ポリカプロラクトンポリオール(PCL)

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ポリカプロラクトンポリオール(PCL)の概要

ポリカプロラクトンポリオール(PCL)の概要

ポリカプロラクトンポリオール(Polycaprolactone polyester:PCL)は大部分がポリウレタン用途に使用されます。PCLを原料にしたポリウレタンは、PTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)を原料にしたポリウレタンより耐熱性、耐摩耗性、耐候性が優れているという特徴があります。またPCD(ポリカーボネートジオール)を原料にしたポリウレタンより低温特性に優れています。さらに、PEP(ポリエステルポリオール)を原料にしたポリウレタンより、耐熱性、耐油性、低温特性、耐摩耗性に優れているという特徴があります。

PCLは分子量、分子量分布により性能が異なってきます。一般のPCLは結晶性を有しているため、弾性回復性が不足しますが、変性を加えたPCLを用いることで欠点を補うことができます。PCL市場では、液状にすることで取扱いを容易にしたグレードや、分子量分布を狭め低分子オリゴマーを少なくすることで耐摩耗性を向上させたグレードなど、用途に応じたカスタマイズ性が求められています。

ポリカプロラクトンポリオール(PCL)の製造

PCLは、シクロヘキサンを過酢酸等の酸化剤で酸化することで得たε-カプロラクトンを開環重合することで製造することができます。ポリエステルポリオールより分子量分布が狭く、同一分子量でも低粘度のポリオールができます。ラクトン鎖が入ることで物理的な特性改善が可能となり、樹脂との相溶性の向上、溶解性の向上、低温柔軟性の向上が見込まれます。

<PCLの合成 一般式>

ポリカプロラクトンポリオール(PCL)の市場

PCLは、他のポリオール(PPG、PTMG、PEP)と比較して、参入企業が少ないため、国・地域別でみたとき一つの国・地域が突出していない特徴があります。参入企業が少なく、生産拠点が点在しているため数量ベースで安定的な成長が見込まれます。販売数量の成長率が高い中国では、水性塗料や合成皮革向けの市場拡大に伴いPCLの需要が高まっています。

ポリカプロラクトンポリオール(PCL)の主要参入企業

PCLの主な参入企業と製品(ブランド)、国、を以下に示します。

企業 製品・ブランド 特徴
ダイセル プラクセル 日本 2〜4官能タイプ・
アクリロイル基導入タイプを製造
Ingevity (旧Perstorp) Capa 英国 モノマー・ポリマーを供給
深圳市光华伟业实业
(Shenzhen Esun Industrial)
PCL200シリーズ
PCL300シリーズ
中国
BASF Capromer 米国 自消用がメイン
<PCL主要参入企業※当サイト推定値>

ダイセルは日本で唯一PCLを生産しているメーカーで、PCLの製造にて、過酢酸から一貫生産を行っており、世界シェア2位のポジションであり、北米市場では塗料・コーティング用途、欧州ではTPU用途を中心に展開しています。

Ingevity社はPCL大手のPerstorp社(Capaブランド)を買収し、Capaを通じて高付加価値な塗料・コーティングや接着分野に展開しています。Ingevity社は品質安定性に優れているため、欧州や北米でのシェアが特に高いうえ、近年中国でもIngevity社からの購入が増えています。

BASF社は塗料・コーティング、エラストマーの自消向けが大部分を占め、外販は欧州エリアでの一部向けのみとなっています。またPCLよりPEPに注力しているので他企業に比べ横ばい状態です。

近年中国では現地企業が参入していますが、品質にばらつきがあるので主力参入企業となるには時間がかかる模様です。中国では2社がモノマーから生産する体制を整え、1社がポリオールとして販売しています。また中国内でモノマーを調達してポリオールとして販売している企業も現れてきています。中国やベトナムに参入している企業は皮革メーカー向けの材料としての需要の増加の影響を受けています。

ポリカプロラクトンポリオール(PCL)の用途

PCLの用途を世界規模で見てみると、全体需要量は凡そ30,000Mt/年程度と試算されます。

用途内訳で見る塗料・コーティング向けがが凡そ全体の60~70%程度、エラストマー向けが20~25%程度、残りがその他、となっています。

PCLはPEPより耐水性、耐候性、耐摩耗性等高機能性が要求される場合に使用されます。エラストマー用途では耐摩耗性要求が強いローラー、ブレード、Oリング部品、その他の用途ではPUD、UV硬化樹脂、接着剤で使用されます。

ポリカプロラクトンポリオール(PCL)の課題・技術動向など

PCLは供給サプライヤーが限られ寡占状態が強い為、ユーザーの使用用途により物性を突き詰めるカスタマイズ性が求められています。またプラントトラブル時の供給安定性の課題等も挙げられています。

新規開発動向として透明性が挙げられ、ダイセルのプラクセルHGTシリーズは透明度が高いという特徴があります。

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