ります。「当社は創業70年目にあたる1901年、フランス・リヨンに出張所を開設しました。当時は合成染料が普及し始めた頃で、技術が進んでいた欧州から染料を輸入し、国内企業に広める役割を果たしました。それから70年後の1970年代にはメーカーとして化学製品製造に着手しています。この流れを見ると、当社のビジネスは『人とのつながり』がベースとなっていて、そのネットワークを軸にした活動こそが強みになっていると思います」。


 プラスチックをはじめ、化学製品が大量に使われている自動車業界でも、NAGASEはネットワークを意識したビジネスを進めています。2000年代までは樹脂・化学メーカーの代理店としての活動が中心でしたが、その後はお客様の海外調達業務をサポートするといった活動を強化しています。


 環境問題への対応でも、NAGASEは他企業とのパートナーシップを重視した取り組みを推進しています。たとえばモビリティソリューションズ事業部では、自動車用内装部品メーカーである河西工業と協力し、樹脂成型後の端材をリサイクルして再活用する仕組みを構築しました。また、環境に配慮した新素材を開発した欧州メーカー数社をまとめ、共同で国内メーカーとのマッチングを行うなど、ここでも「人のつながり」を活かしたビジネスを展開しています。


 言うまでもなく、今後の自動車業界の発展には環境への配慮が欠かせません。NAGASEは素材のほかにも電気自動車(EV)や自動運転、さらには課題解決に貢献するソリューションといった幅広い分野で、未来に向けたサステナビリティを追求する方針です。

創業200年に向け、ありたい姿の実現をめざす

 環境問題が年々深刻化するなか、最近は「カーボンニュートラル」が話題になっています。このことについて相澤は次のように述べました。「カーボンニュートラルは一つの通過点に過ぎず、今後ますます厳しい規制や条件が課されることは確実です。『化学は規制産業』と呼ばれるほど厳しい規制が存在する分野です。厳しい世界で長年にわたり実績を重ねてきた当社は、そうした規制に対応する能力を十分備えていると自負しています」。

長瀬産業株式会社 経営企画本部 サステナビリティ推進室 室統括 相澤 康之(あいざわ・やすゆき)

 また、最近では世界情勢が変化し、「グローバル化」という言葉の意味が変わりつつあると相澤は指摘します。「これからは地域ごとにローカライズされた事項の集合体がグローバルになると思います。当社はネットワークという強みを活かし、地域を超えた『人とのつながり』によってビジネスの持続性を高めていく計画です」。
 NAGASEグループは9年後の2032年には創業200年を迎えます。「ありたい姿」として掲げる「温もりある未来を創造するビジネスデザイナー」の実現に向けて、当社はサステナブルな社会の発展に一層貢献していきます。