PPG(ポリプロピレングリコール)は用途の6割を軟質/硬質ウレタンフォームが占め、世界経済の発展とともに需要が伸び続けている原料です。PPGといっても分子量やグレードの異なるものが様々あり、使用する原料によって製品となるウレタンフォームの性質が変わります。合成法から市場状況まで、PPGの概要を見ていきましょう。
PPGの合成法
ポリオールは分子中にアルコール基(-OH)を複数有する物質の総称であり、基本的には同じ構造の分子が繋がった繰り返し構造をとります。その中でもPPGは基本的な物質であり、1年に生産されるポリオールのうち7割以上をPPGが占めます。一般的には、PPGは多価アルコールに対して酸化プロピレン/POを重合することで合成されており、酸化プロピレンは石油由来のプロピレンを原料としてつくられています。業界では川上から川中のメーカーがPPGを生産しています。(ポリオールの特性に合わせて重合には酸化エチレン/EOが一部使用されるケースもあります)
PPGの用途
用途 | 日本(生産高) | 日本(割合) | 世界(生産高) | 世界(割合) |
---|---|---|---|---|
軟質PUF | 95,000 | 35% | 3,350,000 | 40% |
硬質PUF | 60,000 | 20% | 2,150,000 | 25% |
その他 | 135,000 | 45% | 3,300,000 | 35% |
合計 | 290,000 | 100% | 8,800,000 | 100% |
PPGの用途は主に軟質/硬質ポリウレタンフォーム(PUF)です。その他には塗料や接着剤が含まれ、プラスチック原料として使われることもあります。2018年の世界生産は約880万トンで、うち305万トン・35%を占める中国が最大の生産国です。世界・中国共に自動車向けは軟質PUF全体の2割程度ですが、自動車向けを中心とする日本では75%が自動車向けとなります。
メーカーは様々なタイプのPPGを提供しており、軟質PUF向け・硬質PUF向け・塗料向けなど用途によって分けることもあります。高分子量タイプは製品の強度を左右する主剤として使われ、低分子量タイプは強度を上げるために架橋剤のようなものとして使われます。PUF向けの場合、PPGは主剤として他のポリオールと併用して使われます。発泡条件下でポリイソシアネートのNCO基とPPGのOH基が反応することでPUFが得られます。
PPGのメーカー別シェアはイソシアネート類ほど寡占化が進んでおらず、最大のDowでも15%程度です。他の基礎化学品に比べて生産設備の建設に時間を要せず、他社の参入ハードルが低いことが背景にあります。ちなみにCovestroやBASF、万華化学集団はイソシアネートのシェアでも上位を占め、PPGとのセット販売といった事も行っています。
他にも特に自動車用途向けではポリオールとその他添加剤を事前に混ぜ合わせて、ユーザーでの使用工程を簡略化したレジンプレミックスといった、マスターバッチ化した処方で販売されるケースも多いです。
対して国内では三洋化成工業、三井化学SKCポリウレタン、AGCが主要三社です。国・地域別では中国が最大の生産国ですが韓国・タイ・シンガポールの生産量も多く、その他アジア地域の生産量も比較的高めです。
今後の見通し
今後、日本では低調な推移で生産量が増加していく見込みですが、中国・アジア地域では早いペースで伸びていくでしょう。年間305万トンの中国は数年以内に350万トンを超えると予想され、その他アジア地域でも150万トン越えが見込まれます。北米では年3~4%、欧州では年2%前後の推移で伸びていくでしょう。自動車や西洋式家具の普及、大型冷蔵庫の導入によるPUF需要の伸びが牽引し、世界全体では年3%のペースでPPG需要が増加していく見込みです。
PPGの開発動向をみると、新機能の付与といったこれ以上の改良は無いと思われます。一方で近年では環境意識の高まりによるVOC対策が求められており、PPGは製法改良によって原料・溶媒由来のVOC削減が見込めるため、製品中のVOC削減が開発の主テーマとなっていくでしょう。
まとめ
PPGは硬質、軟質ともにウレタンフォームの原料として欠かせない物質です。国別の生産量はPUFの生産量が多い中国が最大で、ポリウレタンメーカーによるシェアが目立ちます。世界人口の増加とともに需要が増えていくため、今後は中国・アジアを中心に生産量が伸び続けていくと思われます。技術革新によるVOC削減が期待されるところです。