住宅用ウレタン硬質スプレー用途の概要
用途
住宅用の硬質ウレタンフォームスプレーは断熱材として使われます。少量の場合はスプレー缶を使いますが、壁一面に充填させる場合は原液を発泡機に投入し、吹き付けます。基本的に住宅の全周に断熱材が使われており、壁や天井、床下にも断熱材を敷き詰めなければなりません。性能を求める場合は部位によって使うフォームの種類を変えます。住宅1軒あたりの硬質フォーム使用料はおよそ270~400kgです。
製品例
分類 | 熱伝導率 | 低透湿性 | 用途 |
---|---|---|---|
A種1 | 0.034以下 | – | 壁、天井など |
A種1H | 0.026以下 | – | 壁、天井など |
A種2 | 0.034以下 | ○ | 冷蔵倉庫など |
A種2H | 0.026以下 | ○ | 冷蔵倉庫など |
A種3 | 0.040以下 | – | 壁、天井など |
B種 | 0.026以下 | ○ | 冷蔵倉庫など |
吹付け硬質ウレタンフォームはJIS規格で分類されており、それぞれ「H」が付くものが断熱性に優れます。低い透湿率を有するタイプは冷蔵倉庫での用途を見込んだ製品であるため、住宅用としてはA種1、A種1H、A種3が主に使われています。硬質フォームの生産量で業界トップの日本アクアは住宅用硬質スプレーとして「アクアフォーム」シリーズ、業界2位の積水ソフランウイズは「ソフラン-R ウイズフォーム」を展開しています。
使用法
充填工法の場合、硬質フォームは外壁と内壁の間に充填されます。基本的には住宅の骨組みと外壁が完成したのち、硬質スプレーを吹き付け、硬化してから内壁を設置する方式です。断熱性はフォームの厚さに比例するため、硬化後はピンなどを使って目的とする厚さを確保できているか確認します。施工には家1軒あたり2~3日程度かかります。より断熱性を求めたい場合は躯体の外側から断熱材を張り付ける外張り工法が採用されますが、この場合はボードが用いられます。
市場状況
建築向けの中でも主流
硬質スプレー用のシステム原液は住宅向けの硬質フォームのうち約8割を占め、ボードは2割程度しかありません。十分な断熱性を保つには充填させなければならないため吹き付けに使う原液が主流となります。しかし断熱能はボードの方が優れているほか、ボード製品には防音・防水などの機能も持ち合わせている場合があります。垂れなどの心配がある天井ではボードの使用比率が上がります。
他の断熱材との比較
分類 | 断熱材 | 2018年 | 2020年 | 2025年 |
---|---|---|---|---|
フォーム系 | 硬質ウレタンフォーム | 314.5 | 323.1 | 350.3 |
フェノールフォーム | 294.0 | 306.7 | 323.2 | |
押出法スチレンフォーム | 318.0 | 336.0 | 350.0 | |
ビーズ法スチレンフォーム | 51.5 | 57.0 | 58.2 | |
繊維系 | グラスウール | 475.5 | 480.2 | 463.0 |
セルロースファイバー | 151.7 | 158.2 | 156.4 | |
ロックウール | 110.0 | 110.2 | 95.5 |
断熱材は硬質フォーム以外にも様々なものがあり、主にフォーム系と繊維系に分類されます。フォーム系はものによって吹付け・押出し可能である他、ボードでも軽量なので施工が簡単です。また、断熱性能もフォーム系の方が優れています。一方で繊維系は有機物であるフォーム系よりも防火性に優れるという特徴があり、他にも防音性に優れています。近年では住宅の断熱化需要が高まっており、グラスウールに置き換わる形でより断熱能の優れるフォーム系の需要が増えると予想されています。同じフォーム系の中では求める性能による使い分けがなされているため、互いにシェアを削りあうことはないようです。長期的には人口減少によって新築住宅の件数が減少する見込みです。そのため各断熱材メーカーはリフォーム工事に適した商品・サービスの提供を始めています。
研究動向
近年の研究動向には①環境対策、②多機能付与といった流れが見られます。住宅の省エネ需要が年々高まるなか硬質スプレーの使用量は増えていますが、発泡剤はいまだにオゾン層破壊と温暖化の懸念がある第3世代のHFC系が主流です。環境への影響がより少ないHFC系発泡剤の開発が進んでいます。第4世代のHCFO系の導入も進んでいるようです。多機能付与に関しては、防火性・防音性といった機能を備えるスプレーの開発が進んでいます。特に防火性に関して有機物である硬質フォームは無機物の繊維系に劣っており、1軒あたりの使用量が伸びる中で防火性の確保は商品価値を高めるうえでも欠かせません。
まとめ
硬質スプレーは断熱材として住宅の柱と壁の間に充填される形で用いられます。今後は新築物件において、断熱性に劣る繊維系断熱材のシェアを削る形で使用量が伸びていく見込みですが、防火性の付与及び環境対策が求められています。長期では人口減少による需要の低下が予測されるため、リフォーム工事への最適化も進んでいるようです。