旭化成とマイクロ波化学株式会社、ナイロン66のケミカルリサイクルプロジェクトを開始

旭化成とマイクロ波化学株式会社は、マイクロ波技術を用いたポリアミド66(PA66、ナイロン66とも呼ばれる)のケミカルリサイクルプロセスの実用化を目的とした共同実証プロジェクトを2023年4月に開始しました。このプロセスは、マイクロ波を利用してPA66を解重合し、モノマーのヘキサメチレンジアミン(HMD)とアジピン酸(ADA)を直接得るもので、低エネルギー消費で高い収率が期待できます。得られたモノマーは、新たなPA66の製造に使用することができます。実証では、エアバッグや自動車部品に使用されるPA66の製造時の端材や使用後の廃材を解重合しています。

旭化成は現在、化石燃料由来のHMDとADAを中間体として製造し、優れた耐熱性と剛性を持つエンジニアリングプラスチック「Leona™ PA66」を製造しています。PA66は、自動車やエレクトロニクス製品のプラスチック部品、エアバッグ用ファブリックの糸など、さまざまな用途に使用されており、今後も世界的に需要の拡大が見込まれています。

カーボンニュートラルの実現に向け、化石燃料を原料とする化学製品の温室効果ガス(GHG)排出量を削減する製造プロセスが注目されています。マイクロ波化学株式会社は、エネルギー効率が高く、対象物質を直接かつ選択的に加熱できるマイクロ波を用いたプロセス開発を中心に、産業分野におけるカーボンニュートラルに向けた技術開発・事業開発を推進しています。ケミカルリサイクル分野では、マイクロ波を使ってプラスチックを分解する独自の技術プラットフォーム「PlaWave™」を推進しています。

旭化成の半世紀以上にわたるHMD・ADA製造の経験とマイクロ波技術の産業化の実績を組み合わせた開発により、従来の製造プロセスよりもGHG排出量を削減できるPA66の製造プロセスの実用化を目指します。

2021年度から開始したラボスケール試験では、マイクロ波を用いたPA66の高収率な解重合と、解重合後の分離精製工程の原理を確認しました。今後は、2023年度中にマイクロ波化学大阪工場でベンチスケール装置を組み立て、2024年度にはこの装置を用いた小規模な実証試験を行い、製品化に向けたプロセス基礎データを収集する予定です。

マイクロ波化学株式会社のマイクロ波によるプラスチック分解技術プラットフォーム「PlaWave™」は、低エネルギーでPA66を解重合し、HMDとADAモノマーを高収率で得ることができます。本技術による解重合で得られたHMDとADAを用いたPA66の製造工程は、従来のPA66の製造工程に比べてGHG排出量の削減が期待でき、マイクロ波の発生に必要な電力に再生可能エネルギーを用いることで、さらなるGHG排出量の削減が期待されます。

本実証事業では、解重合から分離精製までのプロセスを一貫して検証することで、PA66の資源循環を可能にし、さらなるGHG排出量の削減を目指します。

今後は、小規模実証試験の結果を踏まえ、詳細な分析を行った上で、2025年度までに事業化の可否を決定する予定です。また、小規模実証実験と並行して、PA66のケミカルリサイクルにおけるバリューチェーン全体を巻き込んだビジネスモデルの構築を進め、PA66のバリューチェーンに関わるステークホルダーとともに、循環型経済の実現を目指します。

https://www.pudaily.com/Home/NewsDetails/36387

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