ポリカーボネートジオール(PCD)

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ポリカーボネートジオール(PCD)の概要

ポリカーボネートジオール(PCD)の概要

ポリカーボネートジオール(Polycarbonatediol:PCD)はカーボネート骨格を持ち、両末端に水酸基を有したポリオールと定義されています。PCDを原料にしたポリウレタンは、カーボネート基の高い凝集力により、耐水性、耐熱性、耐油性、弾性回復性、耐候性に優れるため、合成皮革、人工皮革、塗料・コーティング材、その他高度に耐久性を必要とするものに使用されます。また水性ポリウレタン(PUD:ポリウレタンディスパージョン)での応用が進んでおり、中国でのVOC排出規制強化に伴いPCDベースのPUD需要は増加するとみられています。最も一般的な1,6−HD系PCDは常温で固体であるため、取扱いを簡易にしたり処方設計の自由度をあげたりする目的で常温での液状化の検討がされています。

<PCDの一般式>

ポリカーボネートジオール(PCD)の製造

PCDはアルカンジオール、炭酸ジエステルを原料としエステル交換触媒下で合成します。アルカンジオールで最も一般的なものは1,6−HD(1,6−ヘキサンジオール)で、1,6-HDのみをアルカンジオールとしたものはPCD(ホモポリマー)となります。他アルカンジオールには1,5−PD(1,5−ペンタンジオール)、1,4−BD(1,4−ブタンジオール)、MPD(2-メチル-1,3-プロパンジオール)等があり、組み合わせることで共重合PCD(コポリマー)となります。

下図にポリカーボネートジオールの合成法の一例を示します。

<PCD合成法の一例>

ポリカーボネートジオール(PCD)の市場

PCDは人工皮革、PUDでまとまった需要を獲得しており、市場規模の拡大が続いています。特にPUDは中国でアクリル系からウレタン系塗料の移行が進んでいるため今後中国での市場拡大が見込まれています。北米ではPCDの採用が定着していないため販売動向は低めで停滞中です。

ポリカーボネートジオール(PCD)の主要参入企業

PCDの主な参入企業と製品(ブランド)、国、生産能力(MT)を以下に示します。

企業 製品・ブランド 特徴
宇部興産 ETERNACOLL 日本
タイ
スペイン
原料からの一貫生産。自消中心。
旭化成 デュラノール 日本
中国
共重合PCDを製造。
東ソー ニッポラン 日本 自消とポリマー販売。
三菱ケミカル ベネビオール 日本 植物由来原料のグレード有り。
Covestro DESMOPHEN ドイツ 自消中心。
Caffaro Industrie RAVECARB イタリア 自消と外販。
Perstorp Oxymer スウェーデン 自消と外販。
<PCD主要参入企業>

その他、ダイセル(ポリオール生産が主)、クラレ(ポリオール生産が主)、Stahl社(PUDで自消あり)、Cromogenia-Units社(PUDで自消あり)、Cave9stro社(自消用)、複数の中国企業が参入しています。さらに、宇部興産は北米向けに生産拠点を構築する旨を示しています。

複数のPCDメーカーが製品を展開していますが、1,6-HDの高騰をうけ参入を中断したメーカーもあります。

ポリカーボネートジオール(PCD)のメーカー別販売動向

PCDの世界全体の市場規模は凡そ25,000∼30,000Mt程度と予想されます。

PCDの世界市場、日本市場、中国市場で1位を占める宇部興産は、原料(1,6-HD、1、5-HD、DMC)からの一貫生産を行っています。人工・合成皮革向けのグレードは中国大手メーカーに採用され高いシェア獲得に結びついており、自動車塗料分野で採用実績が多いPUDでPCDを自消しています。

世界シェア、中国シェア2位の旭化成は日本及び中国に生産拠点を構築し、日本では機能性の高い共重合ポリマー品を生産しています。中国では自動車シートや人工皮革でシェアが高く、日本シェア2位の東ソーも日本・中国を中心に展開しており、人工・合成皮革用PCDホモポリマーは宇部興産と競合品となっています。子会社の日本ミラクトランで自消分もあります。中国では青島柏晴新材料(Baiqing Materials社)や江蘇省化工研究所が低価格、低品質の雑貨用人工・合成皮革用途のPCDメーカーとして参入しています。

ポリカーボネートジオール(PCD)の用途

PCDを原料にしたポリウレタンは耐久性に優れるため、主に人工・合成皮革用途に使用されています。共重合PCDを使用した合成皮革は高級車種への採用が高く、内装品の需要が増加している傾向にあります。中国では工業用用途や雑貨用途が多いものの、自動車用途の販売数量が増加傾向にあります。

また塗料・コーティング用途でも用いられ床材塗料や、自動車用シート、PVCレザーのトップコートとして使用されています。その他ハイエンドモバイル端末のコーティング材や、高付加価値TPUで採用されています。

ざっくりですが人工・合皮向け用途で全体の50~60%程度、塗料用途向けで30∼40%程度、残りはその他用途になります。

ポリカーボネートジオール(PCD)の課題や技術トレンド

PCDは他のポリオールより耐熱性、耐加水分解性、耐薬品性、耐候性に優れ機能的に優れたものに採用されているため、競合・代替の動きが少ない特徴があります。

PCDはバッチ生産されているため製造コストが高く低価格化に限界があるとされています。今まで価格と物性で棲み分けされているため製造コストが課題にならなかったのですが、近年中国での参入企業増加に伴い低価格化が進むと予測されています。対応策として宇部興産は原料1,6−HDの製法を変換し生産効率を向上させています。

エコの観点からも、工場から排出されたCO2を原料とするPCDの技術開発が進められ、2016年に直接合成に成功、いくつかの企業では実証プラントでの生産や販売が行われています。

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