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AIデータセンターに活きる車載技術とは。EVとの共通点と応用事例を解説

生成AIの普及でデータセンターの電力と発熱が急増し、冷却や電力供給、蓄電の設備が大きく見直されています。 これらの要件は、EVの電動化で自動車業界が取り組んできた課題と重なる部分が多く、車載分野で培われた技術をデータセンターに応用する動きが出てきました。 本記事では、AIデータセンターの市場動向、EVとの共通点、企業の応用事例、具体的な技術、応用するときの注意点について解説します。

AIデータセンター市場の急成長と技術的課題

AIデータセンターの市場は急速に広がり、設備に求められる性能も変わってきています。

市場の動きと、そこで生まれている技術的な課題は次のとおりです。

生成AIの普及によって拡大するデータセンター市場

IEA(国際エネルギー機関)によると、世界のデータセンターの電力消費は2025年に約485TWhとなり、前年から17%増えました。

2030年には約950TWhと、世界の電力需要の約3%に達する見通しです。

伸びをけん引しているのはAI向けのデータセンターで、その電力消費は2025年に50%増え、2030年までに3倍になると見込まれています。

大手テック企業5社の設備投資は2025年に4,000億ドルを超え、2026年はさらに75%増やす計画です。

高密度化・大電力化によって高まる冷却と電力供給の重要性

Googleは2025年4月、ラックあたりの電力が100kWから1MWへ移ることを見すえ、液冷と±400VDCの給電で対応する方針を示しました。

GPUの発熱も増え続けており、調査会社のDell'Oro Groupは、先端GPUの熱設計電力(TDP)が2029年までに4,000Wを超えると予測しています。

NVIDIAは、1MW級のラックを従来の54Vの直流で給電すると、ラック内のバスバーだけで最大200kgの銅が必要になると試算しています。

冷却と電力供給の設計を、ラック単位で見直す必要が出てきました。

AIデータセンターとEVに共通する技術要件

AIデータセンターに求められる性能は、EVの電動化で自動車業界が取り組んできた課題と重なります。

両者に共通する技術要件は、次の4つです。

高い信頼性と長期安定稼働

車載ICにはAEC-Q100などの信頼性評価の規格があり、搭載する場所に応じて−40〜125℃などの温度グレードを選びます。

車載電子部品は、搭載位置ごとに温度・振動・使用期間(15年程度の例も)を定めて評価され、量産では品質管理の規格(IATF 16949)への対応も重視されます。

データセンターの設備は、24時間365日止めずに動かし続けることが前提です。

Googleは、2020年以降に運用してきた液冷の冷却水分配装置(CDU)の稼働率を約99.999%と報告しています。

発熱対策と高効率な冷却技術

EVでは、バッテリーやインバータのパワー半導体を、冷却プレートと配管、ポンプで液冷しています。限られたスペースで熱を効率よく運ぶ設計が、航続距離や部品の寿命を左右します。

AIデータセンターでも、GPUに金属のコールドプレートを密着させ、マニホールドとCDUで冷却液を循環させる液冷が広がっています。

熱源から冷却液へ熱を移し、その冷却液を配管で熱交換器などへ送るという基本の仕組みが両者に共通します。

ただし、冷やす対象や回路の構成、熱量の規模は異なります。

大電力の安全な供給と電力変換効率

EVでは、急速充電時の電流を下げるため、400V級に加えて800V級の電池システムを採用する車種が増えています。

電圧を上げると同じ電力でも電流が減り、損失や発熱、配線の重さを抑えられます。

AIデータセンターでも、Googleは±400VDC、NVIDIAは800VDCの給電構成を提案しています。

こうした給電構成の電力変換では、EVのインバータで量産が進んだSiCなどのパワー半導体の活用が検討されています。

どちらも、配線や部品の発熱を抑えながら、大きな電力を効率よく扱う設計が必要です。

異常発生時の安全対策とリスクの最小化

EVでは、電子制御の機能安全を定めたISO 26262に沿った設計が行われています。

電池では、1つのセルで起きた熱暴走を隣のセルに広げない熱伝播対策が重要な設計課題です。

データセンターでも、定置型の蓄電設備には熱暴走の広がりを評価する試験方法(UL 9540A)があります。

直流は電流がゼロになる瞬間がなく遮断が難しいため、半導体で電流を止める遮断器(SSCB)の開発も進んでいます。

ここまでの共通点を表にまとめると、以下のようになります。

観点

EVで求められること

AIデータセンターで求められること

共通する技術

信頼性

広い温度範囲・振動の中で長期使用

24時間365日の連続稼働

量産品質と故障率の低い設計

冷却

電池・インバータの液冷

GPUの液冷(コールドプレート・CDU)

