軟質ウレタンフォームとは?

軟質ウレタンフォームはソファー・ベッドなどのクッション、自動車の座席に使われるシートなどに使われています。使用される原料や成形法には様々なものがあり、用途や性能によって使い分けられています。市場では中国が最大の生産国ですが、今後はインド・アフリカなどの新興国での生産が増えていくようです。

地域 2017 2018 2019 2020 2021 増加率(5年間)
日本 130 134 131 126 124 -4.6
中国 1560 1650 1690 1720 1730 10.9
北米・欧州 2150 2180 2194 2202 2233 3.8
アジア新興国 830 880 945 1015 1070 28.9
その他 1029 1060 1161 1220 1350 31.2
生産量(千t、当サイト推定値)
目次

軟質ウレタンフォームの特徴

ウレタンフォームについて

ウレタン発泡のイメージ

ウレタンはポリオール由来のOH基とポリイソシアネート由来のNCO部分がウレタン化反応して固まる物質です。ポリオールやポリイソシアネート自体は粘度のある液体ですが、反応することで分子が大きくなり、動きにくくなることでウレタンは固体となります。そのため単純に2つの物質を反応させてウレタン化させるとプラスチックや塗料の塗膜のようになります。ウレタン化のときに泡を含ませながら反応させたものがウレタンフォームです。反応して固まった後は中に空間を含むため軽く、指で押しただけでも歪むような柔らかい物質となります。例えばスポンジはウレタンフォームの一種です。

用途

軟質ウレタンフォームは主にソファーやベッドなどの家具類と自動車のクッションに使われています。世界市場では半数弱の47.1%が家具類、車両向けが14.0%となっています。自動車産業を中心とする日本ではおよそ6割が自動車むけで、18%が家具類です。その他にはスポンジや建材などが含まれます。

当サイト推定値

軟質ウレタンフォームの製造法

原料

原料 目的
ポリオール PPG(ポリオキシアルキレンポリオール) ウレタンフォームを形成する主剤
ポリイソシアネート MDI、TDI 主剤と反応し、硬化
発泡剤 水、ジクロロメタン CO2を発生、もしくは自身が気化して発泡
触媒 アミン類 硬化促進、未反応物の残存防止
原料(当サイト推定)

原料にはポリオール、ポリイソシアネートなどの樹脂類と発泡剤や触媒などの添加物が使われています。2つの樹脂類は主成分となり、分子構造の違いが軟質ウレタンフォームの物性や強度などの基本性能を決定します。例えばポリオールはエーテル系とエステル系に分けられ、エーテル系を使用すると耐水性に優れ、弾性の高いウレタンフォームができます。一方でエステル系を使用すると加水分解するため耐水性には劣りますが強度と加工性に優れたものができます。ポリイソシアネートの場合、NCO基の高い低分子量の分子を使用すると柔軟性を失い、比較的硬いウレタンフォームができます。

性能 エーテル系 エステル系
耐油・耐水性 耐水性に優れるが、油には膨張しやすい 加水分解するため耐水性に劣る
機械的強度 エステル系に劣る 水素結合によって優れた強度を持つ
柔軟性 優れた柔軟性を発揮する 硬い構造のため劣る
ポリオールの性能(当サイト推定)

製造時に発泡させる手段は2つあります。一つが水発泡と呼ばれるもので、水とイソシアネートの反応によって発生した二酸化炭素をフォーム形成に使う発泡法です。もう一つが反応熱を使うもので、ポリオールとポリイソシアネートの反応によって発生した熱によって発泡剤を気化させ、フォームを形成します。気化法の発泡剤としてジクロロメタンやクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン類が使われていますが、オゾン層破壊や温室効果ガスとしての性質が懸念されていることから、近年では水発泡にシフトしています。触媒はポリオールとポリイソシアネートの反応を促進させるものです。反応時間の短縮を目的に使われますが、触媒が無ければ反応が十分に進まず、ウレタンフォームに未反応のポリイソシアネートが残ってしまうため、必須成分ともいえます。その他に難燃剤や耐候剤、酸化防止剤などの添加剤が含まれます。

