硬質ウレタンフォームの用途 【住宅用断熱パネル】

目次

住宅用断熱パネル【概要】

用途

建築物の断熱材として硬質ウレタンフォームを用いる方法には、原液を現場で発泡させてスプレーで吹き付ける方法と、工場で成形加工したパネルを建築時に組み立てる方法の2種類があります。建築物全体では原液タイプが9割、パネルタイプが1割となっており、住宅向けに限定した場合でもパネルタイプが19%と原液が主流です。形状に関係なく充填できるため原液タイプがよく用いられますが、パネルはメーカー管理のもと、目的の性能を確保できるよう製造されているため、断熱性はパネルの方が優れます。断熱性を確保したい場合や、一定の膜厚が必要な場合にパネルが多用されます。屋上部分は特に厚さが必要となるためパネルの採用率が比較的高いようです。

製品例

メーカー 生産量(t,2018年) シェア
日本アクア 23,800 16.7%
積水ソフランウイズ 23,100 16.3%
日本パフテム 21,800 15.3%
BASF INOAC ポリウレタン 16,400 11.5%
アキレス 12,000 8.4%
その他 45,000 31.7%
国内メーカーシェア(当サイト推定)

硬質ウレタンフォームを製造する上位4社は吹き付け用の原液に特化しており、5位のアキレスがパネル・原液の両方を提供しています。同社では基本タイプの「アキレスボードシリーズ」の他、最高水準の断熱性を謳う、熱伝導率0.018W/(m・k)の「ジーワンボード」を生産しています。業界6位の倉敷紡績も住宅・一般建築向けの「クランボードP」や屋上用に防水加工された「クランボードAP」を生産しています。パネルタイプはウレタンの両面に保護シートが付いているため、シートを通じて防水・接着、遮熱などの機能を付与することができます。

使用法

パネルも吹き付け同様に、建築物の躯体が完成してから断熱材を埋め込みます。木造建築の場合、柱と柱の間など、構造物の形状に沿ってパネルを切断・加工し、埋め込んでからタッカーで固定します。RC造の場合はパネルを仮止めしてからコンクリートを打ち込む方法が採られます。パネルは吹き付けのように硬化させる必要はなく、設置と固定のみで施工できるため、現場での作業性が優れています。

製造法・開発動向

製造方法

一般的に断熱パネルは硬質フォームが剥き出しではなく、硬質面や軟質面に挟まれる形をしています。製造量の多い製造現場ではダブルコンベアーで原液を両面に貼り付け、硬化させてパネルを製造する方法が採用されています。一方で、生産量があまり多くない現場では一度硬質フォームをスラブとして製造し、後に接着剤などで面を貼り付けます。硬質面には金属シートや石膏ボードなどが用いられ、軟質面には各種クラフト紙や金属箔が使われます。

研究動向

省エネ化需要の拡大と共に住宅1軒あたりの硬質フォーム使用量が増えていますが、使用量増加に伴う弊害として硬質フォームの製造に不可欠な発泡剤量の増加があげられます。現在主流のHFC型は以前の発泡剤よりも影響が少ないものの、オゾン層破壊への影響がゼロになったわけではなく、さらに温室効果も認識されています。パネルに限らず原液タイプでも同様ですが、環境負荷のより少ない発泡剤の開発が求められています。また、硬質フォームは繊維系断熱材よりも防火性に劣るという欠点があり、防火性の強化検討も進んでいます。

まとめ

硬質フォームの断熱パネルは原液タイプより優れる断熱性や作業性、多機能性により、随所で用いられています。耐湿性や防水性が求められる部分ではパネルが用いられており、住宅の省エネ需要拡大と共に使用量は増加するでしょう。コストや環境負荷の低減、さらなる多機能化といった開発が進められています。

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