液冷の配管・継手・材料

電力供給

400V→800Vの高電圧化

±400V・800Vの直流給電

高電圧化とSiCなどの半導体

安全対策

機能安全・電池の熱伝播対策

蓄電設備の熱暴走対策・直流の遮断

熱伝播抑制・絶縁・遮断

このように、共通しているのは設計上の課題です。

求められる水準や評価の方法は用途によって異なり、その違いは後の章で解説します。

車載技術をデータセンターに応用する企業の事例

EVのサプライチェーンや車載由来の技術を、データセンターに活かす動きが出ています。

給電方式を選ぶ理由にEVの基盤を挙げる事例と、車載由来の技術をデータセンター向けに展開する事例を紹介します。

自動車産業の技術・サプライチェーンを活用するデータセンター事例

Googleは2025年4月、±400VDC(公称400V)の給電構成を提案しました。

この電圧を選んだ理由に、EVで確立されたサプライチェーンを活用できることを挙げています。

量産で使われてきた部品を使うことで、規模の経済や製造の効率化を見込めます。

NVIDIAも2025年10月、800VDCの給電を提案する技術ブログで、EVや大規模な太陽光発電の産業がすでに800VDC以上を採用していると記しました。

成熟した部品と設計の実践があることを、800VDCを選ぶ利点に挙げています。

車載部品・半導体メーカーによるデータセンター市場への展開事例

ドイツの自動車部品メーカーMAHLEは2026年7月、Infineonのパワーモジュール向けに冷却ユニットを開発しました。

冷却対象のモジュールはデータセンターの電源制御にも使え、MAHLEは開発を自動車で培った能力の他用途への展開と説明しています。

台湾の半導体メーカーNuvotonは2026年7月、400V/800Vの高電圧のバックアップ電池(BBU)向けに、電池の状態を監視するICを発表しました。

電池をつなぐデイジーチェーン通信に、車載グレードで実績のある技術を応用しています。

データセンターに応用できる車載技術の具体例

企業の動きを踏まえ、EVで量産されてきた技術のうち、データセンターで応用が進んでいる、または見込まれるものを分野ごとに整理します。

主な分野は次の4つです。

液冷・熱マネジメント技術

Dell'Oro Groupによると、データセンターの液冷市場は2025年に約30億ドルと前年の約2倍になり、2029年には約70億ドルに達する見通しです。

※出典:Dell'Oro Group『Data Center Liquid Cooling Market to Approach $7 Billion by 2029』(2026年1月)

