液体塩素は、非常に毒性が強い黄緑色の液体です。常圧で気体になり、吸入すると激しい中毒症状を起こします。強い刺激性と腐食性があります。液体塩素は、日光の下で他の可燃性ガスと混合すると容易に発火し爆発します。反応性の高い化学的性質を持ち、ほとんどの元素(または化合物)と反応することができます。
2022年6月末以降、中国各地の液体塩素の価格は再びマイナスに転じました。
2022年7月上旬、山東市場の液体塩素の平均価格は約-200元/トン、最安値は600元/トンにまで達しています。つまり、液体塩素の供給者は液体塩素を販売しても利益を得られないばかりか、代わりに買い手に支払っていたのです。この紛らわしい現象は液体塩素市場では珍しいことではなく、今年2月にも出現しているのです。
昨年10月下旬、液体塩素の価格は過去最高値を更新し、最高値は4,000元/トンに達していました。当時は、中国の「二重管理」政策などの影響で、各種化学品の価格が高騰していました。しかし、わずか4ヵ月後、液体塩素の価格はCNY -200/トンまで下がり、CNY 4,200/トン以上減少しました。7月現在、液体塩素の価格は1トン当たり-600元まで下がり、累積で4,600元以上の下落となっています。
液体塩素の価格急変の理由
液体塩素の価格急変は、その生産過程に直接関係しているのです。液体塩素は苛性ソーダの副生成物なので、苛性ソーダを作れば作るほど液体塩素ができるのです。 苛性ソーダメーカーの進出が大きくなればなるほど、苛性ソーダ設備の稼働負荷が高くなり、液体塩素の供給が増大し、市場における需給の矛盾があきらかになります。近年、苛性ソーダ設備の急速な増強に伴い、液体塩素の生産量も大幅に増加しています。
従って、液体塩素の性質により、適時に廃棄、あるいは、下流の生産に使えない場合は一時的に保管する必要がありますが、保管には専用の容器が必要で、容器は非常に高価です。さらに、保管温度も厳しく要求されます。例えば、夏場など温度が高すぎるとかえって危険なので、保冷設備が必要です。そのため、メーカーの貯蔵コストは高くなり、余分な液体塩素を時間内に処理することが急務となっているのです。
しかし、液体塩素の下流での消費量は全体としては少なく、クロロ酢酸、塩素化メタン、塩素化パラフィン、エピクロロヒドリン、繊維、印刷・染色、農薬、セルロースなど、これらの川下産業は現在比較的低迷期にあり、消費量が少ないため、液体塩素の価格上昇を支えるには十分ではありません。液体塩素の供給者は貯蔵コストが高いため、むしろ多少のお金を払ってでも液体塩素の在庫を解消したいと考えているので、液体塩素の価格がマイナスになる主な理由です。
なお、イソシアネートの製造工程では塩素ガスが必要なのですが、塩素ガスの特殊性から、イソシアネートメーカーは通常、製造工程で塩素バランスをとるために酸化や塩酸電解の技術を採用し、市場からの液体塩素購入量は比較的少ないのです。従って、液体塩素の価格がマイナスになっても、その製造コストは下がらない仕組みとなっています。