ウレタン塗膜防水材の特徴
まずは、ウレタン塗膜防水材の特徴について解説します。
ウレタン塗膜防水材は、防水加工において、きわめて高い利用価値を示すものです。
とりわけ建築分野においては幅広く利用され、急速に需要を伸ばしました。
原料はポリオールとイソシアネートです。
ただしポリウレアについては、ポリオールではなくアミンが原材料となります。
ウレタン塗膜防水材は液体状であるため、凹凸などがある複雑な形状に対しても、シームレスな防水層を形成します。
凹凸がある場合は一部分が薄く仕上がることもありますが、この点は二重、三重と重複させることで、全体的に十分な防水性を付与することが可能です。
その他、
- 工法や製品と比較して施工が容易である
- 撤去費用を要さないと
- 防水層が軽量であり、建築物に荷重を掛けづらい
- 接合面が生じないため、自然な仕上がりが期待できる
などのメリットも有しています。
いずれも現代における建築において、きわめて重要なメリットであると言えるでしょう。
ちなみにポリウレアは本来的に強力な塗膜を形成するため、さらに利用価値が高いと評価されています。
日本では、すでに塩ビシートや改質アスファルト、非加硫ゴムシートと取って変わりつつあります。
また、硬化が完了するまでの時間が極端に少ない「超速硬化ウレタン」を使用しているものなら、当然ながら防水加工においても、施工時間が短縮されます。
この点は非常に魅力的で、施工時間の短縮に課題感を持っている企業で多用されるようになりました。
ウレタン塗膜防水材のデメリットとしては、
- 塗布作業は人的であるため、精密な均一化が期待できない
- 定期的に補修する必要がある
といった点が挙げられます。
それでも上記したメリットの方が優先されやすく、幅広く普及するようになりました。
ウレタン塗膜防水材の材料構成比
ウレタン塗膜防水材の材料構成比は以下に示すとおりです。
材料名 | 構成比 |
溶媒 | 35~65% |
添加剤 | 15~20% |
樹脂 | 30%~60% |
プライマーの場合は溶媒分の割合が多くなり、下塗りでは樹脂分が多く含まれます。
なお充填剤には炭酸カルシウムが用いられています。
ウレタン塗膜防水材の主材・硬化剤
ウレタン塗膜防水材の場合、主にMDI×PPGが利用されています。
その他、
- TDI×PPG
- HDI×PPG
- IPDI×PPG
といった組み合わせも存在します。
つまり、ウレタン塗膜防水材は耐水性を確保するために、基本的にはPPGが主剤として利用されているわけです。
IPDIについては、現行でも利用されることはありますが、安全上の問題から忌避される傾向があります。
これは、IPDIが2018年に毒物と指定されたことが原因です。
日本におけるウレタン塗膜防水材の市場規模推移
日本におけるウレタン塗膜防水材の市場規模推移は、以下のようになっています。
日本においては、ウレタン塗膜防水材は、すでに普及が完了しています。
2021年前後は、東京オリンピック開催による突発的な需要があり、一時的には市場が拡大します。
しかし東京オリンピック終了後はニーズが落ち着くため、減少傾向をたどるでしょう。
とはいえ、建築分野からのニーズは依然として強大であり、極端な市場縮小も考えづらい状況です。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響を克服できない場合は、より強い縮小傾向が発生するかもしれません。
すでに新型コロナウイルス感染を回避するためのスケジュール変更や工事中止多発し、設備投資への積極性も失われつつあります。
ウレタン塗膜防水材の、用途別販売動向
つまり建築分野そのものの成長、衰退が、そのままウレタン塗膜防水材の市場規模を左右すると言えます。
先ほども触れましたが、建築分野では主に屋上部分やバルコニー、あるいは廊下や外壁など、あらゆる場面で利用されます。
これについては、大規模建築物と個人住宅、いずれにも見られる傾向です。
先ほども触れたとおり粘性が低く、液体もしくは塗料としての物性を保つため、複雑な構造上においても使用できます。
つまりウレタン塗膜防水材は建築分野との相性がすぐれており、上記のような偏った需要割合が形成された格好です。
また、改修、修繕においても高い効果を発揮しています。
ウレタン塗膜某材は上塗りが可能なためです。
先ほど触れた防災意識に基づくニーズの拡大も手伝い、建築分野での需要割合が上昇しました。
わずかながら土木分野から需要があり、ここでは上下水道施設やスレート屋根の補修などで使われています。
また、最近では海外企業のウレタン塗膜防水材を用いた補修なども、わずかながら展開されつつあるようです。
まとめ
ウレタン塗膜防水材は、ウレタン建材においてもっともスタンダードなものです。
防水加工として、液状あるいは塗料である物性が強みであり、難度の高い場面でも幅広く用いられています。
今後は既存の防水材と、徐々に取って変えられていくでしょう。
一方で市場規模を俯瞰した場合、おそらく今後において拡大傾向には発展しません。
すでにウレタン塗膜防水材は普及を終えており、また需要が拡大するようなファクターも特別には見受けられないからです。
現在は東京オリンピックによる特需でわずかながら拡大していますが、開催終了後は横ばいか微減傾向へ戻ると予測できます。
ただしウレタン塗膜防水材の性質上、根本的に需要が変動するわけでもなく、市場が急速な縮小傾向を辿ることも考えづらい状況です。