液冷では、配管やホース、継手に加え、冷却液に合う材料選びが大切です。

業界団体OCPは、手で着脱でき、液だれしにくく、稼働中に抜き差しできる継手の仕様(UQD)を公開しています。

EVの冷却回路で培われた漏れ対策や樹脂配管の技術は、こうした部品の設計に応用できます。

高電圧配電・バスバー技術

NVIDIAは2025年5月、13.8kVの交流を施設の外周で800Vの直流に変換し、ラックまで直流で送る方式を発表しました。

NVIDIAによると、415Vの交流で配電する場合と比べ、同じ太さの導体で85%多くの電力を送れます。

電力変換の回路では、薄い絶縁層を挟んで導体を重ねた積層バスバーで、配線のインダクタンスを下げます。

EVのインバータで使われてきたこの技術は、データセンターの整流器やDC/DCコンバータにも応用できます。

パワー半導体・電力変換技術

EVのインバータでは、損失の少ないSiCのパワー半導体の量産が進みました。

AIデータセンターでも、交流から800VDCへの変換や、ラック内の降圧にSiCやGaNを使う構成が検討されています。

ロームは2025年6月、NVIDIAの800Vの構成に向けてSi・SiC・GaNのパワー半導体を提供すると発表しました。

電力変換では固体変圧器(SST)の開発も進んでいます。SiCとGaNの使い分けは、変換の段ごとの電圧や電力、スイッチング周波数で変わります。

蓄電池・バックアップ電源の安全対策技術

データセンターでは、停電時の電力供給を支えるBBUやUPS、電力の需給調整などに使う大型の蓄電システム(BESS)に蓄電池が搭載されています。

NVIDIAは、GPUの負荷の急な変化に備え、ラック近くのキャパシタと施設のBESSを組み合わせる構成を示しました。

大容量のリチウムイオン電池では、1つのセルの熱暴走を隣に広げない対策が欠かせません。

EVの電池パックで使われてきた熱伝播抑制材や断熱・絶縁材、電池監視の技術は、BBUやBESSの電池モジュールにも応用できます。

車載技術をデータセンターに応用する際の課題と注意点

車載で実績のある技術でも、データセンターにそのまま使えるとは限りません。

応用を検討するときの主な課題と注意点は、次の3つです。

車載用途とデータセンター用途で異なる要求仕様・評価基準

車載の部品は、温度や振動の厳しさ、寿命を基準に評価されます。

一方、データセンターの設備では、止めずに動かし続ける稼働率と、運転中に交換できる保守性が重視されます。

車載向けの試験に合格していても、データセンターの条件で同じ性能を出せるとは限りません。

どの評価が必要かは対象機器で異なり、定置型の蓄電設備ならUL 9540A、液冷の継手ならOCPのUQD仕様が判断の目安になります。

長期運用・保守性・システム全体での信頼性確保

データセンターでは、求める稼働率に応じて機器や系統を冗長にし、保守のときの影響を抑える構成をとります。

部品単体の信頼性が高くても、電源や冷却回路を含めたシステムの設計しだいで稼働率は変わります。

冷却液の長期的な管理や、点検・交換のしやすさまで含めて設計することが大切です。

材料の試験値は材料単体の性能で、システムとしての安全性を保証するものではない点にも注意が必要です。

コスト・供給能力・調達体制の確認

AIデータセンターの増設は速いペースで続いており、必要な数を必要な時期に届けられる供給体制が欠かせません。

IEAは、ガスタービンや変圧器、先端半導体の供給網がひっ迫していると指摘しています。

車載向けの量産体制が、データセンターの数量や仕様変更の頻度に合うとは限りません。

生産拠点や調達先を複数持てるか、データセンター向けの設計変更に対応できるかが、採用を左右します。

NAGASE Mobilityが提案するデータセンター向け技術・材料

こうした評価の条件を前提に、データセンターへの応用が見込まれる技術・材料を紹介します。

いずれも、NAGASE MobilityがEVのパワーモジュールや電池向けに扱ってきたものです。

液冷システムに活用できる水冷配管・インサート成形技術

NAGASE Mobilityでは、パートナーのアテックス社とともに、パワーモジュール向けのインサート成形技術をご提案しています。

そのひとつが、冷却用の水冷パイプを樹脂と一体で成形し、熱を伝えやすくする水冷パイプインサートです。

冷却部材と樹脂部品の密着性を高める技術で、データセンターの液冷部品への応用が見込めます。

アテックス社は、今後のテーマとして放熱・冷却の技術にも取り組んでいます。

詳細はこちら:パワーモジュール向けインサート成形技術とは。課題と解決策・適用事例を解説|NAGASE Mobility|長瀬産業株式会社

電力変換・配電機器に活用できるバスバー・インサート成形技術

積層バスバーは、絶縁層を挟んだ導体の配置によって配線のインダクタンスを抑える部品です。

インサート成形は、その導体と絶縁材を一体化する加工技術で、0.1mmの樹脂フィルムを一体成形した事例もあります。

積層バスバーは、サーバー・データセンターでの高電流の直流配電や、蓄電システムでも使われています。

NAGASE Mobilityでは、HVDC 800V以上に対応するバスバー一体成形のソリューションを、日本・中国・メキシコから供給しています。

詳細はこちら:積層バスバーの低インダクタンス化を実現するインサート成形技術|NAGASE Mobility|長瀬産業株式会社

蓄電システムの安全性向上を支える電池保護材料

NAGASE Mobilityでは、xEVのバッテリー向けに、熱暴走対策や絶縁に使う材料をご紹介しています。

パートナー企業である中国の浙江葆润社(バオルン社)の製品として、複合防火シート「MKシート」やセル間断熱材「SUPHIP」を取り扱っています。

湿気や結露への対策には、蓄電池にも使える調湿材・結露防止シート「HCCF」があります。

断熱と電気絶縁を兼ねるマイカシートとあわせ、対策する現象ごとに材料を選べば、BBUやBESSの電池モジュールにも応用できる見込みがあります。

詳細はこちら:xEVバッテリーの熱暴走対策とは?発生要因や材料ソリューションを解説|NAGASE Mobility|長瀬産業株式会社

詳細はこちら:xEV向けマイカ材料の用途と課題|断熱・絶縁用途やインド製マイカシートを紹介|NAGASE Mobility|長瀬産業株式会社

データセンター向け技術・材料の調達はNAGASE Mobilityへ

AIデータセンターとEVには、信頼性・冷却・電力供給・安全対策で共通する技術要件があり、車載分野で培われた技術を応用する動きが広がっています。

一方で、車載とデータセンターでは要求仕様や評価の方法が異なり、供給体制まで含めた検討が欠かせません。

NAGASE Mobilityでは、世界各地のサプライヤーやパートナーと連携しています。

車載分野で培った材料・加工技術の知見をもとに、データセンター向けの技術・材料をご提案します。