・成形法

スラブ成形

モールド成形

軟質ウレタンフォームの成型法には様々なものがありますが、その中でもよく利用されているのがスラブ成形とモールド成形の2種類です。スラブとは厚板という意味で、スラブ成形とは連続硬化によって反応させたウレタンフォームを切断によって加工する成形法です。板状の製品をつくるのに適した成形法で、自動車のシートやソファー用クッションの成形に使われます。モールド成形はモールド(鋳型)にウレタンフォームの原料を流し込み、これを鋳型ごと加熱させて反応させる成形法です。スラブ成形では不可能な複雑な形状の製造に適しています。自動車用のシートパッド、椅子の手もたれや靴用のクッションなど、曲線的な形状をもち比較的小さい製品の製造に使われています。

軟質ウレタンフォームの市場状況

生産規模

軟質ウレタンフォーム市場について見ていきましょう。2018年の世界生産は591万トンで、うち日本が13.5万トン(2.3%)、中国が162万トン(27.4%)、北米115万トン(19.5%)、欧州103万トン(17.4%)となっています。寝具・ソファーなどの家具類、自動車用シートを主な用途先としていることから生産高は人口とある程度相関します。近年では自動車需要の増大と生産コストの低減を目的として東南アジア、アフリカ、インドなどの新興国に生産がシフトしています。

軟質ウレタンフォーム市場の成長性は家具類と自動車市場の動きに左右されます。特に自動車市場は新型コロナウイルスの影響で2020年の新車販売台数が減少することは避けられません。しかし、長期的に世界の自動車普及率の上昇は避けられない流れとなっており、軟質ウレタンフォームの需要は経済活動の回復に伴って伸びが続くと見られています。また、生活様式の欧米化によるソファー・ベッド類の普及もウレタンフォーム需要拡大の下支えとなっており、日本・中国以外のアジア各国とアフリカでの生産量が著しく伸びる見込みです。一方で国内市場では少子高齢化による人口減少が影響し、家具類の需要は不安となっています。家具類向けのウレタンフォームは需要が減少するかもしれません。

国内製造メーカー

国内の製造大手3社はイノアックコーポレーション、東洋クオリティワン、ブリヂストンで、生産量は各28%、20%、19%程度となっています。イノアックコーポレーションは「カラーフォーム」という製品名で軟質ウレタンフォームを販売しています。エーテル系のポリオールを使用しており、高弾性で耐水性・耐油性の優れる商品です。ベッドのマットレスやソファー用のクッションを用途としています。ウレタンフォーム専業の東洋クオリティワンは多種類の商品を取り扱っており、家具や寝具、雑貨類向けを生産しています。タイヤメーカーとしての印象が強いブリヂストンは「エバーライト」という名で軟質・硬質ウレタンフォームを販売しており、難燃タイプや耐紫外線タイプ、低通気タイプなど特殊用途向けの製品も扱っています。

メーカー 生産量シェア 商品
イノアックコーポレーション 28.5% エーテル系ポリオールを使った家具向けを主力
東洋クオリティワン 20.3% 家具類から雑貨向けなど多種多様
ブリヂストン 18.5% 耐紫外線タイプなど特種用途も多数扱う
国内メーカーシェア(当サイト推定)

・硬質ウレタンフォームとの違い

ウレタンフォームは硬さによって硬質、半硬質、軟質に分類されます。硬質ウレタンフォームは中に含まれる気泡の一つ一つが独立した気泡となっており、体積あたりの空間量が少ないため比較的硬くなります。住宅の建材に使われる断熱ボードなど、ある程度強度を要する素材に使われます。一方の軟質ウレタンフォームは製造時の気泡量が多いため空間の多いフォームとなり、少し力を与えただけでも変形するような軟らかいスポンジ調の物質となります。発泡量の違いのほかに原料となるイソシアネートやポリオールの使い分けによって軟質・硬質の制御をする場合があります。例えばポリオールに含まれるOH基の量を減らすと硬化の度合いが弱まるため、軟質となります。

まとめ

軟質ウレタンフォームは自動車の普及と家具の欧米化によって、新興国での需要が伸びていくとみられます。工場での成形法にはスラブ成形とモールド成形がありますが、これらの成形法も反応温度や原料によってさらに細かく分類することができます。

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