整泡剤(シリコーン化合物)詳細

硬質/軟質ウレタンフォーム(PUF)が無数の空隙を含んでいるのは、ポリイソシアネートとポリオールが発泡剤の泡を含ませながら硬化するためです。しかし通常、泡の大きさは不均一になりやすく、攪拌次第では泡の発生箇所に偏りが生じてしまいます。空隙の大きさ・場所に偏りのないウレタンフォームを作るには整泡剤の力を借りなければなりません。整泡剤に含まれるシロキサン部が樹脂の表面張力を下げることで整泡効果を発揮します。そしてこの表面張力は樹脂・添加剤の混合を助ける役割もあります。

目次

整泡剤の構造と製法

図 シリコン系整泡剤の構造(当サイト推定値)

整泡剤は一般的にシリコン系化合物が使われることが多く、ポリエーテル部(C-O-C-O)とシロキサン部(O-Si-O,O-Si-R)で構成されます。図にようにポリエーテル/シロキサン部が1本ずつある直線状のものや、シロキサン部がポリエーテル部に挟まれているものもあります。分岐構造を有するものも存在します。それぞれ性能が異なるため、目的とするフォームの性能次第で変えなければなりません。ちなみにシリコーン整包剤はジメチルポリシロキサン(PDMS)とポリエーテルの反応によって合成されます。

整泡剤の作用

整泡作用は泡の発生と成長、そして安定化によってもたらされます。通常、樹脂内では泡は局所的に発生しやすく、大きな泡でき突沸の原因となります。整泡剤による表面張力の低減は泡の発生を容易にすることで局所的に泡が肥大化しないように調製します。そして発泡後は加工による機械的な力によって泡が消滅しないよう安定化させ、均一である程度の大きさを有する泡ができるように働きかけます。

整泡剤は相溶化剤としての機能も有しており、これが整泡作用をもたらすこともあります。PUFの原料となるポリイソシアネートやポリオール、各種添加剤は相溶性が良くないことがあり、十分に混ざっていないと泡が不均一になってしまいます。整泡剤由来のシロキサン部は樹脂の表面張力を下げる効果があるため樹脂の相溶化に寄与し、泡の均一化につながります。

整泡剤の種類

整泡剤には様々なタイプがあり、必ずしも整泡効果が優れるほど良いというわけではありません。製品のタイプ別に使い分ける必要があります。軟質PUFの場合、連続的に生産するスラブフォームと型に入れて固めるモールドフォームがありますが、スラブフォームは低粘度かつ硬化までの時間が長いため、整泡作用の強い整泡剤が好まれます。モールドフォームでは通気性の低い型に閉じ込められてしまうため、整泡効果よりも泡抜けの良い製品が選ばれます。

軟質から硬質に向かうにしたがってPUFの原料は高粘度化し、泡がより安定化されやすくなります。この状態で性能の強い整包剤を用いたり、整泡剤の量を過剰に配合したりしてしまうと泡が肥大化し不均一化をもたらします。そのため半硬質・硬質PUFでは軟質よりも整泡作用の低いものが選ばれます。

市場状況

シリコーン整泡剤は発泡環境を有するPUFでしか使われておらず用途先の全てがPUFです。硬質/軟質の比率は世界市場で55%/45%であり、国内も同様の数字を示しています。他のPUF原料と同様にPUF生産量の多い地域で生産されており、国別では中国が最大のシェアを占めます。シリコーン整泡剤の合成は寡占化が進んでいるため、メーカー別では上位3社がシェアのほとんどを握っています。国内市場でもこれら3社の関連会社が生産に携わっています。

今後、世界では生活様式の西洋化に伴ってベッド・ソファー類が普及すると見られており、自動車の普及も相まって軟質PUFの需要は伸びていく見込みです。また、省エネ化による住宅の断熱性能向上の他、人口増加による建築物の増加によって硬質PUFも需要が伸びていくでしょう。こうした背景からPUFに欠かせない整泡剤の生産量も増加すると見られており、世界での生産量は5年以内に155,000t(2018年比で20%増)を突破する見込みです。

まとめ

シリコーン化合物で構成される整泡剤はPUFの品質を保つうえで必須の原料です。PUF製品の性能や形状に合った製品を選ぶ必要があります。生産は世界各国で行われていますが、メーカーは3社による独占が進んでおり、他のフォーム用原料とは異なる市場構成をとっています。今後も世界中のPUF需要増加に伴って整泡剤の需要は伸びていく見込みです。なお、研究開発の現場では環境意識の高まりから低VOCを実現できる製品や、HFC系からのシフトが進むHFO型発泡剤に合った製品の開発が進められています。

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