NAGASEグループで取り扱う冷却液や熱管理用のホース、低インダクタンスのバスバー、蓄電システム向けの電池材料についても、あわせてご相談いただけます。

データセンター向けの技術・材料の選定や調達でお困りの際は、NAGASE Mobilityへご相談ください。

→NAGASE Mobilityに相談する


【参考資料】

・長瀬産業『データセンター向け 先進インフラ&サーマルマネジメントソリューション』(2026年8月)https://www.nagase.com/jp/ja/discover/resources/datacentersolutions

・IEA『Key Questions on Energy and AI:Executive summary』(2026年4月)
https://www.iea.org/reports/key-questions-on-energy-and-ai/executive-summary

・IEA『Data centre electricity use surged in 2025, even with tightening bottlenecks driving a scramble for solutions』(2026年4月)
https://www.iea.org/news/data-centre-electricity-use-surged-in-2025-even-with-tightening-bottlenecks-driving-a-scramble-for-solutions

・Google Cloud『Enabling 1 MW IT racks and liquid cooling at OCP EMEA Summit』(2025年4月)https://cloud.google.com/blog/topics/systems/enabling-1-mw-it-racks-and-liquid-cooling-at-ocp-emea-summit

・Dell'Oro Group『Data Center Liquid Cooling Market to Approach $7 Billion by 2029 as AI Deployments Accelerate』(2026年1月)
https://www.delloro.com/news/data-center-liquid-cooling-market-to-approach-7-billion-by-2029-as-ai-deployments-accelerate/

・Texas Instruments『Qualification summary FAQs』
https://www.ti.com/support-quality/faqs/qualification-summary-faqs.html

・Monolithic Power Systems『Automotive Electronics Reliability Testing Starts and Ends with the Mission Profile』 https://www.monolithicpower.com/en/automotive-electronics-reliability-testing-starts-and-ends-with-the-mission-profile/

・IATF Global Oversight
https://www.iatfglobaloversight.org/

・InsideEVs『What Are 400V And 800V EVs And What Does That Mean For Charging?』(2024年3月)
https://insideevs.com/features/710280/400-volt-800-volt-evs-explained/

・NVIDIA『NVIDIA 800 VDC Architecture Will Power the Next Generation of AI Factories』(2025年5月)
https://developer.nvidia.com/blog/nvidia-800-v-hvdc-architecture-will-power-the-next-generation-of-ai-factories/

・NVIDIA『Building the 800 VDC Ecosystem for Efficient, Scalable AI Factories』(2025年10月)
https://developer.nvidia.com/blog/building-the-800-vdc-ecosystem-for-efficient-scalable-ai-factories/

・Standards Council of Canada『ANSI/CAN/UL 9540A』
https://scc-ccn.ca/standardsdb/standards/4033513

・eeNews Europe『Infineon and SolarEdge bring solid-state protection to 800 VDC AI data centers』(2026年9月)https://www.eenewseurope.com/en/infineon-and-solaredge-bring-solid-state-protection-to-800-vdc-ai-data-centers/

・MAHLE『MAHLE develops high-performance electronic cooling unit for Infineon data center applications』(2026年7月)
https://newsroom.mahle.com/press/en/press-releases/mahle-develops-high-performance-electronic-cooling-unit-for-infineon-data-center-applications-113216

・Nuvoton プレスリリース(2026年7月)
https://www.nuvoton.com/news/news/all/TSNuvotonNews-000624/

・OCP『Universal Quick Disconnect (UQD) Specification Rev 1.0』(2020年9月)https://www.opencompute.org/documents/ocp-universal-quick-disconnect-uqd-specification-rev-1-0-2-pdf

・ローム『ローム、NVIDIAの800Vアーキテクチャに最適なソリューションを提供』(2025年6月)https://www.rohm.co.jp/news-detail?news-title=2025-06-13_nvidia&defaultGroupId=false

※本WEBページに掲載されている画像制作の一部に生成AIを使用しています 。