耐加水分解安定剤

目次

耐加水分解安定剤の概要

ポリウレタンの劣化

ポリウレタンの劣化は物理的要因と化学的要因に分類されます。物理的要因として引張、圧縮、せん断が挙げられ、化学的要因として酸素、オゾン、水、光、油が挙げられます。化学的要因は逐次反応と連鎖反応に分類され、主な逐次反応に加水分解、主な連鎖反応にラジカル反応、イオン反応があります。

<加水分解のメカニズム>

加水分解はポリマー中のエステル分子が水と反応しカルボン酸とアルコールに分解される反応で、エステル結合を持つウレタンは水や湿気により反応が進行し製品劣化に繋がってしまいます。加水分解はポリウレタンの原料であるポリオールの種類で変化し、エーテル系がエステル系より耐加水分解性が高い特性があります。加水分解は、室温でも反応が進むこと、製造直後から反応が進むことより、ポリウレタン最大の欠点と言われることもあります。そのため、用途に応じ加水分解安定剤を使用します。

耐加水分解安定剤の概要

耐加水分解安定剤はカルボジイミド基(-N=C=N-)をもつポリマーで、ウレタン樹脂の加水分解を抑制するために使用される添加剤があります。ウレタン樹脂では採用率は50%程です。それ以外の樹脂やエラストマー(下表)にも使用することができます。

略称 IUPAC名称等
PET ポリエチレンテレフタラート
PBT ポリブチレンテレフタレート
PLA ポリ乳酸
PHA ポリヒドロキシアルカン酸
PBS ポリブチレンサクシネート
TPC ポリエステル系熱可塑性エラストマー
<耐加水分解安定剤使用樹脂>

耐加水分解安定剤は液状タイプと固体タイプがあり、一般的に添加先ポリマーに対し1〜2%配合します。ウレタン製品では主にCASE(Coating/Adhesive/Sealing/Elastomer)といった以下の用途に採用されています。

  • 熱硬化ウレタン(TSU):車輪、ローラー
  • 熱可塑性ウレタン(TPU):ウォーキングシューズ等機能性が求められる靴の靴底
  • 反応型ホットメルト接着剤
  • ウレタン系コーティング剤

耐加水分解安定剤の市場規模

耐加水分解安定剤の市場動向

耐加水分解安定剤の主要用途であるウレタン製品の需要拡大に伴い、耐加水分解安定剤市場は拡大し続けています。接着剤、コーティング材、エラストマー市場と相関関係にあり、VOC規制に伴う需要増加も見込まれています。また、生分解性プラスチックにおいて、生分解性を損なうことなく耐久性を高める特性を持つ耐加水分解安定剤の供給が期待されています。

耐加水分解安定剤の主要参入企業

耐加水分解安定剤の主要参入企業を以下に示します。

企業 製品・ブランド 特徴
日清紡ケミカル カルボジライト 日本 脂肪族系
溶液状またはバルク状
帝人 カルボジスタ 日本 環状構造
粉末
ADEKA ADEKA ECOROYAL CDI 日本 カルボジイミド化合物
LANXESS STABAXOL I
STABAXOL P
STABAXOL L
ドイツ 芳香族系、粉体、低分子量カルボジイミド。
芳香族系、粉体、高分子量カルボジイミド。
モノメリックカルボジイミド
Raschig IONOL ドイツ 芳香族系、
白色結晶。
<耐加水分解安定剤の主要参入企業>

上記以外にも欧州、北米、中国など各地で複数の企業が参入、ラインナップ展開しているしています。

日清紡ケミカルは日本市場では9割方占有しています。日清紡ケミカルのカルボジライトは独自開発の脂肪族カルボジイミドで、生分解プラスチックの需要増加が顕著です。帝人のカルボジスタは環状構造で、ポリマー添加時に発生するイソシアネートガスをポリマー内に留める特徴があります。耐加水分解安定剤以外にも熱硬化系樹脂の耐熱性向上や樹脂相溶性をあげる効果があります。ADEKAのADEKA ECOROYAL CDIは潤滑油添加剤として使用され、ポリメリゼーションを起こさないのでオイル中にスラッジ生成を抑える働きがあります。

LANXESS社は世界市場最大手で、用途に応じてカスタマイズ性を高めたグレードの販売を行っています。RaschingのIONOLはエラストマー、熱可塑性スチレン共重合体、ポリアミド、ポリオレフィンの安定化に使用されます。

耐加水分解安定剤の技術課題等

耐加水分解安定剤に求められる技術動向として、イソシアネートガスの対応が求められています。一般的に使用されるカルボジイミド化合物は樹脂と反応の際イソシアネートガスが発生するので、製造現場の制約を抑え、環境対応の見地よりイソシアネートガスの発生低減が求められています。それに応え、帝人のカルボジスタや、LANXESSのStabaxol Lなどイソシアネートガスが抑えられるカルボジイミドの開発、販売が続いています。

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