2025年3月2日付の『ウォール・ストリート・ジャーナル』では、事情に詳しい関係者の話として、Shellがヨーロッパおよびアメリカにおける化学資産の売却を検討していると報じました。同報道によると、同エネルギーグループは、化学事業の戦略的見直しを行うためにMorgan Stanleyを起用したとのことです。また、報道では、買収候補として、プライベート・エクイティ企業や、西側地域での生産能力拡大を目指す中東の企業などが含まれる可能性があると伝えています。
アメリカでは、Shellはテキサス州ディアパーク、ルイジアナ州ギースマーおよびノーコ、ペンシルベニア州モナカに化学工場を所有しており、2024年には生産を安定化させたと述べています。一方ヨーロッパでは、ドイツのラインラント、オランダのムーアダイク、イギリスのモスマランに化学コンプレックスを保有しています。
オランダ・ムーアダイクの化学工場は、ロッテルダムとアントワープという主要港の間に位置し、欧州最大の製油所であるShell Pernisと密接に統合されています。Shell Chemicals NetherlandsはCaradolブランドのポリオールを年間25万5,000トン生産しています。
Shellはまた、中国でもポリオールの生産を行っており、その中には中国海洋石油総公司(CNOOC)との50対50の合弁事業も含まれています。さらに、シンガポールのジュロン島にあるShell Jurong Islandでは、ポリオールおよびプロピレンオキシドを合わせて年間34万トン生産しており、これらはポリオールを含む各種化学誘導品の製造に用いられています。加えて、ShellはCNOOCとの合弁により、中国の恵州近郊・大亜湾での化学事業の拡大も計画しています。
Shellは2023年以降、資産の評価および売却の可能性を含む戦略的見直しを進めており、シンガポールおよびヨーロッパにおける今後の投資には制限をかける方針を取っています。